【最後の障害】
「前方、数は少ないがおそらく敵がいる。この状況で戦闘は避けたい。迂回していくか……」
「それが……無難……でも、それだと……時間かかる」
まばらに生えた木々の下。
小さな木陰で疲弊した避難民たちを休ませながらシアと怜磨が話していた。
うかつに時間をかけてしまうと、今回はやり過ごすことができたとしても別の敵部隊に出会う可能性は上がってしまう。
シアの言葉は、それを考慮してのものだろう。
「敵に出くわさないのが一番だったんだけどね……私が牽制します。その隙に進んでください」
「ボクも手伝うよ。一人より二人、二人より三人の方がいいでしょ?」
前に出たのは、グリフォンに跨った春奈と、サイフォス先行型に乗り込んだ
平原 静乃、そしてその上空でエアロシップに乗っている
ヴィルヘルム・ゴットハルトだった。
ヴィルヘルムが上空から睨む先、砂丘を超えた向こうには、敵のファントム3機がこちらへと向かっていた。
ファントムもすでに特異者達には気づいているようで、防御陣形をとったまま、近づいてくる。
「グリフォン、いくよ!」
春奈のその声にこたえるように、グリフォンが短く鳴いた。
そして翼を広げると、一気に敵部隊へと接近していく。そして敵が反応できていない隙にその勢いを残したままラピッドアタックを繰り出し、今度は上空へと身をひるがえした。
「さすがに一撃じゃ無理か……ちょっと無理するけど付き合ってね……」
グリフォンは再び短く鳴くと、今度は敵ファントムの間を縫うように高速で下降していく。
そして敵ファントムの間を進み、ちょうど中間地点に来た時、春奈は栄光の小瓶を放った。
強烈な光と音が周囲を覆い、敵ファントムは春奈の姿を見失う。
その隙に春奈は炎皇化を発動、自身の体に炎を纏うと、一機のファントム目掛けて突っ込んでいった。
「これでっ……終わり!!!」
炎を纏った連続の刺突、サウザンドレイヴを喰らったファントムは、その場で動きを止めた。
春奈はすぐに振り返り、次のファントムに向かおうとするが、すでにほかの二機は回復した後、春奈目掛けてマシンガンを構えていた。
「グリフォンリッターごとき、瞬殺してくれる!!」
ファントムの指がマシンガンのトリガーにかかる。
しかし、それが握られる直前、その目の前の地面が爆ぜた。
「ボクもいる事忘れないでよね!」
たった今地面にめがけてバーンソードをたたきつけた静乃は、すぐに体勢を立て直し、春奈とファントムの間に立つ。
「静乃、敵は長い砂漠の哨戒で脚部に熱がこもっている。そこを狙え」
「了解、ありがと、ヴィル!」
残るファントムは二機、そして特異者側は春奈に静乃とその相棒であるヴィル、そしてさらに
水無月 ゆずりまでもが加勢に加わり四人となった。それだけの人数差もあり、決着がつくまでにそう長い時間はかからなかった。
「これ以上彼らに辛い思いはさせない・・!脅威はここで取り除く!」
ファントムの攻撃は、エマージェンシーによって危険を察知した静乃によってきれいに回避された。そしてそのまま静乃は脚部へと、バーンソードの攻撃を炸裂させる。
膝から下を失ったファントムが砂漠の砂へと倒れこんだ。
「これで終わりだね。さぁ、先に進もう!」