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エルベ砂漠の戦い

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エルベ砂漠の戦い
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【炎天下での戦果】


 どうにか先程混戦だった場所から離れ、特異者達の姿も小さくなっていた。このまま素直に離脱する事が出来れば部下達を失わずに済むだろう、そう考えていた。
「なぁエースパイロットだろお前!」
 そんな声が聞こえて周囲を見渡すと1機のファントム強化型RVerとその僚機であろうサイフォス先行型が居た。ここまで近づくまで気付かなかったと言う事は、それだけフォルティスもここから離れようとする事に必死だったのだろう。
「エース、だとしたらどうする?」
「生憎と、ラディアの協力者の俺達は、そんな肩書きだけじゃ萎縮しないくらいには図太いんでな。首かその新兵器おいてけ!」
 ファントムに乗っていたのは獅堂 泰雅。持っているビームソードをフォルティスに向けながらそう言う。
 実際は自身を僚機だと偽って近づこうと考えていたが、フォルティス達がこの戦線から離脱しようと考えている事が分かり、泰雅はすぐに出撃して追いかけてきたのだ。
「ここで相手をしているつもりは――」
 その時だった。突然離れた場所から風が吹き始め、そして銃弾がこちらへと飛んでくる。
「フェレーナさん、もう少し右です」
「りょーかい!」
 泰雅が出撃してきたライトクルーザー級エアロシップ。それを操縦するのはフェレーナ・エッカート。そして、格納庫入り口付近に設置してある固定銃座へと座っているのはアリアネ・クロンティリスだった。
「ふふふのふ。フォルティスくん、逆に退却する時の方が方向が分かりやすいんだよー? 戦争屋らしいセリフを言うなら、ところ――」
「それで、泰雅さんは?」
「あ、うん、ちゃんとフォルティスちゃんの所についたみたい」
 アリアネにそう聞かれてすぐにフェレーナは答える。そして、先程の風はフェレーナが使用した風計であった。
 フォルティス自身は近接用の武器ではあるが、僚機はマシンガンを持っている。風計を使う事で狙いをつけにくくさせ、同じく近接用の装備である泰雅の援護として用いている。
「さてさて……これもいっちゃおうか!」
 フェレーナはフォルティス隊へ向けてプラズマウェイヴを放つ。その雷はフォルティスは1度見た事があり、すぐに危険を察知して泰雅と少し距離を取って雷の回避へと努めるように指示。
「結構ここまでで色々されてたのかな? ボクが知ってる情報よりも戦い方が上手くなってる気がする」
 フォルティスは隊長としての素質や戦闘についてのセンスは凄まじい物を持っているというエースの知識があったのだが、その知識だけでは追いつけないような事をやってのけているのだ。
 ここまで数多くの特異者達を相手にしてきたことで、その経験値を急速に吸収しているのかもしれない。
「わたしは索敵をしつつ、いつでも処置が出来るようにしておきます――」
「うん、よろしく!」
「泰雅さん……早く鹵獲してください……バラしたいので」
「何か言った?」
「いいえ、何も」
 彼女達は泰雅の援護を続ける。
 泰雅はフォルティスだけを狙って切りつけ、シュツルムアタックにて僚機に連続して攻撃をしてもらっている。そして、それぞれの武器はアリアネのウェポンチューンにて多少出力が上がっていた。この状況で一撃でも直撃を加える事が出来たならば、アリアネが呟いた通りに鹵獲が出来る可能性も出てくる。
「俺よりもあっちか。指示通りに頼むぞ」
 指示通り。僚機には自分に攻撃が向いて来たら防御行動を取るように指示を出してある。そして、隙を見てラピッドアタックにて意表を突く事が出来ればと考えるが――。
「隊長はやらせんぞ!」
 相手の僚機がそうさせてくれない。ダメージを負っているであろう状態にも関わらず、フォルティスを守るために戦っているようだ。
「おい、後ろだ!」
 フォルティスが僚機である1機へとそう叫ぶ。そして、後ろを振り返るとそこにはオオカミ乗りが1人近づいてきており、今から何かをしようとする素振りを見せていた。
「バレちゃいましたか……」
 オオカミ乗りを僚機に連れていたのはフェイシア・ピニンファリーナだった。彼女はこの戦いに乗じて敵の背後に回り込んで武装を奪ってしまおうと考えていた。しかし、こうしてフォルティスに看破されてしまったということは、同じ事は2度通じないだろう。
 フェイシアは自身のサイフォス先行型の操縦桿を前に倒して前進。泰雅を近くでフォルティスへと向かっていく。
「私も手伝います。この状況で前衛1人は厳しいです」
 先程も敵に邪魔をされてフォルティスを狙う事が出来ないでいた。ここはフェイシアのいう言葉通りに一緒に当たった方が良いかもしれない。
 しかし、フォルティスはこの場所から離脱しようと考えている為、下手に攻撃の手を緩めるとそのまま逃げられてしまう可能性も出てくる。
 フェイシアは地面へ向けてルミレーザーを発射する。一体何をするかと周囲は思うが、その攻撃にて砂が待っていく。それによって周囲の視界が悪くなっていく。
 その状態でフェイシアは持っているバーンソードを鞘はないが、抜刀の構えを取り相手を狙う。
 視界が悪い中での抜刀術。この砂煙の中でフォルティスに有効打を与えるための一撃。それを思い切り踏み込んで、彼のいる場所へと斬りかかった。
「ぐっ……! た、隊長、無事ですか……!?」
「お前……」
 フェイシアが斬ったのは敵僚機が持っているマシンガンであった。この煙の中でフォルティスを守るために周囲にいた彼らが言葉通り守る形となった。
「砂煙が晴れます」
「そこに敵の姿は?」
 その様子を見ていたデストロイヤー級エアロシップ。それを操縦しているレヴィーア・ファルトナーがオペレーターとして乗っている天音 雷華へ状況を確認してもらう。
「敵、未だにそこにいるようです!」
「味方機の様子はどう?」
「先程の攻撃で互いに攻められずにいるようです」
「このままだと撤退を本当に許してしまうわね……」
 雷華の言葉にレヴィーアはこの後どうするかを考える。いや、考えるまでもないだろう。彼等を倒す為にはここでみんなに出撃してもらうのが一番だからだ。
「キャヴァルリィ隊の人達は出撃準備を。他の艦にも連絡をお願い」
「分かりました」
 雷華へとそう伝えると、すぐに他の艦へと通信を始める。
 すでにレヴィーアと雷華が乗っている船に搭載されている機体の整備などは行っており、新米オペレーターもまたウェポンチューンを武器に施してくれている。
「味方機とこちらの数が多い、と言う事はここで落とす事は可能でしょうね――」
「可能、ですか。確実に、ではないのですね」
「……私達の数をここまで相手取って僚機に損傷は出ても撃墜は出来ていない。この状態でも余裕は持てないと思うわ」
「確かにそうですね……」
「情報によるとエース機の盾を破壊出来た事で、相手は回避行動を取るしか攻撃を防ぐ事が出来ないらしいわ。ここを突くのが一番かしら」
 この辺りはこれから出撃していく者達も分かっている事だろう。そして、別の船でもどういった動きが最適化どうかを話していた。
「包囲の陣による攻撃ね……。味方機が先に戦っているようだけど、当初の予定通りに1機ずつ外側から落としていきましょう」
 青空 鳴が自身の乗るライトクルーザー級エアロシップにてこれから出撃していく者達へそう伝える。
 僚機は全て残っている状態であるが、現状ならば僚機を落とす事は難しくはない。外堀から埋めていって最後に天守閣――フォルティスを倒すという考えだ。
「すでに小破、中破に近い僚機もいるようですので、そこから崩すのが良いと思います」
 ここまでの情報や見ていた事から弱点察知を用いて、そこが弱い部分だという事が分かる。
「そういう形でお願いします」
「分かったわ。私達で完全に僚機を取り押さえる」
 別のライトクルーザー級エアロシップに乗るウリエッタ・オルトワートからそう返事が返ってくる。
「レヴィーアさんからも出撃準備ができ次第、との事でした」
「了解、分かったわ。私もこのまま直進、相手を迎撃する」
「お願いします」
 鳴がそうウリエッタへと返事をすると通信が切れる。
 敵の僚機を抑えるべくウリエッタはエアロシップを全速力で進めていく。ウリエッタは右翼側からの攻撃を担当。そして、鳴からの船からはマリエッタ・オルトワートシィルヴィア・コーストが出撃をする。
「敵僚機は隊長機のサポートに回れていないわ。今の内に対処しておきましょう」
「分かったわ。私が先に先行する」
 同じくウリエッタと右翼側を担当するマリエッタがウリエッタのエアロシップの前に出て先行する形となる。
「私はこのまま左翼側へ」
 シルヴィアがそう言うと2人とは別れて左翼側へとファントム強化型の操縦桿を握り僚機と共に向かって行った。
 マリエッタは自身のメックマシンガンの射程距離に入ると、僚機のファントムRVerと共に敵が更にフォルティスの援護が出来なくなるように牽制を続ける。
 上空にはウリエッタの船。ウリエッタは彼女が先に射撃を行う前のタイミングで先制攻撃として敵にプラズマウェイヴを仕掛け、僚機であるスカイライダーRVerの2機には十字砲火の陣形を取ってもらい、そこから狙い撃つ。
「敵の武器はマシンガン……こちらも武器は銃だから、距離を保ちつつ射撃をお願い。そこからシュツルムアタックにて連続で畳み込むわ」
 マリエッタはファントム強化型に搭乗しているが、やはり砂漠仕様になっている相手機には機動力では負けてしまう。ここは僚機と連携を取りながら、負けている機動性をカバーしていく。
 敵は包囲の陣を崩されてしまい、足並みはそろってはいないが、共通して動いているのはどうにかフォルティスを守ろうとしていると言う事。それによって展開されている位置を把握しながら、ウリエッタもマリエッタも敵の僚機へと攻撃を続けていく。
「“散光の銀閃”のシィルヴィア、行くわよ!」
 名乗りの号令から僚機と一緒に左翼側の敵へと当たっていく。先程の号令からか、敵僚機の動きが一瞬鈍くなるのが分かる。攻め込むのであれば今しかない。
 1機に狙いをつけると自身の試製AMライフルと僚機のビームガンで連続して攻撃を続けていく。しかし、1機だけを相手しているだけでは他の者がこちらへ向けて攻撃してくる可能性がある。ある程度の攻撃をした後にこちらを狙っている機体があれば、今度はそちらに狙いを定めて攻撃をする。
 正確な射撃を敵向けて攻撃をしていくが、僚機でありながら敵も大分腕の立つものなのだろう。攻撃を当てる事は出来るが、直撃を避けて落とされない様に動いている。そして、包囲の陣が出来ないと言えど、こちらの攻撃に対して上手く立ち回っていた。
 そこへ1機のファントムRVerが着地。
「やっぱり衝撃凄いじゃないですか……!」
 乗っていたエアロシップから出撃した高橋 蕃茄がシィルヴィアがいる左翼側へと着地をした。
 エアロシップから飛び降りて出撃をしなくてはいけないと言う事で、若干驚いていたが意を決してこうして飛び降りてきたと言う事だ。
「おっと!」
 そこにシィルヴィアが相手をしていない敵が蕃茄を狙ってくる。急な攻撃だったが、どうにか避ける事が出来た。
「ちくしょう、マシンガンなんて持ちやがって……。砂漠で体勢崩したら流石に辛いなぁ……」
 攻撃を避けた際の動きで若干体勢を崩した。そこをどうにか機体を調整しながら立て直したが、やはりこの砂漠で足を取られるとなると非常に戦いづらい。
「それなら!」
 蕃茄は地のマナへと働きを掛ける。それによって突然地面が揺れ始めるのを感じ、敵は少し動揺をしている様子。もちろん、地面は揺れているのだが、実際はそこまで揺れてはいない。ただ、マナに働きをかけている事で実際よりも揺れているように感じ、それによって動揺を起こしてしまう。
「撃たれなければ近づくのは簡単ですよ」
 こちらを狙ってマシンガンを乱射してきた者が地震により動揺している隙に蕃茄は一気に近づきビームソードにて切りつける。その意表を突く攻撃は敵のコックピットを狙ってのものだったが、敵は急旋回をする事で直撃を避ける。
「流石砂漠仕様は違いますね……!」
 上手く避けられてしまったが、懐に入っているのは同じ。蕃茄はそのまま追うようにして敵へと攻撃を続ける。
 そして部隊の中で一番最初にフォルティスへと向かったのはマカラシャ・カルマリ。エアロシップから飛び出す様にして出撃をすると、バーンソードを取り出して一気に切りかかる。
「今度のお相手ということか」
「やらせはしない!」
 敵はすでに盾を持っていない。攻め込む事が出来れば一番だが、マカラシャの主な目的は防戦である。それに、盾を持っていないとはいえ、この状況で回避を中心に立ち回っている状況にも関わらず、やはり直撃を避けている腕前。マカラシャが一気に攻めるような隙が出来るとも思えない。
 とにかくマカラシャは剣で応戦して斬りかかっていく。その間にもフォルティスからの攻撃を受けたりはするが、こちらもどうにか直撃しない様に立ち回る。
「そろそろ終わりにしないといけないのでな!」
 フォルティスは一気にこちらに向けて距離を詰めてくる。それでもマカラシャはバーンソードで受け止める。そのまま押し切られるかもしれない、と言った所でマカラシャはその剣を手放した。
「何を考えて――」
「……砕けろ!」
 剣を持っていた腕にはタスクガントレットが装着してあった。その鋭い爪を五指揃えて一気に空気で噴射をする。ジョイントブレイクを狙い、相手の関節部分を砕こうと試みる。
「ちっ……!」
 フォルティスは距離を取る為にバックステップをするが、肩を入れ込む事で直撃を回避する事は出来たが肩の装甲が吹き飛ばされる結果となる。
(機体の想定よりも損傷が激しい。撤退するための時間も考えれば、この辺りで退くのが妥当といったところか……)
 フォルティスは僚機の様子を見る。彼等によって抑えられている僚機達もそろそろ限界が近い。ここは本気で逃げなくてはこのまま全員そろって落とされてしまうだろう。
「撤退する。 殿は俺がつとめる! 早く退くんだ!」
 余裕がなくなったフォルティスの声に僚機達はその危険さを感じ取る。すぐさま攻撃を止めて引き撃ちをしつつ一気に離脱を計る。そして、フォルティスはその殿を勤めつつ下がろうと試みる。
「相手は名の知れた強敵……。この状態でも油断しちゃダメ……トニトルス、行くよ。雷のごとく!」
 その瞬間狛守 眞白が上空からフォルティスに向けて攻撃を仕掛ける。
 地上での戦いをしていた為、こうして上空から一気に奇襲をかけてくる事を頭から忘れていたフォルティスはバーンソードを抜くと、眞白の攻撃に備える。
 眞白の狙いはマカラシャと同じく関節部分。先程の攻撃で肩の装甲が壊された事でそこから肩を破壊する事は難しくないだろう。それに加えての奇襲。フォルティスは向かってくる場所にバーンソードを構えて防御を試みる。
 このままでは防がれてしまうと、すぐにペガサスであるトニトルスを旋回。今度は膝関節部分を狙いつけて飛び回る。
「ちっ……火の弾が邪魔だな」
 眞白は飛びながら牽制として緋色の指飾りを使ってその火の弾を敵のカメラの邪魔をするように撃ちこんでいる。後方に下がるだけならば、この状況でも大丈夫なのだが、相手がいつ攻撃してくるか分からない状況で見えなくなるのは非常に厳しい。
「ここだよ!」
 急旋回からの膝への攻撃。視界を邪魔されてどこへ飛んで行ったか見失ったフォルティスはバーンソードを振り回す事にする。
 どこから攻撃してくるのか分からないのであれば剣を振り回す事でどうにか避ける事が出来るはずだ、と考えたのだ。相手はペガサスに乗っているだけで生身であり、一撃であっても直撃を受ければ致命傷は避けられないだろう。
 それによって眞白は一旦距離を取る事にする。やはり、剣を振り回されている状況での隙をついて狙うのは厳しい。確率が低いとはいっても、バーンソードを食らっては危険だからだ。
 この状態のまま下がっていき、フォルティスは逃げられるかと思っていたがやはりそうはいかない。
 レヴィーアの乗る船から出撃し、ペガサスに乗り空中から砲撃しようとしている姿。先程の混戦でも何発か叩きこまれた事でフォルティス隊へとダメージを与えていた。
「逃がしませんよ……!」
 砂月 秋良は黒撃砲を構えてフォルティスが逃げようとしている方向へと向けて砲撃を開始する。エイムショットを用いて後方へ下がろうとする動きの邪魔をしていく。
 すでに敵僚機はフォルティスよりも下がっており狙いをつけるのは難しいが、隊長機を倒す事が出来れば新型やフォルティスを捕まえる事が出来る。
「装甲を剥がされた事で余計に直撃は嫌なはずです……。上手く誘導が出来れば……」
 秋良は左右に動きながら下がっていくイーグルデザートをよく見て次の狙いをつけていく。大きく下がらせなければ、こちらから追いつく事もかのうかもしれないからだ。
「ボクもそっちを狙いますので、合わせます」
 そこへ白野 直也からの通信が入る。先程の戦いでは敵の僚機を狙っての援護射撃を行っていたが、僚機を先に逃がし殿を務めているフォルティスを狙いやすくなった為だ。
 直也の近くにはアーミーゴレムが立っている。船から出撃した時はアーミーゴレムに乗ってここまで移動。そして、味方達から少し離れた場所から対戦車ライフルを用いて狙っていたのだ。
(砲撃で左側を狙ってくれているのなら……)
 照準を少しだけずらす。直撃させる事が出来れば一番いいのだが、この距離から直撃させる事は難しいだろう。それならば、そちら側へ射撃がくるという意識を向けさせることで動きを制限させる事が出来る。
 秋良が狙う方向とは逆の方向へとライフルを1発。それによって遠くにいるフォルティスの動きが変わる事が分かる。この直也の射撃もまた有効だと言う事。
 続けてもう1発。そこから秋良からの砲撃も加わり2人の射撃を嫌がっている事が分かる。
 フォルティス隊が逃げようとしている方向の先には1隻のライトクルーザー級エアロシップが待機をしていた。
「予定通りこちらに向かって敵が進行中」
「やはり、撤退をし始めたということか」
 そのエアロシップを操縦しているフィーリアス・ロードアルゼリアがフォルティス達の姿を確認した事をジェノ・サリスへと報告をする。
 彼等がこうして撤退しようとしている場所で待機をしていたのは、撤退をしようとした際に退路を防ぐためだった。
 味方達がフォルティス隊によって危険な状況に陥ってしまうのであれば、助太刀に行く事も考えてはいたのだが、そういった連絡もなく敵へと損害を与える事が出来ているという連絡を受けていたからこそ待機を続けていたのだ。
「2人は出撃をして。私がここから指示を出すわ」
「分かった。すぐに出撃をする」
「任せて!」
 ジェノとリーゼ・アインはすぐにエアロシップから出撃。そして、2人が出て行ったのを確認した後にフィーリアスはエアロシップを上昇させる。
「このまま行けばこちらへと向かってくる……。可能な限り引き付けた方が足止め出来るわね」
 状況を確認しながらフィーリアスは2人へどういった指示を出すかを冷静に考えて行く。
 敵僚機の方がこちらへは近い。そうなれば先に狙うは僚機だが、先にこちらにぶつかる距離と言う事はフォルティスが殿をやっている事は容易に想像がつく。
「僚機は無視しましょう。狙いは新型機のみで」
「了解だ」
「了解! 突撃ー!」
 フィーリアスの指示を聞いたリーゼはオオカミ乗りを連れて一気に駆け抜けていく。
 敵の僚機はこちらに存在に気付いたようだが、フォルティスから「逃げろ」という指示をされている為かリーゼを無視してそのまま撤退して行こうとしている。
「愛とロマンの名の下に、迎撃作戦開始!」
 さらにサイフォス先行型の操縦桿を強く握るとこちらへ向かってくるイーグルデザートへと突撃をしていく。そして、進行方向を邪魔されながら動いているフォルティスは接近を許してからリーゼがそこにいる事に気付く。
「くっ! 退路までふさがれていたとはな……!」
 フォルティスは旋回をしてリーゼ機を正面に取る。
 リーゼはメックシールドを正面に構えてそのまま突撃をしてくる様子。旋回をしてすぐに左右に避ける事は難しいが、このままでは直撃を食らってしまうのは一目瞭然だ。
「ちっ!」
 片足だけホバーを吹かして軸回転をするようにして回避を行う。回転をする直前に軽くシールドバッシュに当たってしまったが、このくらいならばまだ動く事は可能だろう。
「これだけじゃないからね!」
 避けられた次にオオカミ乗りがフォルティス向かって襲い掛かる。そこからバーンソードを抜いて切りかかったが、急な動きのせいで当たらない。
 そこへウィップソードを取り出したリーゼが巧みに鞭を操るようにしてイーグルデザートを絡めとろうとしてくる。狙いは腕よりも足だ。あの機動力をなくしてしまえば一気に片を付ける事が出来る。
 しかし、その機動力を用いて態勢を立て直したフォルティスはウィップソードを交わしていく。しかし、突然機体に衝撃が走るのが分かる。
「やはり、この戦いでガタがきているみたいだな」
 先程の衝撃の正体はジェノの放ったIF用レーザーライフルの一撃。
 護衛として僚機のグリフォンリッターについてきてもらっている。他の味方機がフォルティスを追って向かってきているが、いざというときには戦ってもらう可能性もあるだろう。
「しかし、流石としか言いようがないな」
 ジェノが撃った一撃は本当であれば足へと当たり、その足を動けなくさせるような一撃だった。しかし、フォルティスはどこで敵が狙っているか分からないという状況の元で戦っているのだろう。ちゃんとした狙いをつけさせてはくれなかった。
「しかし、これだけ戦っていればもうすぐだろう」
 次の一撃に向けてジェノは再びライフルを構えてフォルティスを狙うが――。
「な、何だ……」
 突然こちらに向けて銃弾が飛んでくる。撃たれた方向を確認すると、それはフォルティスについてきていた僚機達だった。
「隊長!」
「お、お前等何で戻った……!」
 逃げろと命令を受けていた彼等だったが、やはりフォルティスをこんな所で倒されてはいけないと戻ってきたのだ。
「俺達が囮になります!」
「隊長は逃げてください!」
 懸命にマシンガンで応戦しながらフォルティスへとそう僚機達から通信が来る。本当であれば自分が彼等達を助けようと考えていた。
「隊長はこんな所でやられるような人ではないでしょう!」
「…………」
 彼等の言葉にフォルティスは何も言う事が出来なかった。
「こんな所で逃がすわけには……。リーゼ、隊長機を狙うんだ」
「分かった!」
 敵の僚機を無視してフォルティスを追おうとリーゼは動こうとするが、それを邪魔するかのようにして銃撃や体を張って阻害してくる。
「すまない……!」
 フォルティスは僚機達の言葉を受けてすぐに離脱。それまでの間、彼等は特異者と戦い時間を稼ぐ。
 こうしてフォルティス隊との戦いは終わる。敵僚機達が落とされるのも長くは掛からず、そのまま彼等は捉えられる事となった。そして、イーグルデザートに乗るフォルティスは部下達の働きによって逃げる事に成功する。
 フォルティスを逃がす事になってしまった特異者達ではあったが、マリィ達の場所へと向かわせないようにするという目的は達する事が出来た。
 逃がしてしまったフォルティスはまた彼等の前に現れるであろうが、こうして目的を達する事が出来た事を今は喜ぶのだった。
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