【負傷した隊員たち 3】
「モニカ、コレット。それではお願いしますね」
「よろしく、二人とも」
飛行艦《Queen Bee》ことライトクルーザー級エアロシップを操縦しているのは
成神月 鈴奈である。
「遺跡調査中に発見するとは、敵も中々なものだね。
なるべく早く救出にかかるよ」
「敵の強さも気になるが、まずは救助最優先だ。
いってくるよ」
そして、マリィ隊を捜索するため、
モニカ・ヴァネルと
コレット・アンブローズが一旦飛行艦《Queen Bee》から降下する。
モニカは紅眼の銀翼竜『フェルディ』ことリンドヴルムに乗り上空から、コレットはサイフォス先行型に搭乗し地上から捜索を開始した。
そんな2人を【応援】しながら、鈴奈と共に見送ったのは
葛城 朝香だ。
鈴奈と朝香は飛行艦《Queen Bee》に残り、【土地鑑(スフィア)】を元にロートルデバイスで情報をまとめていくらしい。
情報を集める上で重要となる連絡係を務めるのは朝香だ。他の特異者やコレット、モニカとヘッドセットで連絡を取り合う準備をしている。
現時点で、かなりの隊員が他の仲間に救出されている。
無線に入るその情報を元に照らし合わせれば、自然と捜索エリアは絞られていった。
そして、隊員らしき人影を発見したのは空中から捜索していたモニカだ。
確認のため、すぐさま地上にいるコレットにスロートワイヤレスで連絡をとる。
「ボクたちは味方だよ。
救護に来たんだ」
「た、助かった……のか?」
先にコレットが声をかけ、草陰に隠れる隊員を救出。さらにモニカがフェルディの背に乗せようと、着陸する。
と、そこに敵のファントム隊が現れたのだ。
「探索に危険は付き物だが、敵に見つかるとはね」
その連絡を受け、朝香が仲間に援軍要請を行う。
「隊員を一人救出中だよ。
敵に見つかったので援軍をお願いするね」
極力戦闘を避けたい鈴奈ではあったが、モニカとコレットが巻き込まれては致し方ない。
援軍が来るまでの間、【僚機】マジックグライダーと共に出撃する。
その間、必死に耐えていたのはコレットだ。
モニカは隊員を連れているため、積極的な攻撃は期待できない。実質、3対1と考えた方がいいだろう。
けれどもそれを【ブレイブロウ】で怯む事無く、【ラディア式戦闘技】を用いてタイラントアームで向かっていく。
コレットが攻撃を仕掛け、こちらに気が向いている隙に、モニカが上空へと避難。敵もコレットの攻撃をかわし、【ヤブサメ】で反撃をしかけてくる。それを囲まれないように移動しつつ、ホライゾンシールドで防いで耐え忍ぶ。
すると、そこに駆けつけた鈴奈たちの【支援砲火】が敵の1機を捉える。
もちろん、その瞬間をコレットも見逃さない。
汎用アシストユニットの補助を受けつつ、素早く【チャージ】した後に【ラピッドアタック】で攻撃する。
それにより敵が負傷すると共に、1機が膝をつき、盾の陣が崩れていく。
「救助目的なのを忘れないようにしないとね」
そのまま一気に駆けだしてファントム隊を撒きにかかる。
それを後方より、鈴奈が【支援砲火】で援護。どうにか危機を脱した。
すると、そこに朝香がマリィより通信をキャッチする。
もちろん、春那のスロートワイヤレスと【ステガノグラフィー】で敵の傍受に気を付けつつである。
「恐らく彼が最後の一人だと思う。
少し先にいる味方エアロシップへの輸送をお願いするわ。
全員が搭乗完了次第、撤退を開始するつもりよ」
「わかりました。
輸送を試みましょう」
「ありがとう」
朝香を介して、鈴奈が承諾する。
「モニカ、隊員を輸送するわ」
「わかった……っつ!」
朝香の連絡を受け、一度、飛行艦《Queen Bee》へ。そう考えた矢先、今度は敵のスカイライダー隊に見つかってしまったのだ。
「もしかして、相手はアタシらの事に気付いてるのか?」
素早く旋回し、敵の攻撃を回避。【ヴァルハラストライク】で反撃して空路を開きつつ、モニカは隊員を守りながら【ウェポンガード】を行う。
そのスカイライダー隊を越えた先に、マリィ隊のエアロシップの姿が見えている。
あと少しなのに、そう思った矢先、スカイライダーの1機が急に体制を崩したかと思えば、降下していく。
「牙を剥け!」
「張り切って助けましょう~」
というのも、突如デストロイヤー級エアロシップが現れ、攻撃を仕掛けたのだ。
思わぬ攻撃に敵スカイライダーはかわしきれず、墜落を余儀なくされたようだ。
この奇襲を仕掛けたのは
ビーシャ・ウォルコットである。
崖や谷といった少しでも遠方から見えにくい場所を選び、奇襲をかけるその時まで停泊していたようだ。
しかし、少し離れた位置に【物隠し】で隠していた【僚機】マジックグライダーは、隠れている地点から現れるのに時間がかかる為、奇襲には失敗してしまった。
寝不足な整備士の手伝いがあったとはいえ、時間を合わせた奇襲は難しかったようだ。
「お待たせしました」
ヘッドセットで声をかけるのは連絡係の
ベレッタ・マルールである。先ほどの鈴奈たちの援護要請を聞き、駆けつけてくれたのだ。
「ここは私たちが引き受けます」
「ありがとう!
朝香たちは救助に専念させてもらうね」
こうしてビーシャたちにここを任せ、鈴奈はマジックグライダーと【小隊陣形】十字砲火にて攻撃し隙を作ると、モニカを味方エアロシップへと向かわせる。
鈴奈はそのまま後方につき、モニカの援護につくことにしたようだ。
一方のビーシャたちは奇襲で1機倒したことにより、陣の崩れたスカイライダーに攻撃を畳みかけていた。
「込める魔力量によっては十分威力が出ると思うのですよ~」
マジックグライダーが敵を引き付けてくれている隙に、虚数魔銃にて敵を撃ちつける。
「……いやぁ……明らかに調整ミスってますね~」
その攻撃は有効であるものの、消費する魔力量が明らかに多い。
「またやっちゃいました……なんだか大変なことに……」
気まずそうに呟くベレッタ。どうやら事前にベレッタが行った【ウェポンチューン】が上手くいかなかったらしい。
しかし、それを見て急ぎベレッタも固定銃座につき、援護射撃を開始。敵のスカイライダーもう1機も損傷により、離脱を余儀なくされたようで、残りの1機も諦めて撤退していった。
なんとか、スカイライダー隊を撃退できたようだ。
「バレた伏兵なんて意味がないですからね~」
そのまま、ビージャたちも隠れるのをやめ、マリィ隊の撤退に向け、支援にでられるように発進した。
「ありがとうございます……!」
そしてモニカたちはというと、ビーシャたちのお陰で隊員を無事に送り届けることができたようだ。
とはいえ、ここは今から撤退に向け、激戦区化していくのだろう。
思いがけぬ敵との遭遇にコレットやモニカに負傷がないかも気になるところだ。
朝香の治療を受けるため飛行艦《Queen Bee》にコレットとモニカも引き上げ、鈴奈たちは離脱した。