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エルベ砂漠の戦い

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エルベ砂漠の戦い
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【負傷した隊員たち 2】



 同じく、並行して違うエリアでも救出作業は行われていた。

「早急に救出ができるよう、私たちもマリィ隊の皆さんの捜索に尽力しましょう」

「任せて、舞花ちゃん! わたしもいっぱいお手伝いするよ!」

 遺跡付近からホライゾンホバーボードで移動しつつ、捜索を行っていたのは邑垣 舞花ノーン・スカイフラワーだ。

 隊員たちが遺跡の内側へと隠れている場合にも備え、かぼちゃのランタンの準備もしていたのだが、どうやら遺跡の中へは誰も入れないようであった。

 そこで遺跡から離れて捜索をすることにし、ノーンは【聞き耳】で音を拾っては、【ウォーリーセンス】でその音の先に困った人がいないかを調べていた。

「ノーン様、至れり尽くせりのご協力、本当にありがとうございます」

 ノーンの協力に舞花は恐縮する。そんな中、ノーンがマリィ隊らしき者を発見したのだ。

 隠れていたのはトルーパーの一人のようであった。

「くそっ」

 近づくノーンたちの足音を聞き、隊員は急ぎ逃げ始める。

「安心して、わたしたちは味方だよ。逃げないでくれたら嬉しいな!」

 それを聞き、隊員は足を止め、ノーンと舞花が敵でないかをじっと睨んで確認する。

「わたしはシビリアンだけど軍人の舞花ちゃんのお手伝いで探しに来たよ!」

「援軍か……?」

 微笑むノーンと舞花の様子に、警戒を緩め、トルーパーはほっと息をつく。

 しかし、それも束の間、近くで物音がしたのだ。

 その音の方向を確認すると、そこにはマリィ隊のオペレーターと、乙町 空の姿があった。

 そしてよく見ると、そのすぐ傍には敵のファントム隊がいるではないか。
 空は【僚機】ペガサスリッターと【僚機】オオカミ乗りと小隊を組んでおり、オペレーターを庇うように応戦している。

 空はペガサスに騎乗し、自身が小隊長を務めながら、飛行しつつ【広角視野】を用いてペガサスリッターと共に上空から捜索していた。その真下、声の届く範囲でオオカミ乗りが地上を細かく調べ、連携しながら動いたのもあり、早々に隊員を見つけることができたようだ。
 しかしながら、見つけてすぐに敵に見つかってしまったのだ。

「戦闘は可能な限り避けたかったのですが……」

 オペレーターの横をオオカミ乗りが並行して走り、空がペガサスリッターと共にファントムから逃げつつ、時折無垢のガッダで攻撃をしかけて足止めを試みている。

「くっ……」

 敵の【ヤブサメ】を無垢のガッダを旋回させることで防御。しかし、それを防いでも敵も小隊を組んでいる状態だ。別のファントムがオペレーターを狙い攻撃を仕掛ける。

「大丈夫ですよ」

 空はそれを【大盾のルーン】で守って見せる。流石にファントム3機を相手にするのはきつい。けれども、【私なりの正道】で自身のネガティブな感情を吹き飛ばし、オペレーターに笑顔をみせて安心させる。

「ありがとうございます……!」

 しかし、オペレーターは負傷している模様、このまま走って逃げきるのは難しいかもしれない。

「隊員2名を確認しました。
 敵ファントム隊に追われています。
 援護をお願いします」


 その状況をみて、舞花は通信宝珠にて援軍を求め、すぐに空とオペレーターに声をかける。

「安全圏までの離脱手段に空挺戦車を隠してあります。
 そこまで走って下さい!」

 舞花の言葉に頷き、全員でそこまで飛行ないし、走り出す。

 けれども、空がどれほど注意を払っていても、負傷したオペレーターの移動する速度は遅くなる一方だ。

 ファントム隊の1機の手がオペレーターに伸びたその時、横からバイクが突っ込んでくる。

 そのスピードで砂埃が舞い、視界が悪くなっていく。
 これにより、敵の攻撃の手が一時、緩まる。

 砂埃で視界が悪く顔こそ見えないものの、バイクに乗るその影と共に声が響いてくる。

「オレたちも手伝おう」

「今のうちに走って!」

 ワラセアバイクでやって来たのは水谷 大和だ。
 先ほどからバイクで敵の周りを猛スピードで走り回っては砂を巻きあげ、視界を奪っている。

 大和に対する敵の攻撃には一緒にやってきたリア・アトランティカが【支援砲火】で敵を牽制し、妨害することで対応しているようだ。

「あ、ありがとうございます」

 再び走り出したオペレーターたちの後ろ姿を見守りながら、大和はバイクに乗ったまま、ファントム隊を相手する。
 先ほどと同様、砂埃で視界を悪くしては【僚機】オオカミ乗りと共に【小隊陣形】シュツルムアタックにて連続攻撃を見舞う。

 その連続攻撃で、敵ファントムがよろけた所を見逃さず、思いきり砂埃を上げながら視界を遮りつつ、敵との距離を開けていく。

 大和たちがファントムの注意を逸らすことで、空やオペレーターたちを何とか逃がすことができたようだ。

 とはいえ、バイクの生身でファントムをこれ以上相手にするのは少々危険でもある。

 折りをみて、リアの支援攻撃を受けながら、ファントムを撒き、大和もまた撤退していった。



 一方の舞花や空、マリィ隊の面々は大和たちのサポートもあり、空挺戦車の目の前まできていた。

「あと少しです」

 そして、舞花が事前にノーンに手伝ってもらい【迷彩塗装】していた空挺戦車に乗り込む。
 あわせて、空が負傷中のオペレーターに【恵のルーン】をかける。
 これにより少し顔色が良くなったようにもみえる。もうしばらく、耐えられそうだ。

 すると、申し訳なさそうにマリィ隊のトルーパーが舞花にきり出す。

「もしまだ無事なら……
 マリィ隊長ならきっと残っているエアロシップを目指すと思うんだ。
 そこまで乗せてほしい」

「わかりました」

 上空から空が【広角視野】でエアロシップを探しつつ、舞花が【土地鑑(スフィア)】を活かして道を選んだ上で、【旧時代技術】を用いて運転しながら、エアロシップを目指し始めた。




 進み始めてすぐ、舞花が通信宝珠にて通信をキャッチする。

「足を負傷中の隊員を1名、保護中よ。
 回収のための援護をお願いするわ」

 それはドロテア・リドホルムからの援護要請であった。ヘッドセットにて連絡を試みたようだ。

 ドロテアはかなり用心深く、特異者である確認のため鍵守の名前を尋ねていた。
 舞花もまた通信機器の傍受を心配していたが、これは偽情報ではないだろう。

 居場所を伝え、舞花が空挺戦車で拾いにと向かう。


「ほ、本当に信じていいの?」

 警戒するマリィ隊の者に微笑みながら、ドロテアは身元を明かし、味方であることを丁寧に説明する。

 そして、回収にくる舞花たちを待つ間、【治療術】にて応急処置を施していく。

 ドロテアはワラセアバイクで【土地鑑(スフィア)】を活かしながら捜索していた。
 もし隊員に負傷がなければ、サポートしながら合流地点を決めての移動も可能だったかもしれない。

 せめて敵に見つかりにくくするためにと、迎えがくるまで【人払いの術】を行う。

「温かいものでお腹も満たして?
 少しでも元気になってほしいの」

 手当を終えたドロテアは手際良くマジックケルトで【魔女のスープ】を作り、隊員にそっと差し出す。

「……ありがとう」

 目頭に涙を浮かべながら、隊員は有難そうにスープを飲み干す。

「救援が来るまでの、もう少しの辛抱よ」

 ドロテアは優しく励まし続けた。

 すると、程無くして、舞花たち空挺戦車がやって来たのだ。

「行きましょう!」

 引き続き舞花が運転し、ノーンと隊員が3名。これで定員はいっぱいだ。

 エアロシップ目がけ全速力で走り出したその時、敵のスカイライダー隊に見つかってしまう。


 その攻撃を【全速回避】で舞花が避けて見せる。しかしながら、それだけでは逃げ切ることが難しそうだ。

「隊員3名を輸送中よ。
 スカイライダーに見つかってしまったわ。
 新たに援護をお願いするわ」

 ドロテアは素早く援護要請をした上で、1人バイクに乗り、皆と別の方向へと走り始めた。

「私が囮になるわ」

 空挺戦車は【迷彩塗装】を施している状態だ。同時に動けば、ドロテアの方に注意が行くかもしれない。

 ドロテアの発進と共に、案の定、スカイライダー隊の注意が一瞬こちらに向く。

 これにより、空挺戦車は無事に発車することはできたのだが――……。

 スカイライダー隊はすぐに戦車を見つけ出し、再び攻撃を開始したのだ。
 ドロテアのお陰で距離こそ開いたものの、航空機と車ではすぐに追いつかれてしまう。


 逃げ切れるか――……そう誰もが不安に思った所にライトクルーザー級エアロシップと【僚機】スカイライダーRVerが3機現れる。

「敵を排除して安全を確保しなければ救出もままなりませんからね」

 そのエアロシップに搭乗しているのは白森 涼姫だ。

 先ほどのドロテアの通信を涼姫と一緒にやってきたミラ・ヴァンスがヘッドセットで受信し、駆けつけたのである。

 涼姫は事前に僚機やミラと作戦会議を行っている。その際にミラが【ドルチェ・クッキング】で簡単に摘むものを用意してくれたため、全員がお腹を満たしている状態だ。さらには【ハートケア】で精神も落ち着かせている。
 冷静に存分に戦えるだろう。

 まず涼姫は【戦況分析】で敵と味方の位置を正確に把握。味方に攻撃が流れてしまわないように細心の注意を払いながら仕掛けていく。

 涼姫の指示の元、僚機の1機が動き出す。それに合わせて敵のスカイライダーも警戒してかその1機を集中的に狙い始めた。

 すると、それを見計らったかのように、残りの僚機2機が敵スカイライダーの死角へと潜り込み、同時に攻撃を開始する。

 その攻撃を旋回して回避せねばならず、敵は盾の陣を保っていたが、2手に分かれざるを得なくなったようだ。

 しかし、先ほどの2機こそ囮なのである。

「次は十字砲火よ」

 【全方位索敵】でミラが敵の動きに注意を払いながら、連絡係として、涼姫の指示を僚機に伝える。

 陣形を崩し、1機となってしまった敵スカイライダーをエアロシップと挟み込むようにして、【小隊陣形】十字砲火を浴びせていく。

 狙うのはエンジン部分だ。2機が攻撃を仕掛けてくれていた間にしっかりと【弱点察知】をすることも忘れてはいなかった。

 程なくして1機を墜落させることに成功。こうなれば4対2、勝負は明白であった。

 引き続きエンジン部分を狙い、敵は大きく損傷し、飛行が困難な状況へと陥る。残りの2機もそのまま撤退を余儀なくされ、涼姫は見事に敵部隊を追いやった。






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