■プロローグ■
「彼ラハ無事ニ帰ッタダロウカ」
アイアンベルトの地下深くにある研究施設の長
ドクター・ジーニアスは、数日前に訪れた者たちの顔を思い浮かべていた。
「ドクター、なぜ“姉”に見せたのです? あれ、わざとでしょう」
助手であり、“作品”である女性が疑問を口にした。
「アレヲ含ム初期型ハオマエト違イ、己ガ何者カヲ知ル事ナクココヲ出タ。
当時ハソレデヨカッタノダ」
「……ショックだったでしょうね。おそらくは、通常のブーステッド同様“人間”だと思っていたでしょうし」「人間デアル事ニ変ワリハナイト思ウガネ。
ダガ、ソノ程度デ壊レルホドヤワニ造ッタ覚エハナイ」
モニターに、二人の少女が映し出される。
一方はアンティ。もう一方は、彼女よりも少し幼い。
「自分を見失ってしまわないか、心配です」
「ソウデアレバ、所詮ハ失敗作ダッタトイウコトダ。
自分ガ何者デアルカハ、他人ニヨッテ決メラレルモノデハナイ」
助手が呆れたように息を吐く。
「自分自身が決めるもの、ですよね」
ジーニアスは笑った。
「ソウダ。己ヲ定義デキルノハ己ノミ。ワタシノ“娘”タチハ、必ズヤ壁ヲ突破スルダロウ」
モニターを切り替え、地上から訪れた者たちからもらったデータ――IDDの画像を映し出す。
ジーニアスには、ブルー粒子の知識も、IDDの知識もない。
だが、断片的な情報を組み立てるだけで、その正体には察しがついた。
「コイツラハ、自分ガ何者デアッタカモ忘レ、タダ見当違イノ憎悪ノミニ縛ラレタ……哀レナ敗北者ダ」
■目次■
プロローグ・目次
【1】慰労会の始まりと準備
【1】ウィジーは外へ、アドルフはのんびり
【1】アドルフの想い
【1】ハイゼンベルク、博士たるもの
【1】IDD捕縛について語る/マシロとアイエフ
【1】キョウという人
【1】キョウに心を開く
【1】聞く時に聞く/語る時に語る
【3】それぞれの想い
【3】模擬戦1
【3】模擬戦2
【3】模擬戦3
【2】防衛戦の始まり
【2】防衛戦1
【2】防衛戦2
【2】ネームレス1
【2】ネームレス2
【2】ネームレス3
【2】ライトニング1
【2】ライトニング2
【2】ライトニング3
【2】Howling1
【2】Howling2
【2】Howling3
【2】キティーズ合同戦線1
【2】キティーズ合同戦線2
【2】キティーズ合同戦線3
【2】キティーズ合同戦線4
【2】アライアンス・ローレル
【2】キャプテンルド
【2】空猫の旅団1
【2】空猫の旅団2
【2】ホークアイ1
【2】ホークアイ2
【2】ホークアイ3
【2】空の綻び
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