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アンダーグラウンド動乱

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アンダーグラウンド動乱
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■幹部がいなかったソロモン派■




 ――セフィロトで虐げられている魔人たちにとって、ソロモン派はひとつの希望だ。
 そう思うのはジェラルディン・クレイトンだ。
(ソロモン派のセバスチャンは、“我々は魔人に秩序をもたらすために活動している”と言っていた。セフィロトに生きる罪のない魔人たちの事を考えている派閥は、彼らだけだ。教会と魔人教団の戦いがどんな形で終わったとしても、ソロモン派が居なければ、魔人たちに平穏をもたらすことはできない――――)
 魔人たちを救うためにもソロモン派を救うことが必要だと、ジェラルディンはソロモン派と思われる完全憑依にて戦う魔人達を見た。
 聖騎士であるため、ディミトリオスは天使や悪魔といった霊的存在を感知する能力がさらに高まっている。
 ソロモン派の中で最も強力な悪魔を憑依させている魔人が幹部だろうと目星をつけて、ジェラルディンにその男を教えた。
 完全憑依Ⅲで琢磨の形状が全身に及び、魔界の悪魔に近い姿になっているジェラルディンなら、警戒も抱かれにくいだろうと、彼女をリーダーとして交渉するのだ。
「俺は魔人教団がどうなろうと関係ねーけど、ジェラルディンが困ってっからな」
 スキル現地協力者で活動地域のレジスタンスの協力者から、現地についての情報をも得ていた錫川 牽太郎は、土地鑑(セフィロト:UG)で効率のいいルートを割り出してディミトリオスが指す方向へと2人を案内する為に走り出す。
「ボクも付いていくよ」
 ソロモン派の幹部に会いたいと言った錆原 アイネもその後を追った。


 敵のモロク派は多い。
 デモンハウリングの悪魔兵装――大型拳銃を手にディミトリオスはヘブンアンドヘルで憑依している存在に身体を預け、敵を薙ぎ払う。
 その間にジュラルミンと錆原はソロモン派のリーダーらしき男へ近付いた。
「助けたいんだ」
 錆原はそう唐突に言った。
 驚いている男に。
「助ける理由? セバスチャン、もしくは〝サルガタナス”、覚えてるでしょ? 聖骸布の奪還戦で、ボクが仲間と一緒に敵対した相手。ボクは貴方達の幹部に関わったことがあってさ」
 にっこり明るい笑顔を見せて。
「人を助ける理由なんて、『袖擦り合ったから』、ただそれだけで十分なんだよ」
 その言葉に頷いたジェラルディンは姿勢正しく自己紹介をした。
「唐突だけど、貴方がソロモン派の幹部? 私はジェラルディン・クレイトン。貴方達の手助けがしたいの」
 悪魔を憑依させたその腕で、敵を一掃したその男は、ああと頷いた。
「悪い、俺は幹部じゃない。が、ここにいるソロモン派をまとめているのは俺だ。俺で良ければ話は聞くが」
 アンタ、モロク派じゃねぇな、と笑ったその男曰く下っ端だけで戦っているという。
「間接的だけど、貴方達の仲間のセバスチャンと少し話をしたわ。彼の主張に全面的な賛成はできないけど、共感できる部分は多かった」
「ああ、そう言ってくれると嬉しいね」
「貴方達には生きていてもらいたいの。この世界の魔人たちのために。……お願いだから助太刀させてくれない?」
 セバスチャンはボク達の所にいると、そう白状したのは錆原だ。
「幹部を捕えておいて助けるなんて矛盾してるかもしれないけど、そうしたいと思ったから。ボクはセバスチャンに言った、魔人が力を強くしても堂々巡りだと。魔人が虐げる側に回るだけだと……まさか、魔人が魔人を虐げようとするとは露とも思わなかったけれど。強い者は、彼が望む『棲み分け』なんて望まないから」
 虐げられる事無く、ただ平穏に過ごしたいのだと、その想いが錆原を動かした。
「ボクはさ、迫害だとか蹂躙だとか、理不尽なのは嫌いだからね」
 男を力づけるように笑顔で錆原はそう言った。
(……けど。彼の考えに共感できるところも、確かにあったんだ)
「手助けか! それはこちらからお願いしたいな! 頭がいなくてソロモン派が全滅するのは目に見えてるんだ!」
 ディミトリオスの戦いぶりをみて、実際助かってるしな、とその男は通信機を取り出して他のソロモン派のメンバーに連絡を取る。
「大体、馬鹿正直に俺達の幹部を捕まえましたって、こんな危険な場所に、負け戦ともいえる場所で言うなんてな」
 信用しないワケがないだろ、と。男は攻撃を受けて怪我を負ったがそれでも楽しげに笑った。
 ジュラルディンは魔界の瘴気で闇を吸収し、地獄の炎陣で燃え盛る硫黄で自分と男の周囲を囲んだ。
 その間に錫川はバリケード構築で素早くバリケードを張る。
 もし交渉が上手くいかなかったとしても、利用して貰えるかも。とあったが……押され気味な現在、わりと多用することになる。
 前に前に出て、ジュラルディンは憑依させたイフリートの炎を操る力を使い敵を焼き払うように攻撃していく。
 ジュラルディンが前に出ている内に、バリケード内に避難した負傷者にディミトリオスはホーリーキュアで怪我の回復をした。
 錆原のアイアンイヤーでサイボーグ化した耳が聞き耳で拾った音をデータ化する。
 そしてアナライズで分析した敵の能力と合わせ、土地鑑(セフィロト:UG)で地形を頭に叩き込み、どの方向から何人の敵が迫ってくるかをまとめていく。
 ソロモン派が集まるバリケードの前で錆原は自分が得た情報を皆に伝える。
 そして、シャイターンハンドでクロケル【ザガン】を憑依させた右腕を見せて、敵の中へと突っ込んでいく。
 右腕に注目を浴びさせ、それに気を取られている敵に左手に仕込んだスタンガンを食らわせる。
 スタンガンに気付いた敵には、その隙にシャイターンハンドだ。


*  *  *



 荷馬に荷車を取り付け、祓魔師アバターで得た天使や悪魔、魔族などへの感知能力を頼りに、アルバート・エヴァンスは激しい戦いがある場所を避けて走らせる。
(敵味方入り乱れての乱戦となればかなりの数の負傷者が出ていることでしょう。人の命に派閥は関係ありません。早く一人でも多くの方のお命を助けることができれば良いのですが……)
 包帯や傷薬を荷馬車に乗せて、人気のない所に潜んでいそうな……そんな場所に潜んでいるなら、怪我を負っているのだろうとアルバートは探す。
 道端途中に倒れている人を見つける方が早かったが。
 負傷者の振りをして不意打ち、の可能性を考えながら、EC護身術をいつでも行えるよう警戒しながら近付く。
「大丈夫ですか?」
 ――ピクリともしない。
 近付き、仰向けさせると気絶している、大怪我を負っている。
 癒しの祝福で癒しながら、ズルズルと荷馬車の方へ連れて行く。
 荷馬車の中で傷の手当をしていると、民間無線機が聞き取り辛い音を出す。
 どうやら、ソロモン派のメンバーに怪我している人が多いらしい。
 バリケードの中で身体を休ませているという。
 ……戦場外よりも、戦場内の方が怪我人は多いな、と。
 アルバートは無線機で聞いた場所へと向かった。


*  *  *



(モロク派のやってることは許せないよ。他の派閥も色々やらかしてるけど、今回は協力してモロク派をやっつけよう!)
 界霊獣ラブを召喚し、自分と一緒に居る仲間の身体能力を上げる。
 軍用強化外骨格ユニット【軍用パワードアーム】に乗った雷都 美幸アーニャ・カラシニコバを肩に乗せ、戦場を駆ける。
(生贄……? 命の「あたたかさ」を奪うなんて許せない……。お仕置きが必要です)
 モロク派は許せないが、脆苦覆臓を倒しにいくという特異者は多い。
 そっちは任せて、攻撃の的になっているソロモン派・ゴモリー派の援護を。と、思っている二人。
「将来的にらぁめん屋『華厳』のお客様になるかもしれないし、無駄な殺生は控えたいね」
 とはいえ、戦うのは苦手という雷都。
 空間知覚で戦況を把握しつつ、アーニャがソリッドアーツでの立体的な動きで、的を翻弄し積極的に攻め、雷都が軍用強化外骨格ユニットの大きな身体をもってソロモン派・ゴモリー派と思われる魔人を守る。
「こっちですよ……? どこを向いているのでしょうか」
 インファイトで距離を詰め、バリスティックナイフ【対魔族用ナイフ】をファストスラッシュでの素早い斬撃を相手にお見舞いしながら、雷都と共に走るアーニャ。
 マルコキアスがアーニャの死角を守るように背後で地獄の炎陣を展開し、燃え盛る硫黄で周囲を囲む。
(恩を売るような事は好きじゃないし……)
「うわっ、とと……よろけちゃった」
 ちょっとこけたふり、雷都は偶然を装いながら。
「まずはモロク派をどうにかしよう!」
 敵かと身構える魔人にそう言って敵意がないのを示して雷都は走る。
 特異者からしてみれば、教会の敵、魔人はどの派閥でも変わらない対立している相手だ。
 何人かは特異者の手によって葬られているのかと思えば。
(特異者から攻撃を受けるかもしれないけど、出来るだけ対立したくないなぁ……)
 アームディフェンスで攻撃を受け止めながら、音切【ウィスパード】を手にファストスラッシュによる高速の斬撃をお見舞いした。



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