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アンダーグラウンド動乱

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アンダーグラウンド動乱
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■弓月の手を引いて■




 ふうっと、アンジェラ・バゼットは溜息をついた。
「魔人の派閥争いか……こういうものは何処にでもあるものだな。そんなものに興味はないが、友人を助けるため、というのであれば手を貸す理由にはなる。祓魔師がわざわざ魔人に会いに来るぐらいだ。それ相応の間柄なのだろう」
 うん、と頷いた黒瀬 心美は、前方を走る弓月に気付く。
 たたっと駆け寄って、ぽんっと、黒瀬は弓月の肩を叩いた。
「祓魔師が魔人に会いに来るなんて珍しいねぇ。ダチを助けたいって?」
「ええ、それでクロリスに会いに来たんだけど」
「そいつはマルファスを従えた魔人のことかい? まぁ何でもいいさ。ダチを助けたいってんなら手を貸すよ」
「ありがとう!」
(鼎さんの目的がロンダさんを解放することなのであれば、力になりたい)
 笑顔で黒瀬に礼を言う弓月の横顔を見て、決心を固めるのは今井 亜莉沙だ。
「鼎さん、あなたはすごいわ。あたしが『あの出来事』からなかなか立ち直れずにもがいて、せいぜい忘れずにいることくらいしかできなかったのに、あなたはちゃんと先に進むことを考えていたんだものね。だからあたしは、あたしにできる限り、あなたとあなたの目的を護るわ。」
 強力させてね、と言う今井にも、弓月は礼を言う。
 その対話を弓月の横で聞いていた樹郷 雪愛も同意を示すように頷く。
「ロンダさんとの再会の約束を果たす為に、彼女を救う手がかりが欲しいですね……」
(鼎さんはロンダさんを救う為に必死になっているのですから、私も頑張らなくては……!)
 ぎゅっと樹郷は弓月の手を握る。
「なによりもロンダさんとの再会の約束を果たす為にも、です!」
「うん、悠長に寝てるだけのロンダを叩き起こして、「おはよう」って言いたいの」
 そして、弓月も樹郷の手を握り返した。
 敵の集団がいる。
 樹郷は、まず桜吹雪で味方の心を癒した。
 そして、瞬刻の見切りで敵の動作を見落とすことのないよう、警戒して見る。
(桜の花が舞う中で、仲間の皆が怪我をしないで済む様に……!)


(先の件で犠牲にしなければならなかった生命を救う為の手立てを見つけられるのならば、協力しない訳が無いよ。結果的にゴモリー派に協力する事になるけど……)
 ゴモリー派には生き残って貰わないと、と。他方 優都歩守 暮狼が乗る戦闘用バイクの後ろで弓月の背中を見た。
 怒りや悲しみは、防毒マスク――仮面の後ろに隠す。
(彼らが今後どんな行動に出るかは今は考えない。敵になるのであればその時に止める……味方になってくれるのならば……いや、今は高望みはしないよ)
 身につけている鈴は――今日はどのような音色をだすのだろうか。
「美少女の護衛ぞ!? 断る理由などないわい!!」
 弓月の目の前でバイクを止めた都歩守が鼻息荒く張り切っていた。
「我輩は都歩守暮狼と言う。よろしゅうお願いするぞ!」
 にかっと笑った都歩守の戦闘用バイク。
 ……誰かが乗っていたような気がしたけど、と、弓月は軽く首を傾げて「よろしくね」と都歩守に軽く自己紹介をする。
 戦闘用バイクをパワードスーツに変形させ身につけた都歩守は、フリーランニングを使った高い移動力で、縦横無尽に駆け回り、ウィスパードで敵に切りかかる。
 なにやら隠れている相手がいれば、こっそりとその近くに物隠しで隠しておいた手榴弾を置いて即立ち去る。
 天使の剣を手に、弓月はエンジェルライドで身軽な動きで敵に向かう。
 長期戦を考えているのか、あまり魔法を使おうとしない弓月だ。大技は使わず、何度も相手の攻撃を剣で対応する。
 彼女の背後から狙って来る攻撃も気付いているのかもしれないが――――。
 他方は影から飛び出し、相手に飛び掛る。
 武術の心得での正確な一撃を相手の脇腹に。
 他方の姿を見つけた都歩守は、一度預かっていた巨戦斧アイアックス【ゴリアテの巨斧】をハンマー投げの要領でパワードスーツの力も借りて投げ渡す。
「我輩を前座に置いたのじゃからフィナーレぐらい派手に決めぃ!!」
(何、我輩はノーコンじゃが他方なら上手く受け取ってくれる筈じゃ)
 武術の心得で、勢いのあるその巨戦斧アイアックスの柄を勢いを殺す為にクルクル手首で回す。
「じゃぁリクエストにお応えして……派手に決めますか」
 チャージで力をため、手の中で回っている巨戦斧アイアックスに自らの血をまとわせる。
 そして高く跳躍した他方は、集結している敵の中にあったコンクリートの塊に、思い切りその斧の刃を叩きつけた。
 飛び散る破片。ブラッドブレイドの効果が付いている血が破片のダメージと共に、と。
 直撃だと人体を叩き割りそうなその一撃。
 他方は人に向けたくはなかったのだ。
「例え魔人相手だろうと無駄な殺生は好まない……。その毒が回りきる前に帰ってくれないかい?」
 そう聞いたが……ダメージがあれど、仲間の多いモロク派だ。多少下がろうとも、戦場を去る気はないようだ。
 そうだろうね。と、悲しげに他方の鈴が鳴った。
「鬱陶しい雑魚共はアタシらに任せて、アンタは自分の目的に集中しな!」
 中々倒せない多数のモロク派に、黒瀬の瞳が鋭くなる。
 弓月にそう言い、前に出る黒瀬。
「来な! アバドン!」
 アバドンを完全憑依Ⅰさせた黒瀬は、数多い敵の中へと突っ込んでいく。
「心美、お前は聖騎士としての初陣だ。ぬかるなよ!」
 錬成【魔銃】で銃を生成したアンジェラは、スナイプを使い、黒瀬の左右・後方から攻めようとする魔人を撃つ。
 それでも、何か企んでいるような黒瀬に魔人達は手を伸ばし、銃撃を受けながら捕まえた。
 その魔人と黒瀬を引き裂くように、アンジェラは練成【鉄壁】で鉄壁を出現させる。
 敵陣のど真ん中。
 黒瀬は、アドバンの毒を広範囲に撒き散らした。
 強力なその毒に苦しみ、悶える者もいれば、耐えて黒瀬に立ち向かう者もいる。
(行け!)
 黒瀬は、強い瞳を持って、弓月をクロリスへと促した。
「この敵はあたしにまかせて。あんな思いはもうしたくないから、あたしも少しは強くなったのよ」
 魔人達が弓月を見る。
 ここにいるメンバーが弓月を先にいかせようとしている事に気付いたのだ。
 魔獣が弓月へと飛び掛ろうとする。
 プリンシパリティ【プリンスポゼッション】――権天使の一部を憑依させ、ディバインパニッシャーで取り込んで自身の身体能力、魔力を飛躍的に高めた今井が、すかさず弓月の前に出る。
 祓魔の印――セフィロト教会の紋章を右手に描き、そのまま魔獣を殴り付ける。
 デモンブレスを吐く魔獣。
 アンジェラの弾丸が魔獣を撃ち抜く。
 世良、アリーチェ、他方、都歩守、黒瀬が弓月に向かってくるモロク派に気付いて走ってくる。
 その身に、魔獣の攻撃を受けながら、今井は「早く!」と声を上げる。
 一緒にここまで来た仲間を、と思う弓月の腕を樹郷は取って、クロリスがいると思われる方向へ走り出す。
 手には虚数魔銃。それは樹郷の魔力を挙げ、魔法の発動を補助する役目もある。
 魔力を弾丸として撃ち出し、練成【氷刃】で生成した氷刃を敵に向かって投擲し、練成【爆薬】にて爆薬を生成し爆発を起こす。
「ほら、鼎はクロリスに頼みたいことがあるんでしょ!」
 行きなさい! のアリーチェの声に、弓月は全力で走り出した。


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