■ゴモリー派のクロリス■
the・Ladyは土地鑑(セフィロト:UG)の知識をもって最上を案内しながら、戦場を走り抜ける。
忍びの歩法、壁走りで悪い足場を避け、クロリスまでスピーディに辿り着く最上。
「戦闘支援はもちろん、細々とした住人の避難救助まで! そんなお人好し集団『セフィロト教会』が助けに来ましたよ!」
思いっきり恩着せがましく――また気安く声を掛け、クロリスの死角になるであろう背後に気を配り、隠形術で気配を断ちながら姿を隠すように心がけ、鉞――大斧でのアームディフェンスで守りに入る。
「敵の敵は味方……とは言っても、簡単に信用はしないでしょうね。行動で信用してもらいますわ」
同じく土地鑑(セフィロト:UG)で効率よくここまで辿り着いた松永は完全憑依Ⅱでアバドンを憑依させてモロク派に向かって広範囲に毒を撒き散らした。
そして、ホーリートーカーでアバドンの声を聞きつつ、敵の攻撃を回避し、突撃してモロク派を攻撃する。
松永の後方からは、
白銀の錬金術師が練成【銀槍】で生成した槍を投槍し、援護する。
「私個人としては、クロリスのような窮地に瀕しても己の志を貫こうとする傑物は嫌いではありません。そういった方とは是非お友達になりたいと思いますわ」
そう言って胸元から取り出したラムネをクロリスに渡す。
「こちらは、クロリスに差し上げます。水の悪魔を操る足しにもならないでしょうが、ほんの気持ちです。今はこんなものしかありませんが、生き残ったら野点に招待させていただきますわ」
攻撃してくる者は、ソロモン派であれど特異者であれど敵だと。松永はゴモリー派に攻撃を仕掛けてくる敵を見る。
そして最上は、これからの吸血帝国、サタンとの決戦での助力をクロリスにお願いする――――。
「恩は返したいわね」
派閥全員の意思をクロリス一存で決められないが、クロリス個人としては助力したい気持ちはあるのだと、そう最上に伝えた。
「クロリスさん、先日はお世話になりました。お体に大事ないですか。――敵の敵が味方という保証はどこにもないんですよ」
クロリスの目の前に立つのは納屋だ。
松永と反対の言葉を口にし、穏やかな表情でそこにいた。
チェーンソーをクロリスに振るう納屋。
ホーリートーカーで憑依している存在の声を聞いていた松永が、ニスロクの戯れ【板チョコシールド】で納屋の攻撃を受ける。
納屋はすかさず、AAリボルバーを取り出して、その至近距離で弾丸を――。
弾丸は、明後日の方向へ飛んだ。
ラムネを開け、中の液体を納屋に向けて投げてクロリスが幻影を見せたのだ。
納屋が負った傷を化膿させ、回復を塞ぐ。
「ゴモリー派は強硬派じゃないし、鼎をモロク派から逃がしてくれたんだろ。だったら、やっぱり放っておけないよな!」
そう元気な声で現れたのは
世良 潤也だ。
「鼎から話は聞いた。力を貸すぜ!」
にっと、クロリスに笑顔を見せ、コルリス王国軍の盾を構えてクロリスへと駆け寄ろうとするが、向かい合っている納屋に首を傾げる。
「まったく……見てられないから、助けてあげるわよ。だから、勘違いしないでよね!」
そして、世良の後ろにいた
アリーチェ・ビブリオテカリオも、きょとん、と目をしばかせた。
時間が経てば、クロリスの援軍の特異者達が集まってくるだろう。
クロリスだけでも難儀しそうだというのに――――。
(引き際が肝心です)
納屋は無言のまま、その場を去った。
(魔人教団に手を貸すのは不本意だが弓月が世話になってるみたいだしな……。モロク派の力を削ぐためでもある、敵を集める囮としてせいぜい利用させてもらうぜ!)
ゴモリー派、ソロモン派が狙い打ちにされているなら、それを利用しない手はないと、
ユウ・カシマは魔人達の中に突っ込んでいく。
エンジェリックブーツで速度を上げ、天使の力を借りた蹴りで、クロリス達に襲い掛かろうという魔人達を蹴り倒し、狙いの的になっているクロリスへと向かう。
「ちっ、仕方ねぇ、全力でやるか!」
倒しても倒しても切りがない。
サンクティフィケイトによる神聖な祓魔の力を自分にかけ、夢想の火焔【火の妖気】を吹き上げる。
ユウは拳と蹴りで魔人達を倒し、クロリスの元へと辿り着く。
「あんたがクロリスだろ? モロク派を潰すためだ、不本意だが協力してや……る……?」
そう言ったユウは、クロリスの顔を見て思考が停止する。
その顔は、ユウの想い人によく似ていた。
彼女への想いに引きづられ、思考と感情がごっちゃになる。
彼女じゃない、と自分に言い聞かせ、ユウはもう一度口を開く。
「いや……違う。あんたを護りたい、あんたの力になりたいんだ! オレをあんたと一緒にいさせてくれ!」
熱が篭ったその声に、クロリスは目を見開き、くすくすと笑った。
「そう言ってくれると嬉しいわね。ありがとう。よろしくね」
目を輝かせ雄叫びを上げたユウは、意気揚々とモロク派相手に大暴れし始めた。
その後ろについていき、クロリスも怪我を負った敵から傷口を化膿させて回復させないようにしていく。
ユウについていくのは大変だろうと
シュヴェルトライテは溜息をつきながら、ユウとクロリス――手の届く範囲の味方に恵みのルーンを施した。
僕もクロリスと一緒に共闘を、と
アクア・フィーリスが手を上げる。
「サタン様がどうのこうのの前に、関係ない人達まで手にかけるのはなーんか許せないからね……ケケケッ ホント、僕……イヤ、悪魔らしからぬ言い分だよ。ま、本音だけどさ」
デモンナックル【Benda】を持ち、悪魔を完全憑依Ⅰさせたアクアの口調はいつもと違う。
「とりあえず、おしゃべりしながら楽しく戦おうか」
「あら、聞きたい事があるの?」
ちょーっとね、と、笑うアクア。
「ゴモリー派の事、ゴモリー様って?」
「老若問わず、女性の愛をもたらす力も持つ悪魔よ。美しい女性の御姿で、大きなラクダにまたがってるわ」
女性魔人たちの居場所を作るために翻弄してるの、と、クロリスは優しい笑みを見せる。
それでゴモリー派は女性魔人が集まってるのかと、アクアは頷き。
「君がゴモリー様を信じる理由って?」
「自分達の居場所を作ってくれる人だから。心から全幅の信頼してるわ」
どこまでもついていくと言うクロリスに、なるほど、と。
「ふぅん。僕もゴモリー派に入れてもらえないかな? 何もしてあげられないけど、君の信念に力を貸したくなっちゃった」
「気まぐれであれば所属しない方がいいわ」
派閥同士の争いもある。信念の違う派閥へ入るというのは、それなりの覚悟がないとね。と。
教会側にいる特異者を自分達の仲間にするにも、それなりの心構えが必要だと、クロリスは困った風に眉間にシワを寄せた。
「だね。ま、気まぐれだよ、気まぐれ」
雷落としで敵の脳天に雷を落としたアクアは、デモンナックル【Benda】でそのまま相手に一撃を入れた。
同じ祓魔師同士、一緒に戦った方がいいと、世良は弓月を探した。
コルリス王国軍の盾で敵の攻撃を受け流し、シールドバッシュで突撃し、弓月へ寄る。
「さーて、ここからが本番だ」
アークポゼッションで大天使の一部を憑依させた世良は、エンジェルレイ、エンジェルフレアの光と炎を使い、敵にダメージを与える。
怯む敵達のど真ん中にハンドメイドマイン――地雷を投げ込み、続けてアリーチェは錬成【爆裂】で爆薬を生成し、ハンドメイドマインがある方向へと追い討ちをかけるように投げ込む。
ババババンッッ!!
爆発の音が響き渡る。
バーン!!
そして姿勢を崩した誰かが地雷を踏んだ。
「わっ!」
爆風を受け、ちょっと身体が揺らいだが、爆風が止んだ後には、かなりの数の魔人が倒れていた。
よし、と、まだいる敵を見てアリーチェはまた爆薬を練成する。