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転移の海

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転移の海
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――異質な姿――


 ネームレスが放ったグライティキャノンの第一射目の後――

「多数で囲って棒で叩くのは戦いの原点にして終点。
問題はどうやって囲うかって事だけど……まーこのスーパーシスターさんにお任せあれ♪」

 オペレーターを務めるクラリモンド・リーパーは、何か妙案でもありそうな雰囲気でそう言った。
事実、クラリモンドは自身の防衛戦術を元に割り出した効率的な交戦座標は仲間達にとって有力な情報となった。

「今日は良い天気だね♪ まるで勝利の女神に祈りたくなるような……ああ、キミ達にそれは必要なかったね。
各自得物は持った? Good♪ それがあれば、勝利の女神もただのデクさ♪」

「問題ない、嫌いじゃない」

「もうちょっとマシな表現はないわけ!?」

 テンション高めのクラリモンドに感化されたのか、普段よりもテンション高めになっている如月 勇葵が返す。
桐ヶ谷 燈子に突っ込まれるものの、二人共どこ吹く風と言った様子だった。

「ネームレスのルーデル様の為に注意を引き付けてやる。さぁて、お仕事の時間だ」

 喋りつつも勇葵は発艦準備を整えていた。

「ユウキ・キサラギ、極風、出撃する」

 とびっきりのオリジナル笑顔でそう言い、勇葵は出撃していった。


「崩界霊獣出現! フフフッ……怖い? ねぇ怖い怖い怖い? あっは! 今イラっとしたでしょ?
すごーくイラっとしたでしょ!? 殴りたかったら、無事に帰って来る事だね!」

「前方注意! 砲身の熱い視線がキミに送られてるよ!
『アイシテル』の発射順序は送ったから、やんわりかわす事だね♪」

 既にそれはクラリモンド節とでも言うのだろうか、普通とは違う通信がネームレスの仲間へと送られる。
情報は鮮度が命だと自負するだけあって、クラリモンドの通信は癖が強いものではあったが的確であった。


 勇葵と共に、スローテンポ、柊 恭也伊勢 日向島津 正紀ルドルフ・キューブパティア・ノイラートが界霊戦艦へ向かう。

「さあて、ボクたちもお仕事しないとねえ」

 フー・ファイターに乗ったスローテンポはスイーツ狩りで爆発四散しそうな財布を心配しつつ、味方から送られてきたデータを整理した。

(界霊には毎回驚かされるけど今度は戦艦と融合か。変形して巨大IFとかなってないだけまだましなのかな)


「こちらは小型艦ばかりだというのに、それで戦艦を討てとは。せめて我々に巡洋艦でも回せというのです」

 日向が界霊戦艦への道を拓くように、前に塞がる界霊たちを小口径艦砲でふっ飛ばしながら、愚痴っぽく呟いた。
だがそう言う日向もわかっていた、インテグレーターとの戦いでゼスト連合軍にはこれ以上、割ける戦力がないのだ。
それでもこうして、修復機能を持ち合わせている界霊戦艦や崩界霊獣と戦うことを考えれば、愚痴の一つも言いたくなるものだった。

 先を拓く日向と勇葵のマスクドデバイサーのお陰で、界霊たちを、そして崩界霊獣を潜り抜けて、目的の界霊戦艦へと近づく。

「そんじゃ行こうぜ。傭兵らしく好きなように生き、好きなように死ね」
「では、始めましょう。愉快な戦争ゴッコを」

 恭也と日向が残忍な笑みを浮かべつつ、界霊戦艦へ向かう。
フー・ファイターに乗った恭也がフレズヴェルグ――IF用追加ブースターの出力を最大に上げ、高度限界ぎりぎりまで上昇する。
日向は恭也の邪魔にならない位置で、砲撃支援とスナイプを用いて攻撃を開始していた。


「切り刻むぞ! でかぶつ!」

 形容しずらい表情で叫びながら、勇葵は界霊戦艦に取り付き、砲台や機関部を両手のトンファーブレードを巧みに使ったインファイトで派手に斬りつけ始めた。


「できるできないではない、やるかどうかだよぉ?」

 口調を崩さず、スローテンポは味方との連携、そしてDPSを第一に考え、界霊戦艦への攻撃の隙間を縫うように攻撃を繰り出した。
PKGHGのレーザーリヴォルバーカノンで味方と同一攻撃対象に狙いを定め、且つ攻撃箇所は脆そうな場所を狙っていく。


 界霊戦艦に最後に辿り着いたのは、正紀たちだった。
高速化で機動力を上げた水面効果翼機をルドルフが操縦する。
その水面効果翼機は、パティアが同乗し、正紀のラースタチカの足場としての役割も果たしていた。

 水面効果翼機が攻撃を受けない範囲まで近付き、正紀とパティアを運び終える。
そのままルドルフは水面効果翼機に標準搭載されている機銃で、砲撃支援を使って正紀とパティアを狙う敵を迎撃した。

 ルドルフと分かれた後、パティアは片翼の衣で空を飛びながら、アクティベートしたDD:ヴァリアブルとDD:タンクガンを召喚して正紀の追従しつつ、正紀を援護した。
正紀が界霊戦艦への攻撃を開始した後も、向けられる攻撃をパティアは大盾のルーンで防いだりと忙しそうに飛び回った。

 恭也が上空へと向かったのを見て、正紀も攻撃を合わせるために策を練る。
静寂のカツガで英雄挟撃を放って、界霊戦艦の武装破壊を試みようと考えた正紀だったが、一つ思いついた案があったためにそれを試すことにした。


 恭也がシールドを構えてリンケージを発動する。
エンハンスボディによる己の耐久力を信じてそのまま出力全開で急降下する。
勇葵が引き付けてくれているとはいえ、副砲は360度全てを狙えるため、急降下する恭也のことを狙うことも難しいことではなかった。
そこを先読みしていた恭也は、フー・ファイターの特性でもある『イメージによる先行入力』により、回避機動を行う。
 だが、最初以外はそうする必要もなくなるのだった。

 正紀が思いついた案とは、副砲をレージングによって動きを止めようという試みだった。
さすがに副砲の全ての動きを止めることは出来なかったが、恭也が急降下するまでの時間稼ぎをすることくらいは出来た。

 急降下のスピードとレージングによって狙いがきちんと固定されていたことにより、恭也のヒートソードは副砲の砲身を易々と斬り落とした。
それだけではなく、副砲の中心部にまでそのヒートソードは深々と突き刺さり、壊滅的なダメージを与えることに成功した。

「ヒュー♪ 爆撃王の真似事とはよくやるよ。最初に比べて武装減ったとはいえ、真上から副砲に向かうとか正気? 良いね良いね、最ッ高だよ!」

 すぐさま、テンションが最高潮に達したと思われるクラリモンドから通信が入った。

 正紀はレージングが解けたのと同時に静寂のカツガで追い打ちのように英雄挟撃を砲台へと放った。

「リミット解除! 舞朱雀!」

 更にリンケージを発動した勇葵が、通常攻撃とは思えない勢いと台詞で砲台への攻撃を繰り出す。

「この一撃で奈落へ落ちろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 まるで界霊戦艦とタイマンを張っているかのような勇葵の攻撃はまだまだ続いた。

「当たらなければどうということはない!」

 IF用追加ブースターの入出力とスラスターの動きを器用に加減して、回避を図るスローテンポが言う。

「なんとーっ!」

 リンケージを恭也たちの攻撃に合わせて発動し、破壊速度を上げる。
そのまま、4人は退避通信が入るまで、砲台への攻撃を続けたのだった。




 一方で、グライティキャノンの第二射目に備える、ロッカの防衛艦ではチャージ中の3人の護衛を燈子と藤村 千悠紀が行っていた。
それと共に、防衛艦の護衛を行っているローゼ・シャルフシュッツェクロエ・クロラ姿も相まって、甲板は慌ただしかった。

「ぁあ、もう! 見てられない!!」

 甲板へ飛び出してきた燈子が性能を上昇させ、最適化して貰った対空四連機関砲をアクティベートするとすぐに三人を守るために、それらを界霊へと放ち始めた。

「弾幕展開ー! 巻き込まれるなよ、人形さん!」

 界霊たちに囲まれないように、ロッカは艦を右へ左へと操縦する。
その度に右へ左へと揺れる甲板で、落ちないように気をつけながら千悠紀が指示を飛ばす。

 ロッカが連れてきた5名のハンディフォートレスたちもブルバレットを使った上で、三連ロケットランチャーやレーザーキャノン、導爆索を使って艦の敵の攻撃から守っていた。
傍ではクロエが思考通信でロッカから受信した敵の位置情報と広角視野での情報を元に、弾道予測の結果を伝えたりしていた。
本来であれば、迎撃も行いたいとこだったのだがアクティベートスキルを忘れてしまったために、武装の召喚を行うことが出来なかった。

「ロッカ、弾道予測が出た。艦の運行に使ってくれ」

 それでもクロエは慌てることなく、現状で自分が出来ることをして仲間達を支えたのだった。


 フー・ファイターに乗ったローゼは艦を守るために、その機動力を生かして遊撃部隊のように動いていた。
エセル モドキから送られてきたデータを参照しつつ、艦長のロッカと対空担当の千悠紀と連絡を取り合う。
折り畳み式ブレードやトンファーブレードを使って切り払ったり、時にはIF用シールドで攻撃を受け流したりもした。

「チャージ開始確認、そちらの防衛へ向かいます」

 最優先事項を3人のグラヴィティキャノンの二射目としていたローゼは、チャージ開始の知らせを受け、3人を守りに向かった。


「さっさとチャージしなさいよ! いつまでも抑えてられないんだから!」

「まったく、忙しすぎて楽しくなってくるじゃないか……!」

 弾幕を形成し支援する燈子から辛辣な台詞が聞こえてきたが、それは彼女の性格的なものを目まぐるしい戦況にあった。
そんな燈子の近くで千悠紀は自動擲弾銃を放ちながら、忙しささえも楽しんでいるようだった。


「一姫さん! チャージできたよ! いつでもどーぞ!」

 カティアがチャージの完了を一姫に告げる。一姫が逆隣にいるギンを見やれば、ギンも頷いて合図を送ってきた。

「クラリモンドさん、避難指示を! 戦艦砲、集中砲火で待機!」

「各自座標確認! 今すぐ射線上から退避!
あわてん坊のサンタクロースから、一足先のプレゼントだ! 良い子の皆は受け取っちゃダメだよ♪」

 チャージが完了していっていることを受けて、ロッカが戦艦砲の準備と退避指示を指示を出す。
クラリモンドの通信を受け、ネームレスだけではなく、射線上、そして界霊戦艦へ攻撃を仕掛けていた機体が退避する。

「退避完了だよ!」

「リミッター解除……出し惜しみはしない――」

 ロッカから退避完了の連絡を受けた一姫は、バーストアームズを起動し、更にサブブレイン2.0のリミット解除を行い、出力と演算を最大限迄上昇させる。

「――座標固定…撃ち貫け、グラヴィティ…オーバーブースト」
「いっけーー!!」
「全力で溜めてwwwww全力で狙ってwwwwww全力で撃wwwつwwwぜーwwwwwwww」

「全砲斉射……っ!!」

 再び、三本のグラヴィティキャノンが発射され、後を追ってロッカが指示した戦艦砲が発射された。

「カティア、いい砲撃だ」

 カティアの放ったグラヴィティキャノンが界霊戦艦に命中するのを見届けて、勇葵はそう通信で行った。
褒められたいからではなかったが、役に立てることを勇葵に認められたような気持ちになって、カティアは今すぐに叫びたいほどだった。





 しばしの沈黙――戦いは終わっていないというのに、まるで時間が止まったかのような錯覚を覚える。
最初は錯覚だと思った。だが、瞬きを繰り返すうちにそれは錯覚でも幻でもなく、現実で真実なのだと思い知らされた。

 船に寄生した巨大な虫のような……まるで界霊戦艦自体が大きく口を開けたような……それはまさしく『異質な姿』と称するに相応しい姿となった。


 界霊戦艦の姿が変わったことを皮切りに、特異者たちが内部へと乗り込もうと動き始める。
 
 界霊戦艦の姿が変わるまで戦った特異者たちは疲労していたにも関わらず、残った崩界霊獣の殲滅にあたった。
 無事に界霊戦艦との前半戦を終えられたことで、帰投後ハイタッチをする始とアーヴァリア、舞彩の姿も見受けられた。
 
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