【特異者vs特異者】
1人の特異者が暴れている。いや、暴れているのは結果であって、本人はその気がないのだろう。
「んっ……」
ソフィア・ルーセントが博識そうな特異者を触手で捕まえては何かを聞いている。しかし、界霊に操られてしまったため、相手を捕まえる時に使っている職種は、大怪我を与えるような勢いを持っていた。
「くっ……ソフィアがこうも簡単に操られてしまうとは……知識欲を逆手に取られたか」
どうにかソフィアを止めようと
へクセ・ジクムントが、ソフィアに攻撃を繰り返すも、触手を「ブレード」によって硬化されているため、怪我さえ与えられない。気絶させることができれば、どうにか止めることが出来るのだろう。
「どうした?」
その場に現れたのは
北条 縁だった。彼も操られた特異者を相手にして、避難をしている新米特異者の安全を確保していた。
「北条さん、あの人が原因のようですよ?」
縁の近くにいた
ノースフェイト・パニッシャーが、ソフィアを見て言う。
そして、ヘクセがソフィアを相手にしているのことに縁も気付く。
「私1人では止められなくてな。パートナーさえ守れないとは、何たる不覚……」
どうにか1人でヘクセはソフィアの救出を試みていた。しかし、何度攻撃を仕掛けても硬化した触手に阻まれてしまう。
「何かを目的に動いているようだな。しかし……結果的には特異者を危険にさらしているようだ」
「私の見解だが……ソフィアは知識欲が高い。そこにつけ入れられ界霊に操られているのだろう」
縁の言葉に、ヘクセがソフィアが何故界霊に操られたかを説明をする。しかし、ヘクセがいうのも確信ではない。精神力が弱い者、この混乱にて動揺している者、そういう者が界霊に操られてしまっているのが多い。ソフィアはある程度の経験を積んだ特異者だ。そう簡単には操られないはずだが――。
「それに、攻撃が当たっても『再生』を使われてな」
ソフィアを止めるのは、容易ではないことをヘクセは言う。
「北条さん……あの人を止めましょう」
ノースフェイトが縁に提案する。しかし、縁の心はすでに決まっていた。
「当たり前だ。あのまま放ってはおけない」
そういうと、縁もソフィアに向かって構える。
「すまない、助かる」
狼の姿をしているヘクセが頭を下げる。それに縁とノースフェイトは首を横に振る。困っている人間を助けるのは、当然だと言う様に。
「北条さん、試したいことがあるので……ちょっと待ってください」
ノースフェイトは意識を集中する。しかし、特に何かが起こる気配はない。
「あちゃー……やっぱりダメなようですね。このまま、戦いましょう」
縁に自分の力を付与させることが出来れば、ソフィア相手でも何とかなるかもしれない。と、ノースフェイトは考えたが、それは出来ない。
「気にするな。さあ、始めようか」
縁はゆっくりとソフィアに向かってゆっくりと歩いていく。
「Game……」
そして、顔の前で腕を十字に交差させる。
「Start……!」
その一言で一気に距離を詰める。それに続いて、ヘクセとノースフェイトも同時に走り出す。
「んっ……何?」
ソフィアはその気配に気付く。3人を確認した後、触手にて掴んでいた特異者を凄い勢いで吹き飛ばす。そして、自分を守るために触手を硬化させる。
ヘクセの強襲からの、ノースフェイトの「ファストショット」。そこに縁の「二挺撃ち」の攻撃。連続攻撃で硬化した触手を吹き飛ばそうとしたが――。
「んっ……想定内」
ソフィアには効果がないようだった。
「チッ……埒があかん……」
何度か3人の連携攻撃を行ったが、硬化された触手をどうにかすることは出来なかった。
「操られると自身のリミットが外れて、いつもより能力が強力になるのか……」
ヘクセは冷静に状況を把握しようとしていた。いつもの「ブレード」による強化であれば、ここまでの攻撃には耐えられないはずだった。しかし、3人の同時攻撃を受けてもびくともしない。
「はぁ……はぁ……北条さん、どうしましょう」
ノースフェイトは数度に置ける攻撃にて、息を切らしていた。
「あれ以上の攻撃となると……厳しいものがあるな」
現状の戦力を考えてヘクセは言う。しかし、縁は何か考えがあるのか武器をソフィアに向けたままでいた。
「俺が『リミットカット』を使った『光の型』を使う。2人も全力で……彼女を殺すつもりでかかれ」
それほど本気でなければ、あの硬化された触手を突破することは不可能だ。
縁は力を溜め始める。縁を援護するため、ヘクセとノースフェイトはソフィアへ突っ込む。
「すまんな、ソフィア!」
ヘクセは「五行の構え」からの「抜き付け」を行う。そこに、「リミットカット」を行い、「サテライトパニッシャー」でノースフェイトがソフィアへ撃ち込む。
「んっ……」
流石のソフィアも、本気の2人の攻撃に怯む。そして――。
「斬り崩す魔剣……カラドボルグ!」
縁の叫びと共に「リミットカット」を行った、「光の型」を放つ。
「きゃあ……!」
その一撃に、ソフィアの触手は吹き飛び、ソフィア自体も数メートル吹き飛んだ。
ソフィアは気絶したのか、そのまま動かなかった。
「どうにか止められたようだな」
縁はやっと止められた、と武器を下ろす。
「ソフィア! ……大丈夫のようだ。ある程度の傷は負っているが、気絶しているだけだな」
ヘクセはソフィアに駆け寄りソフィアの具合を見る。
「ふぅ……とりあえず、これで安心ですね」
ノースフェイトは一息つく。
「私はソフィアを見ている。君たち、感謝する」
ヘクセは縁とノースフェイトに礼を言って頭を下げる。
「気にするな。ノースフェイト・パニッシャー、俺たちは俺たちの仕事へ戻るぞ」
「はい、北条さん!」
そういうと、2人は再び操られた特異者と止めるべく違う場所へと赴き、その混乱を止めるのだった。