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ワールドホライゾン

ネコの死んだ日

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ネコの死んだ日
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浄化開始


「負傷者はこちら、特にダメージがひどいかたはこちらへ。最優先で治療をします」
 岬から少し離れたところでは白森 涼姫が特異者たち匿いながら、治療を施していた。
 涼姫の手伝いとしてエルフの魔法使い薬草売りもせわしなく動いている。
「そっちは任せるからね。頑張って」
 涼姫の言葉にエルフの魔法使いと薬草売りが笑顔で返して、救護を進めていく。
「……救護者の数が多くなってきた。終わりが近いといいのだけれど」
「涼姫~!」
「こら、あっちいけー!」
 涼姫の護衛に当たっていたティムキン・サリバンエメルダ・カーターが分体を蹴散らしつつ、涼姫へと駆け寄る。
「どうしたの? まだ分体がいるのだから、周りの警戒をしてくれないと」
「さっきまではそうだったんだけどさ」
「急にしおらしくなっちゃって、全然攻撃してこなくなったのー!」
 エメルダの言葉が終わった時、戦場の方でヴォーパルが光り輝く。
 それをみた涼姫が呟く。
「浄化開始、と言ったところね。すぐに浄化できるわけじゃないのか」
「……分体たちがどこかへいくよ」
「あのおっきな雲霧っぽいところに集まってるよー」
 エメルダの言うとおり、分体たちは本体へと集まっていく。
「……なるほど。最後の戦闘が始まるってことね」
「それで、僕たちはどうすればいいの?」
「分体がいなくなっちゃったからやることがないようー」
 次の仕事をくれと言わんばかりのティムキンとエメルダ。
「そうね。それじゃ私の手伝いをして。少し数が多くなってきて手が追いつかなくなってきたから」
「了解!」
「あいあいさー!」
 涼姫の問いかけに元気に応えて、救護スペースへと走っていく二人。
「私に出来る事は最後までやりましょう。……どうか、界霊を浄化してください。このホライゾンに生きる全ての人たちのためにも」
 そう言って涼姫は界霊本体を見る。すると次の瞬間、涼姫は驚きの光景を目の当たりにする。
 ―――界霊が一気に特異者たちを飲み込む、そんな光景を。

「ねえねえおっぱい仮面さん。界霊ってさ、浄化されたらどうなるの?」
 ヴォーパルをおっぱい仮面と呼ぶのは南風見 眩武
「消えてなくなる、それだけです」
「ほんとうに~?」
「そのために私はここにいます」
 そういうヴォーパルをじーっと見続けていた眩武。
「……まっいっか。ここまで来て加勢しないのもなんだし」
 そう言って加勢を決めた眩武だったが、次の瞬間驚きの光景を見ることになる。

―――――――ッッ!!

 界霊が鳴き声?のような音を響かせると同時に、突如として広範囲にその身を伸ばし、ヴォーパルとその護衛をしていた特異者たちを囲いこむ。
 360度全てが界霊一色に染まる異様な光景。
「わぉ、こんなのありか……?」
「一番避けたかった事態だな」
 後ろから現れたジェノ・サリスが眩武へ話しかける。
「これまで特異者たちはこの大きな界霊に囲まれないように戦い続けていた」
「でもまさか、こんな一瞬で広範囲を囲めるとは想定外」
 フィーリアス・ロードアルゼリアも話に加わる。
「ってことは大ピンチってところ?」
「いいや、界霊としても捨て身だろう。何せ護衛をしている俺たちと、攻撃に専念していた特異者たちに挟まれて攻撃されるのだから」
 つまり、界霊も切羽詰っているということだ。
 界霊がヴォーパルを倒すのが先か、ヴォーパルが界霊を浄化するのが先か。
「……ヴォーパル、今後ワールドホライゾンでこのようなこと起き、君を守ることがあれば多くの者が志願するはずだ」
 ヴォーパルは何も言わない。
「それを指揮するものがいれば、戦果に違いもでよう。それを考慮して俺に『ヴォーパルの騎士』と名乗る許可が欲しい。そうすれば指揮をとる正当性が生ずる」
 今後を見据え、説明をするジェノ。
 しかし、ヴォーパルは浄化に集中しているために聞こえてはいない様子。
「……大した集中力だ」
「言ってる場合じゃないね。界霊さんも必死のようだ!」
「ああ。そのようだ」
 界霊の攻撃が四方八方から飛来する。
「お盆の季節に界“霊”がいるなら、供養しないとな!」
 迫り来る攻撃にも動じず【ミサイルランチャー】を打ち出していく眩武。
 ミサイルが界霊の攻撃を相殺していく。
「ほーらもう一丁! たーまやー!」
 花火鑑賞気分の眩武の横ではジェノたちもうまく立ち回っていた。
「愛と勇気と邪神の名の下に! ヴォーパルは絶対守ります!」
 高らかに決め台詞をばすんと決めたのはリーゼ・アイン
「ヴォーパル、守る、これ大事。そしたら、ますたーのはーれ……げふんげふん」
 アウトラインギリギリで咳き込むのはセシリア・ボルフィニクス
「敵はどこからでも攻撃してくるわ! こうなったら当初の戦法はリセット、四方に散って護衛するのよ!」
「そうだな。これでは霧を集めるのも難しいだろう。各自臨機応変に、相手の攻撃を読んだ上で的確に迎撃するんだ」
「悪は必ず滅ぶのよ? それが魔法少女ものの掟!」
「頑張れば、ヴォーパルの信頼だけじゃなく、私もますたーとこづ……げふんげふん! ……信頼、大事」
「……あの二人は本当にわかっているのだろうか」
「ため息なんてしてる暇はないわよ。逃げ回るわけにもいかないんだから」
 個性溢れる四人だが、こと戦闘になればおふざけは一切ない。……いや、戦闘でないときもふざけているわけではないのだが。
「ふっふっふ、これで恩を売っておいて新しいヴォーパルグッズ開発の許可を……」
「ヴぉーぱる、はーれむ、大事……」
 ……わけではないのだ。
「ちょっと二人とも! 弾幕薄いわ! 分散してると言っても火力を集中させなさい!」
 いいながら【ガトリングガン】を乱射して、界霊が近づくことを許さないフィーリアス。
 それに習うようにセシリアも【ガドリングガン】で濃密度の弾幕を張り、リーザも『生体ミサイル』や愛銃を駆使して敵を退けていく。
 まさに弾丸のバーゲンセール。果たして店じまいするのは彼女かたち、界霊か。
「……多分、他の特異者たちもこれくらい自由だから、統率とかできないと思うな」
「そうかも、しれないな」
 援護の合間に寄ってきた眩武の意見に、ため息をしながら肯定するジェノ。
「ならばこの場を凌ぎきろう。それが最善の策だ」
 【サテライトパニッシャー】を構える。
「その壁、ぶち破らせてもらう!」
 パニッシャーを放つ瞬間に【リミットカット】を使い出力を上げ、界霊目掛けて放つ。
 極力無比な一撃は界霊を突き破り、ワールドホライゾンの空へと伸び、あたかも光の柱のように見えた。
「これでどうだ?」
 完膚なきまでの一撃。しかし、すぐに修復されてしまし、またも外の特異者たちと遮断されてしまう。
「まったく……厄介な相手だ」
 この状況を嘆きながらもジェノたちは攻撃の手を緩めない。
 それを応援するかのように、ラクスの唄姫が(どことなくアニソン風味な)愛の唄を皆に捧げる。
 しかし、界霊の猛攻も止まらない。次から次へと攻撃をしてきて、その攻勢を緩めない。
「まさか、前線に出る前に囲われてしまうなんて」
 ヴォーパルの護衛についていたヴェルデ・モンタグナ
 護衛者の人数が多かったため前に出ようとしたが、行動する前に自らも界霊に囲われてしまった。
「でも、よかった。この状況なら援護する人は多い方がいいですから」
 集中したまま動かないヴォーパルに『パリエス』をかけるヴェルデ。
 更に『みやぶる』を使いあらゆる場所から攻撃してくる界霊の先制打を見抜いていく。
「風で押し返します。先制などさせません」
 胸元にある【翠玉のお守り】が揺れ、迫り来る界霊を風で押し返し払いのけていく。
「雲か霧かは知りませんが、私の風の前に散ってくれるとありがたいのですが」
 ヴェルデの風が界霊を翻弄していく。
 しかし、一人では制しきれない。次第に界霊の攻撃がヴォーパルへと近づいていく。
「……往生際が悪いですね」
 ヴェルデの胸元にあるお守りが更に揺れ、風の強さも最大限まで増すが、それでも抑え切れない。
 そして、界霊の攻撃がヴェルデの風をするりと抜けヴォーパルへ向かう。
 界霊の攻撃がヴォーパルを襲うその刹那、大きな盾がヴォーパルの前に出現。
 界霊の攻撃を受け切り、攻撃してきた界霊が散る。
「……ちゃちい攻撃、です」
 右手に【コルリス王国軍の盾】、左手にも【コルリス王国軍の盾】を持った少女、弩 重霧がヴォーパルの前に陣取っていた。
「……ヴォーパルを、守ります。守りきり、ます」
 二つの盾を構える変則的なスタイル。守る、という意識が具現化されかのようにも思える。
「……サギリも、サギリの。……為すべき事をするのです」
 他の特異者たちが捌き切れなかった界霊からの攻撃は、全て重霧が受けきる。
 『アームディフェンス』で防御をより強固に、どんな攻撃でも一歩も退かずに盾を構える。
 ヴォーパルの直前まで行くも、攻撃できない界霊。
 重霧はヴォーパルの盾となりあらゆる攻撃を受け止めて弾き返していた。
「……この身にかえても、誰かを守る盾となる、です」
 己の信念を盾に宿らせ、時には盾を武器に変えて界霊からの攻撃を寄せ付けない重霧。
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