新米特異者が避難をしているシェルター。そこには2人の特異者が暴走した特異者に対して、立ちはだかっていた。
「さあ、こっちだ……。ここを過ぎれば安全だからな……」
ルナ・セルディアが地球人の姿で最後の避難誘導を行っている。
「……」
「ルナさん、来たようですよ」
エンジュ・レーヴェンハイムがルナに言う。そこには
藤村 千悠紀の姿と操られた特異者たちが来ていた。
「はぁ……何で私達が……操られた奴らの世話を見ないとならんのだ……」
ルナは地球人の姿からアバターチェンジを行う。
「まあまあ、こういう最後の砦って感じがあってもいいじゃないですか」
同じく地球人の姿をしていたエンジュもアバターチェンジを行った。
千悠紀と操られた新米特異者の群集が徐々にこちらへ向かってくる。
「操り人形風情が……ここまで来れたのか……それに1人強者がいるか……」
ルナは「凍てつく元素」を撒き散らかし、シェルターにもたれかかり、腕を組んでいる。
「こういうことをする人たちには、すこーしばかり、痛い目にあってもらいましょうね」
エンジュも「凍てつく元素」で周囲を威圧する。
「これは警告ではない……命令だ……。即刻、ここから消え失せるか……正気に戻るか……どちらかを選択しろ……。背くものは……私自らが相応の罰を用意してやろう……。有難く思え……」
ルナはそういうと、殺気を交えつつ黒笑を浮かべる。しかし、千悠紀は言うことを聞かず、こちらへ突っ込んでくる。そこに
クトーニアンが特異者たちを中央に集めさせるよう、ミサイルを撃ち込んだ。2人の威圧とミサイルによって怯み、元に戻る特異者たちもいるが、それでも進み続ける千悠紀や特異者がいた。
すると、意識を千悠紀は取り戻したのか、突然叫び始める。
「本来なら倒してもらってジャックを解いてもらうのを望むんだろうが……今のあたいはテメーらをぶち殺したくてうずうずしてるんでねェ!!」
叫びとともに「飛翔」で飛び上がり、「一時的発狂」で邪神の力を引き出す。
それを見たルナは自分のフェローに援護射撃を任せ、こちらへ向かってくる特異者たちへの攻撃を開始した。
「黒い閃」を使い、援護射撃に合わせ特異者たちを中央へ集める。その闇の中に姿を潜めながらエンジュは「デスバイト」を用いて、中央へ行かなかった特異者たちを一掃していく。しかし、千悠紀だけはそうはいかない。千悠紀は上空からの「生体ミサイル」による遠距離攻撃を行ってくる。
ルナとエンジュは、そのミサイルを相殺しつつ、攻撃を千悠紀へ出来るだけ集中する。しかし、ミサイルだけではなく「アザトースの輪舞」で広範囲攻撃も行ってきていた。
「ちっ……あの強者は流石に思う通りには動いてくれないか……」
ルナは千悠紀を見ながら呟く。その様子にエンジュは提案をする。
「僕はこのまま特異者を中心に集めます。ルナさんはあの特異者の動きを封じてください」
そして、エンジュのフェローである
ガードナーはルナの攻撃から漏れた特異者たちの攻撃を防ぐように、エンジュとルナを守る。
「分かった……では、このまま防いでくれ……さあ、これで終わりだ……!」
ルナは周囲の援護はエンジュやフェローに任せ、千悠紀へ向かって一気に距離を詰める。そして、ミサイルと触手を突破すると、千悠紀の下半身を剣で貫く。
「これで動けないだろ……このまま倒れていろ……」
千悠紀はルナの「黄昏の剣」の1撃によって、行動不能になってしまった。
そして、ある程度中央に特異者たちが集まった瞬間、ルナは一気に地面に向けて攻撃を仕掛けると、地面が崩落を始める。しかし、それでも乗り越えてくる特異者がいた。
「邪神アザトホースの力を……なめるなァァァァァ!!!」
千悠紀だけは最後の力を振り絞り這い上がってくる。しかし――。
「ここまで来るとはな……褒美だ……受け取るがいい……」
千悠紀の首を全力で絞めつけ、「エレメントドレイン」で魔力を吸い取っていく。
「ク、クソがァァァァァァァァァァ!!!」
そう断末魔を上げ、千悠紀は力尽きる。
「ルナさん、相変わらずえげつないですね……ルナさんを危険にさらさないようにって思ってましたけど、取り越し苦労だったようですしね……」
ルナの様子を見て、エンジュは苦笑している。
「ん……これが普通ではないのか……?」
本人は全然そのつもりはなかったようだが、シェルターまで近づいてきた特異者たちにとっては最後の砦となった。
「ん……あたいは……」
力尽きた千悠紀だったが、すぐに意識を取り戻す。そのしぶとさに、ルナとエンジュは再び構える。
「よしてくれ、もう争うつもりはないよ。やれやれ……何やらかしたのかは想像がつくが、本心につけこまれたんだろうな。そいつらを疎んじているのは事実だからさ……」
千悠紀は仰向けになりながら、そう呟く。その姿を見て、ルナとエンジュも構えを解く。
「後は界霊のほうへ行った人たちですね……あなたがたの好きにはさせませんよ……界霊。――大人しく、闇は闇へ還りなさい……」
エンジュは界霊を倒しに行った特異者たちの無事を祈った。
そして、シェルターへ避難した新米特異者たちは、無事に界霊の脅威から逃げることができるのだった。