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ネコの死んだ日

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ネコの死んだ日
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【守るために~シェルター~】


 シェルター付近にはまだ多くの特異者たちが避難できずにいた。
「こちらです! さあ、急いで!」
 ルーン・カーディナルが避難誘導を行っていた。その誘導を聞きながら、新米特異者たちはシェルターに続々入っていく。
「皆さん、不安になる気持ちも分かりますが、今は避難する事を第一に考えて下さい。大丈夫です、私たち先輩さんを信じて下さい」
 その言葉から一息あけて優しい笑みを浮かべ、赤い修道服が目を惹く隻眼少女であるクラリモンド・リーパーも避難誘導を行っていた。
(優しげな笑みってどうしてこうキツいんだろうな。純朴なヤツってマジすげぇよ、これが自然に出来るとか本気で尊敬するわ。目元攣りそう、頬超痛ぇ、ストレスでボクの胃がマッハ)
 と、その笑みとは裏腹にクラリモンドは心の中でそう思っていた。
「クラリモンドさん、そっちはどうですか?」
 ルーンがクラリモンドにたずねると、またもや笑顔でクラリモンドは答える。
「こちらは大丈夫です、まだまだ新米の特異者たちが逃げ遅れているので頑張りましょう♪」
 その笑顔に逃げている特異者たちも安堵して、避難を続ける。
(こんな0Gスマイルで安堵するとかどんだけチョロいんだよ、お前ら。こっちとしては仕事が楽になるから良いんだけどよ)
 と、やっぱり裏ではこう思っている。
 ルーンも避難をする特異者たちが焦らないように、声をかけながら誘導をする。
「さあ、こっちです! 急いでもいいですが、シェルターにはちゃんと入れますからね!」
 すると、その時数人の特異者たちが倒れこむ。そして、そこからどよめきが起こる。
(ん? 何か騒がしいな。おいおい勘弁してくれよ、避難の一つも大人しく出来ねーのかよ)
 避難をしている最中に界霊に操られてしまった者がいるようだ。
「こういう状況も想定していましたけど……」
「はしゃいでんじゃねぇよ」
 クラリモンドの言葉にルーンは驚く。
 ルーンも操られてしまった特異者を対応しているが、同じ特異者が相手だということもあり、傷つけずに無力化させることに重点を置きながら攻撃をしていた。
「すみません、今は少しだけ眠ってください」
 気絶させた特異者をルーンは安全を考え自分が責任を持ってシェルターへ連れて行こうとする。
 その時、クラリモンドは――。
「歯ぁ食い縛れ、気付けに良いのやるよ。おすわり」
 そういうと、暴れている特異者の膝を隠し持っていた「アギーレの銃」で打ち抜く。
「蹲ってんじゃねぇよ、避難の邪魔だろうがクソガキ。それとも楽しいか? 地面を見てえずくのはよ。楽しいだろ、楽しいって言えよ、なぁ?」
 不敵な笑いを浮かばせながら、クラリモンドは倒れた特異者の腹を蹴り飛ばす。
「30分したら治療してやれ。完治は無理だろうが、馬鹿には良い薬だ」
 そういって、近くにいた特異者に連れて行くように言う。そして一息つくと――。
「皆さんもおいたは駄目ですよ?」
 と、クラリモンドは再び笑顔に戻る。その豹変ぶりを見て、避難をしている特異者たちはびくびく怯えながら避難を続けるのだった。

 違う場所でも、避難の途中に界霊によって操られてしまった者がいた。その者たちを止めようと、信道 正義アーサー・カールソンが対処をしていた。
「今すぐに暴動を止めろ!お願いだから目を覚ましてくれ……!」
 正義は剣を鞘から抜かず、みね打ちをして気絶させていく。こんな状況じゃなければ、こんな事を正義派したくはないのだが、そんなことは言っていられない。
「さあ、眠れ」
 アーサーは「地球の唄」を使って、暴れている特異者たちを落ち着かせ、避難をしている特異者たちに運んでもらっていた。
「とりあえず……もう、この辺には暴れている特異者はいないようだ」
 正義は近くにいた、アーサーに声をかける。
「こちらも大丈夫だ。しかし、思ったよりも操られてしまっている特異者は多い」
 ある程度は対処しているが、他の場所でもこういうことが起こっていると考えると、すごい数の特異者が操られているのだろう。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、怖いよー、一緒に避難しよー」
 そこに避難誘導を行っているアウローラ・鞠井が現れる。アウローラは新米特異者たちから、先輩には見られないようで、それを受け入れた上で避難誘導を行っているようだった。
「あ、お兄ちゃんたち!」
 その中でまたもや界霊に操られてしまった者たちが出てきたようだ。それを確認すると、正義とアーサーも駆けつける。
「大丈夫か!?」
「まだ、そんなに被害は出てないみたいだけど……」
 正義の言葉にアウローラは答える。しかし、このままでは被害が出てしまう。正義とアーサーは身構える。
「わたしが支援する!」
 アウローラは「加護の唄」を使い、2人の防御力を上げる。
 そして、正義は再びみね打ちをしながら特異者たちを気絶させ、アーサーは落ち着かせていく。それでも対処ができない相手に、アウローラは髪の毛の触手で身体を拘束して動きを止める。
「経験を積んでる特異者はいないようだが……」
 操られた新米特異者を相手にしながら、正義は周りを確認する。
「流石にこれだけ多くの新米特異者が操られているんだ。ここに強い特異者が現れたら危ないな」
 アーサーは状況を確認しながら言う。
「大丈夫だよー、傷はすぐ治るからねー」
 アウローラは暴れた特異者によって怪我をした者の回復に勤めている。
「とりあえず、わたしは他の場所も見回ってみようかなぁ」
 アウローラは怪我をしている特異者の回復が終わると、そういう。確かにこの場所以外でも、同じようなことが起こっている可能性がある。それを見に行き支援してこうようというのだ。
「分かった。確認をしてきてくれ」
「こちらは2人で何とかする」
 正義とアーサーはアウローラの言葉に答える。その言葉を聞くとアウローラはアーライルの飛行能力を使って空に飛んだ。
 先ほどの場所から離れた場所の空から下を確認をすると、多くの新米特異者が避難をしている中で、暴れてしまっている特異者もいる。それを確認すると、アウローラは「スマイル☆シューターのマイク」を使って、声量を増幅させ、子守唄で沈静化させていく。
 すると、強力な特異者と戦っている2人特異者を見つける。
「お兄ちゃんとお姉ちゃん、大丈夫!?」
 アウローラはマイクを使って、下にいる特異者に声をかけた。
「こっちは大丈夫だ。ガキが引っ掻き回してくれてるからな」
 その言葉を聞いて安心をする。そして、一応「加護の唄」を使い支援を行う。
「ありがとー!」
 暴れている特異者に突っ込んで行ってる少女はそう言いながら、また強力な特異者にむかって突貫していく。
 そして、アウローラは再び周りを確認しに移動を始めた。こうして、避難は滞りなく進んでいった。
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