「はい、そこまでだ。とりあえず、事が終わるまでの間眠っててくれ」
操られてしまった特異者を気絶させ、
暁 刹那は一言言う。周りには操られている特異者はいなくなったようだ、と刹那は武器を下ろす。しかし――。
「刹那!」
ニルフィ・ヴァーミリオンの声が聞こえてきたと思ったら、ニルフィに刹那は突き飛ばされる。
「おわっ!おい、いきなり何すんだよニル――ニルフィっ!?」
刹那はニルフィに界霊が襲い掛かっているのを確認する。しかし、一瞬でその界霊は消えてしまう。
「おい! 大丈夫か、ニルフィ!」
その界霊が消えるのを確認すると、刹那はニルフィに駆け寄る。
「くっ…い、や……私の、中に……入って……来ないでっ……あ、ああああぁぁぁぁーーー!」
ニルフィの言葉に刹那は驚くが、急にニルフィは静かになった。
「ニルフィ……?」
急に無言で立ち上がったニルフィを見て、声をかけるが刹那は何か様子が違うような気がしている。その時――。
「……」
心配をしている刹那に向かって、ニルフィは「アクア」を放つ。
「がっ……!」
油断をしていた刹那はまともに食らってしまう。
「ぐっ…がはっ! ニルフィ、何のつも――」
吐血をしながらも、刹那はニルフィの心配をしている。しかし、ニルフィは攻撃をやめる気配はない。
「……風よ、刃となって敵を切り裂け」
すでにニルフィは「ヴェンダ」の詠唱に入っていた。そして、吐血した刹那を光の無い虚ろな目で見ながら放ってくる。それを見て驚きながらもすぐさま刹那は回避をする。
「くっ! おい、やめろ、ニルフィ!」
刹那はニルフィの目が覚めるようにと、叫び続ける。しかし、ニルフィの攻撃は止まらない。
「ぐっ! がっ! がはっ!」
防御にも回避にも限界がくる。徐々に刹那のダメージは大きくなっていった。
(い、嫌……もう、もうやめて! これ以上……これ以上私の体を使って、彼を傷付けないでっ!)
その時、ニルフィの動きが鈍くなる。ニルフィは自分を操っている界霊に抗っていたのだ。
「せ……つな……早く……逃げ、て……下さい……。私の……事は……いい、ですから」
力を振り絞ってニルフィは刹那に向かって、逃げて欲しいと懇願する。その表情は光のない虚ろな目から、涙を流しながらこの状況を拒否するかのような表情へと変わっていた。
「ニルフィ……ああ、分かったよ」
刹那はニルフィの言葉とは逆に、「アシュレイの刀」を抜く。
「待ってろ。絶対にお前を助ける。お前にこれ以上涙なんか流させねえ!」
動きが止まっているニルフィへ、一気に距離を詰めて柄の部分を鳩尾へ当てる。上体がくの字に曲がったところで、「クロスエッジ」で攻撃をする。
「あ……!」
刹那の攻撃にニルフィは倒れる。強力な攻撃を与えたといっても、みね打ちで行ったため、気絶をするだけに止まった。
「今はゆっくり休め……」
刹那はニルフィに一言いうと頭を撫でる。
こうして、操られてしまったパートナーを助けることが出来たのだった。