1.準備万端。
10月31日、ハロウィン。
この日に向けて、
川上 一夫念入りに準備していた。
手作りチョコレートの作成。
菓子袋を作成、ラッピング。
その際、自身の名刺を入れておくことも忘れない。
これが、前夜までで行った、準備だ。
もちろん、すべてに意図はあり、計画通りにいけば一夫にはこのハロウィンの後、新しいビジネスチャンスが訪れる。巡り合える。そういう段取りを整えて、臨んだ。
まずはそのチョコレートを受け取ってもらえないと意味はない。
一夫は、「ユニバーサルクロース」と「変装Ⅱ」と「特殊メイクセット」を用いて、ヴァンパイアの格好に扮した。鏡で見てみるが、ふむ、なかなかどうして、悪くない。
これなら――大人に怪しまれずに済む。
……いや語弊があった。もっと厳密に言うのであれば、他の仮装に比べて「普通」であるため、「普通」に近いこの恰好で仕事をしていても悪目立ちしないと考えたのだ。
入念に考えた計画を実行すべく、一夫は「川上運送社用車2号」に乗り込み、「操縦技術(バイナリア)」と職能「ドライバー」を使って運転し、まずは通常の配送業務をこなしていく。
その最中の街中にて、ハロウィンの仮装をしてお菓子を貰って回っている子供がいないかをチェック。
……いた。
見つけ次第、接近。
自分の方に近づいてくる謎のヴァンパイアに対し、若干、怪訝そうに首を傾げる子供を相手に、「トークセンスⅡ」を用いて言葉巧みに接近すると、子供は喜んで、一夫の手作りチョコレート菓子を受け取ってくれた。
あの中には。
冒頭で述べた通り、一夫の「名刺」が同封されている。
だが、一夫はビジネスチャンスのためだけにこのイベントを利用したわけではない。
中に入っている菓子を作る際には、「料理上手」と「チョコレート制作キット」を駆使し、美味しくなるように願いを込めて、全力で作ったのだ。大人へ名刺を運んでくれる子供たちへ、心ばかりの感謝の気持ちを織り交ぜて。
……それに、「あのお菓子美味しかった! どこの!? かわかみうんそう! ママ連れて行って!」……なんてことにも、なるかもしれないし。
ほくそ笑んで、一夫は再び、川上運送社用車2号に乗り込んだ。
まだ朝早い時間だ。今日はこれからだと言える。
いくつお菓子を配れるか。そこに今日の全てがかかっている。
一夫はエンジンをかけると、他にお菓子を貰って回る子供がいないのか探して、街を車で練り歩くのだった――。