~プロローグ~
薄い雪に覆われた山脈の頂から、この小さな世界を見下ろす男が一人――――
「ウォリアーめ、ついに私を本気で喰らいに来たか」
男の背後にスッと影が現れ、それは徐々に若い女の姿に変わっていく。
「エルダー様、風邪をひかれますよ」
「誰かが、ユヴェーレニアに来た」
「!?」
エルダーの言葉に目を丸くする、赤ん坊の人形を手に持った女。それはエルダーの横まで進み出て言った。
「まさか…… ウォリアーが!?」
「恐らく。ドワーフが見付けた鉄の扉を開いたらしい。誰がどうやって開けたのかは知らないが……」
エルダーは短いマントを翻し、頂を後にする。それについて行く女は、おそらくエルダー一味の幹部であろう。ウォリアーの企みに気付き、少し不安そうな顔をする。
「案ずるな、私がいるのだ」
「勿論です。エルダー様がいれば恐れる事はありません。しかし……」
ピタリ、と歩を止めるエルダー。
「……何を不安がっている」
「いえ、不安というわけでは…… ただ、エルダー様に反抗して来る者どもが少し哀れに感じまして」
表情の無い顔、そして冷たい眼差しでエルダーは少し考える。
「立ち向かう決断をしたならば、我々にどんな目に遭わされようとその者達の責任だ。私が盗賊になったのが私の責任であるようにな」
「仰る通りです。ただ、敵を不憫に思っただけです」
ウォリアーの企みが勝つか、エルダーの力が勝つか……その全ては特異者達に委ねられている。
【目次】
~プロローグ~
ユヴェーレニア観光
魔封じの宝石
大宴会
ドワーフの仕事
鉱山での戦闘
洞窟内での攻防
エルダーという男
模擬戦開始!!
ドラゴンの力、我々の力
本当の目的
ルシア