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終焉解放オーバーチュア【一曲目/全三曲】

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終焉解放オーバーチュア【一曲目/全三曲】
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「……やれやれ、今回は随分と色気のない世界に招待されたな」
 扉から再び見知らぬ世界へと降り立ったのはロデス・ロ-デスであった。
 見渡す限りの世界は鈍色で構成されており、自然物は殆ど見かけない。触れた鉢植えの葉も手触りは悪く、直ぐに模造品であることに気がついた。
 どうしたものかと周囲を探ってみれば、そこで見つけたのは見覚えのある顔だ。
「オーフェデリアか」
 久方ぶりに出会った彼女に祝福のハグをしたいところではあったが、緊迫した様子から今ではないなと思いとどまる。それに率先して人命救助を行えば、きっと好感度も上がるだろうと打算的な考えがよぎった。
「再会は感動的な方がいいだろう」
 と、ロデスはオーフェデリアに会わぬままサンドキャリッジのような四輪駆動車型の支援機体を借りて探索活動へ向かうことにした。

 F05-2898やオーフェデリアの元から離れたロデスは、目視による破損機体を探し始める。墜落した機体が原形を留めているのであれば中に人が居る可能性も高く、残骸と化したものであれば近くに転がり込んだ可能性があるためだ。遠くより響く戦闘の音を聞きながらも、オーラにより探るのは生存者の存在。気配を掴み、大まかな方向を特定してから情報を零さぬように耳による感覚で少しずつ近づいていく。
 ふいに岩が転がり落ちるような音が届いた。ガラガラと転がり落ちる音は近づいたり遠のいたりしている。おそらく瓦礫で作られた層により、あっちこっちと落ちていったのだろう。音が伝わるということは空洞があるということ。岩が転がったのは風のせいか、押し潰しによって瓦礫が動いたか、あるいは――。
 ロデスが音の方角を頼りに支援機体を走らせれば、そこにあったのは瓦礫に半身が埋まってしまった機体であった。コックピットのハッチは歪んではいるものの、既に半分程度開いている。覗き込むようにしてこじ開けてみれば、そこに居たのは機械生命体だ。呻き声にノイズが混じっている。見た目の損傷はそれほど酷いわけではないが、落ちた時に身体の内部がやられ声帯に異常が出たのかもしれない。
「立てるか」
 声を掛けてから名乗り、救助したいと申し出れば指先が僅かに上がる。ロデスはそれを了承と捉え、担ぐようにして支援機体まで運んだ。
 症状からするに一度戻った方が良いだろう。まともに動けないほど痛めつけられているのであれば、早めの処置が肝となる。助手席に機械生命体を乗せ、そこで気がついた。かの者は未だに震える指先を向けている。辿れば、そこにあったのは大空――そして天鳥機体だ。
「偵察か!!」
 単騎でいるところを見るに隠れた者が居ないかの確認だろう。空を飛ぶ機体には攻撃は届かず、そして支援機体は装甲が薄い。事前に聞いていた天鳥機体の特徴を頭の中で反芻しながら支援機体の装備を確認する。ほとんどはキャリッジから剥いできた、後はタイミングを見遣ればいい。
「ちょっとばかし我慢してくれ」
 隣に横たわる機械生命体が安全ベルトを着用しているのを確認し、天鳥機体へと視線を移した。銃口はこちらを向いている。魔力の流れやうねりも確認できた。それらが火花のような輝きを携える。同時にロデスはアクセルを全開にし、機動の速度装置を合わせた。
 着弾よりも早く支援機体が急加速する。ハンドル越しに負荷が伝わり、目の前の揺れがより大きくなり、身体が酷く揺さぶられる。背後から橙色の明かりが追随したが、それもすぐに遠いものとなった。
「……あー、フレームが歪んだか」
 速度を落としながらもロデスは支援機体の後方をチラとみた。負荷と攻撃のせいで車体が僅かにひしゃげてしまったが、直ぐに修理ができそうな程度で済んでくれたのは僥倖だろう。
「怪我人も生きて……るな、よし。一回避難所に戻る。口が利けるようになったら、あのあたりで通信の途絶えた機体について教えてくれ」
 それが他の解放軍の助けとなるだろう。
 煙草を咥えながらロデスが機械生命体に語りかければ、機械生命体は急発進によって混乱しながらも、震える手で親指を立ててくれた。


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