クリエイティブRPG

終焉解放オーバーチュア【一曲目/全三曲】

リアクション公開中!

 137

終焉解放オーバーチュア【一曲目/全三曲】
リアクション
First Prev  10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20  Next Last


「状況は逼迫しているようですね……」
 人見 三美は王国軍と解放軍の様子を眺め、分かりやすく眉を下げた。
 特異者が動いているとはいえ、現状はどう見積もっても劣勢なのだ。
「んー、状況はよく分からないけれど……今大変そうな方を助ければいいんだよね?」
 望月 いのりは首を傾げ、現状を鑑みる。
 F05-2898が言っていた扉に関しての逸話からするに、危機的状況というのは解放軍のことなのだろう。それらに加担すればひとまずは解決へと至る。終着点がどうなるかまでは見越せないが、それはきっとこの地に新たなる道を指し示してくれるのではないだろうか。
「新たなる地、新たなる力。こうして私たちが訪れたからには意味があるのでしょう。扉の事を教えてくださった方のお話の通りであれば、私たちが味方すべきは決まっています」
 全てを信じ切るのには些か勇気はいるが、F05-2898が嘘をついているとも思えない。そこも含め、此処で戦いながら少しずつこの世界の事を学んでいくべきなのだろうと伏見 珠樹は付け加えた。
「ええ、師匠の仰る通りです。皆様と協力しながら解放軍の力となり、この地に訪れた意味を見いだしましょう」
「道中、きっと私たちにも行くべき道が見えてくるはずです。見逃さないようにまいりましょう」
 三美と珠樹が頷いている最中、いのりだけは「……折角だし暴れていこうかな?」と些か不穏なことを呟いていた。

 手始めに動いたのは三美であった。空を飛ぶ経験を活かし、風の流れを読み取りながら天鳥機体で眼下の様子をじっと窺う。少し遠くの空には敵の天鳥機体。その下にいるのは同じく真っ黒な機体達である。侵攻に迷いはなく、解放軍を探しているように動いていた。
「こうして見てみると、天鳥機体だけ目立ちますね。……それなら、そこを利用してしまいましょう」
 三美は天鳥機体を操り、わざと目立つようにその姿を見せつける。
 より囮らしく振る舞うべく、箒モチーフの兵器を打ち鳴らしてみればいくつかの機体が軌道を変えた。それを確認し、三美も旋回。追いかけて貰えるように速度を調整しながら敵機体の群れを少しずつ誘導していく。こうして囮となったのは追われる解放軍の者らを減らすためである。きっと解放軍は戦いにより疲弊しているはずだ。少しでも息を整えてほしいと三美は通信を起動する。
「いのり様、準備はよろしいでしょうか」
「まかせて!! ええっと、敵の編成は……」
 いのりは三美と共に戻ってくる機体をじっと眺めた。編成はこちらと同じようなものであり、重鎧機体の武器は剣。地獣機体よりは動きは緩いものの、旋回時の小回りの差でそうなっているであろうことを見抜いた。
「うん、こっちに誘導しちゃおう。レーダーにも味方は映ってなさそうだしね。みみっち、よろしくぅ!!」
「分かりました、そちらに向かいます!!」
 いのりの提案通り、三美は誘導するため操縦桿を傾ける。ただ逃げているとは思わせぬように、地獣機体の餌食にならぬように。雷の力を扱い瓦礫の山へと入った。そこを叩くのが待ち構えていたいのりである。
「暴れちゃうぞー!!」
 遮蔽物が多ければ相手の動き方は読みやすい。それが地を歩む者なら尚更のこと。距離を詰めながら重い一撃とともに敵の地獣機体へと切り込んだ。小回りのせいで回避されることもあったが、喰らわせることができれば攻撃は通る。上手いこと相手の動きを調整し、回避を潰すようにインファントキラーを翻す。
「いのり様、牽制射撃を行いますのでお気を付けて」
「みみっち任せた。たまちゃん、空のやつなんとかなる?」
「ええ、お任せください。……スピーカーの調整は問題ありませんね」
 珠樹は地獣機体を操作し、サポートへと回る。ギターを引っさげて行うのはかつて培った支援経験である。演奏と共に生み出したのは炎と風の合わせ技だ。風は炎を乗せ、上空へと押しやり天鳥機体の翼を焦がす。
 出来うる限り、相性を考えて。
 それぞれが得意とする相手を狙った方が良いのだと、味方の立ち位置を気にかけながらも動いていく。
 重鎧機体が動けば翻弄するように三美が滑り込み、地獣機体にはいのりの斬撃、空への牽制は珠樹。出来る限り派手に動き回り、相手の目的を解放軍の殲滅から、こちらの相手へと切り替えていく。
 その傍ら、逃げ延びようとする解放軍の機械生命体に対しては歌声での応援を忘れず、逃げる方向についての通信も飛ばしていった。さきほど支援機体らしき四輪駆動車が駆け抜けていくのが見えたためだ。

「しかし、此方の機体は長所と短所……どちらもあるのですね」
 三美は牽制の傍ら、ふと思う。
 どれもこれも一癖はあるものの、その本質は互いを支え合うドラグナーやトルバドール、ジオマンサーによく似ているものであった。
「ええ、囲まれないように弱みを補い、強みを活かして乗り切りましょう。三美、いのり、周囲の警戒は怠らずに……援軍が来ます」
 相手取っているとはいえ、敵機体の数は未だ多い。
 ここを乗り越え、生き残った者とこれからどうすべきかを決め、共に戦わなければならないのだ。
「数が多いとはいえ、私たちは怯みません」
「うんうん、いっぱい暴れちゃうよ~!!」
 三美といのりは操縦桿を強く握りしめた。
 諦めぬことにより状況は好転する。そう信じ、再び歌を紡ぎ始めた珠樹の声を背に、頽れた敵機を乗り越え、増援相手にその武器を振るった。


First Prev  10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20  Next Last