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終焉解放オーバーチュア【一曲目/全三曲】

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終焉解放オーバーチュア【一曲目/全三曲】
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「おぉ……おぉ……!!」
 松永 焔子はプラネットⅢに降り立ち、いたく感激した様子で己の身体を抱いた。
 それもその筈、以前降り立ったあのアレクシア・ソフォクレスでは二度も鮫の呪い(?)を受け、着ぐるみが纏わり付いて離れなかったのだ。
 しかし、今は違う。肌を撫ぜる風は確かに存在し、どれだけ歩いてもピコピコ音は付いて回らなかったのだから。
「開幕からとても嬉しいのですが、来た理由は納得がいかないというか……サメ映画を視聴していたら急に飛ばされるとか、どうなっているのですか本当に……まぁ、そこだけは目を瞑り……というか段々扉に吸い込まれる手口が巧妙かつ雑になってきてますわ。あのクソゲート……野郎、今回こそはぶっ壊してやりますわぁ!!」
 いつも危機を救ってから「いざぶっ壊す!!」と息巻いて扉を壊しに向かうものの、何故か扉は無傷の上、元居た場所に放られるのだ。清々しいほどに煽られている。
 今回こそは!! と、些か違う事情といつもの発作と共に、焔子は解放軍に手を貸すため、まずは手足となる機体を探すことにした。

「……いえ、私も確かに手足となってくれる良い機体ならば良いですわね。と、思っておりましたわ。ええ、思っておりましたとも。愛機であるデュランダルⅢに似た性能の機体ですからね、とても素晴らしく幸いなことです。違和感なく動かせるのですから……」
 焔子の言う通り、彼女は愛機とよく似た機体を借り受けることに成功した。
 借りた機体は見てくれや大きさもデュランダルⅢと良く似ている。操作感やコックピット内部から見える景色の高さもほぼ同じであった。また、よく手に馴染んでもくれたので戦闘に対しての憂いは一切なかった。きっといつも通りの活躍ができるだろうと、そこまでは良かった。
「どうして、どうしてサメのペイントがされているのかしら!? 無塗装は!? 無塗装はございませんの!! えっ、ございませんの!? 来月別の塗装をする予定……? がーんですわ!?」
 やはりサメからは逃れられないのだろうか。焔子はしくしくと泣きながらも気持ちを切り替えた。
「ええ、ええ……嘆いていても仕方がありませんからね……。まずは索敵して敵味方の位置を把握し、解放軍の手助けとなれるように動いてまいりましょう。ぐすん」

 戦場に点在する殺気と、搭載されていた簡易のレーダーを頼りに、焔子はフレキシブル・バーニアで最前線へと滑り込んだ。
 携えるのは残像剣。バーニアで得た速度を乗せ、振るわれた剣は名の通りに相手を惑わし、機体操作で攪乱を試みる。
 人が身体を捻るように、咄嗟に屈むように。直線的な回避に重きをおいた動きは狙い通り敵機体を惑わし、反撃の手を封じる。
「でも遊び続けてもいられませんわ!!」
 剣の切っ先を下げ、振り上げた攻撃は敵機体の装甲――その隙間を捉えた。勢いそのままに引っかかった剣を押し上げるように振り抜けば、相手の体勢が崩れる。そこへ叩き込むのはバーニアの急加速も含めた無防備な腹部への追撃。
 鉄がひしゃげる音が立った。見え隠れしている配線のいくつから火花と黒煙が上がり、腹部より下が痙攣しているのが見てとれた。
「問題は――空ですわね」
 無力化を確認し、その場から離れつつ上空を見遣る。
 我が物顔で頭上を飛び回っているのが天鳥機体だ。さきほどまで焔子が居た場所には魔力弾が打ち込まれ、着弾と共に周囲へ瓦礫を撒き散らしている。
 この機体を貸してくれた機械生命体より、天鳥機体とは相性が悪いと事前に聞かされてはいた。直撃すれば暫くは動けないだろうとの言葉も添えて。
「ええい、せめて降りてらっしゃい!!」
 持っていたガンデッサシールドを投げてみても、相手はひらりとそれを避け、空を優雅に泳いでいる。なんだかバカにされているようで悔しいと、焔子はガンデッサシールドを回収しながら吼えた。
「なんですの!? サメは低いところがお似合いとでも言いたいんですの!? 今回は水場も無いのですよ!! いえ、あったところでサメには乗りませんが!!」
 降りてきたところを狙うのも良いかもしれないが、相性を考えるのであれば優先すべきはその他。
 空からの狙撃は出来る限り回避を試みるのが良いだろう。掠る程度ならば自動防御である程度は軽減もできる。少なくとも炎魔法をまともに喰らい、蒸し焼きになることはないだろう。たぶん、ちょっと、サウナ状態になるくらいだ。
「防御と回避を軸に――ちょっと見た目はグロいですけれど、寄生されているようにも見えるかもしれませんけれども……!! 私は解放軍の味方ですわ!! 味方ですからね、通信を聞いた方、お間違いのなきよう!!」
 通信で敵と誤認されぬように声を掛け、焔子は気持ちの悪……気色の悪……ええと、あの……バルバロイを基にした追加装甲!! と共に、地上の機体を一体ずつ仕留めていくことにした。

 焔子が戦っている最中、機体を貸してくれた機械生命体は負傷しながらも彼女の働きぶりをこっそりと観察していた。
 そして戦場で立ち回る彼女を見て、強く思ったという。
『俺は暫く動けないし、彼女さえ良ければあの機体を使ってもらおう。そしてあのペイントは記念として残しておこう!! いや、どうせなら……もっとあのペイントが目立つようにしてもいいな。もっとデカく描くか!! ついでにサインも貰おう!!』
 知らぬところで彼女の機体、その方向性が決定した瞬間であった。


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