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終焉解放オーバーチュア【一曲目/全三曲】

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終焉解放オーバーチュア【一曲目/全三曲】
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「ふっ……何故だか分からないけど、この世界は確かにあたしを呼んだ……あたしは決してただのショタコンじゃないんだからねっ、聞いててよ天の声っ!!」
 若干のメタ発言と共にプラネットⅢへ降り立った亜莉沙・ルミナスはビシリと天に指先を向けた。天の声もにっこにこでございます。
「とりあえず……解放軍の救出も大事だけど、まずは立て直しが必要よね。出来る限り避難する時間を稼いで、手当て……手当てでいいのかしら。処置に関しては他の人に任せて、あたしは皆の盾になるわ」

 亜莉沙は解放軍の味方となるため、重鎧機体を借り受けて前線へと向かうことにした。
 その道中、気がついたのは機体の癖である。重鎧機体に反映されたのは己が着込んでいたスワン・メイデン。スラスターも同じく機体へ搭載されており、操作もコックピット内部から行えるようであった。試しに起動してみれば動作はしてくれたが――少々小回りに難ありといった様子であった。直線は問題ない、あるとすれば機体の重心がモロに操作性へ介入する旋回まわりだろう。
「……トラブル、じゃないわよね。方向転換にだけ気をつけないと……他の装備はどうなっているのかしら」
 その他の装備はそのまま扱えそうであった。中でも盾の相性がとりわけ良さそうである。機体そのものの堅牢性を更に強化してくれるようであった。
「うん、うん……整備調整でこのあたりを強化できれば、もっとスワン・メイデンを上手く扱えそうね。落ち着いたらここの人達に整備のお願いとかできないかしら……?」
 そのためには今この場を切り抜け、落ち着いた場を用意しなければならないだろう。
 亜莉沙は機動術の確認をしながら機体の性能を測りつつ、前線へと介入を試みる。

「オーバーチュア騎士団副団長にして勲爵士、亜莉沙・ルミナス推参!! 『扉』の向こうから助けに来たわ!!」
 少しの間でもいい。獅子奮迅の働きを見せなくともいい。劣勢の解放軍を立て直すだけの時間を稼ぐことができれば、同じく扉を潜ってきた者らが解放軍のために動いてくれることだろう。さきほど後衛で慌ただしい動きを見せてくれる者もいたのだから。
 加速と共に前線へと降り立った亜莉沙は二つの盾を携え渦中へと飛び込んだ。
 片手には大盾、もう片方にはシールド展開のできる槍。既に交戦をしていた解放軍を背に守り、まずは相手の勢いを削ごうと試みる。
 同じような重鎧機体の攻撃はとくに問題なく弾きやすいものであったが、空を飛ぶ天鳥機体に関してはそうもいかなかった。防御を二重に重ねたといえど、その衝撃はコックピット内部にいる亜莉沙にも及ぶほどだ。攻撃の余波として広がる熱波がコックピット内の気温を容赦なく上げていく。
「いつもなら、問題ないんだけど……!! 魔法に弱いのね、この機体は!!」
 玉のような汗が零れ落ちる。顰めた表情と共にやり過ごし、加速にてその場から飛び出した。
 機体の損傷は防御態勢のおかげでそれなりに留まっているものの、囲まれたり徒党を組まれたりしてしまえば厳しいことは目に見えていた。おまけに相手は空を飛んでいる。こちらの攻撃は届きにくく、また旋回時は機敏さに欠ける。どうしたものかと考えていれば、後方より何か鋭いものが射出される音が響いた。振り向けば、そこに居たのは解放軍の地獣機体である。天鳥機体を追い払うように弓矢を放ち、亜莉沙への狙いを反らしてくれたのだ。
「誰が乗ってるか分からないけどありがとう!!」
 御礼を通信に載せ、亜莉沙は体勢を変えた。
 さきほどまでは防戦一方であったが、空を見てくれるものがいるのであれば丁度良い機会だろう。防戦に回っていると思い込んでいる相手が策を切り替える前に勝負に出るのだ。
 シールドを展開した槍を一度後方へと納め、突き出しに合わせて打ち込んだのは格納されている杭だ。急に攻撃へ切り替えたせいで相手は反応出来ず、穿った杭が敵の機体を捉えた。杭は機体の足を撃ち抜き、地面を抉る。反撃を貰わぬように機体を加速させ瓦礫を吹き飛ばしながら前方へと転がり込んだ。
「反撃はここから……そうだ、この機体……ちゃんと無事に返さないといけないわよね……?」
 借りる前よりは傷ついていたので急に不安が押し寄せてきた。えっ、もしかして整備費は全部あたし持ち……? いやいやいやいやいや、それよりも解放軍をちゃんと救う方が大事……ねえ、大事でしょ!? 大事だよね!? と、亜莉沙はプルデンティアの鏡を薙刀へと切り替えて重鎧機体をなぎ払い「ただのショタコンだと思わないでよね!! やるときはやるんだから!! あと機体の整備費はまけてください!!」と、槍のブースターを用い、頽れた敵機体を飛び越え、新たに立ちはだかる敵の機体へと真っ向から勝負を仕掛けた。


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