クリエイティブRPG

終焉解放オーバーチュア【一曲目/全三曲】

リアクション公開中!

 137

終焉解放オーバーチュア【一曲目/全三曲】
リアクション
First Prev  6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16  Next Last


「危機が生じた際に開く扉が、この地に我々を送り込んだ……」
 ふむ、と小首を傾げたジェノ・サリスは戦況を眺めふと思う。
 お膳立てされたかのような登場と、この地に住まう者達の対立。扉の性質を思えば、解放軍に支援しろということなのだろう。そしてその理由はマザーの暴走。母たる何かが悪さをしているのは分かりやすい危機の要因だ。
「ともあれ危機は危機……今まで通りなら、解決するまであの扉は開かなかったな。戻れるように王国軍機の迎撃へと向かってみるか」
 解放軍に属するF05-2898により、空を飛ぶための天鳥機体を借り受けたジェノはコックピット内部を眺め、謎システムついて確認をしていく。
 自身の装備が反映されるシステムは、間違いなく高度な文明が齎すものの一つだろう。この地がどれほど進んだ文明を持ち合わせているかは分からないが、使えるのであれば動きながら色々覚えていくほうがよい。
 空を見上げれば、そこにあったのは地上と同じくらいに灰色の世界であった。
 紗幕を通した向こう側に星々は確認できる。電光掲示板だけではまかないきれぬ光は、紛れも無く空から届く明かりそのもの。この分であれば、自身が扱うフォトンも賄えるはずだ。
「……だからといって過信もできないか。少しずつ試しながら動いてみるとしよう」

 手始めにジェノが行ったのは、装備がどの程度通用するかどうかの確認だ。
 以前潜った扉では、時たま制限こそあったものの概ね反映されていた。しかし今回はどうだろうか。どの程度まで予想通りに動いてくれるのか。
 そのような事を考えつつ間合いを計り、戦場に飛び交う敵味方の数を調べてみれば、そこに待ち受けていたのは圧倒的な数の差であった。味方であろう機体たちも戦うというよりは時間稼ぎを主に動いている。このままいけば全滅もそう遠い未来でもないのだろう。
「……いや、そうでもないかもな」
 様々な力と縁を持つ者らがこの地に降り立ち始めている。後押しがどのくらいの効力を発揮するかは分からない。しかし今までも扉に弄ばれたものの、都度帰路につくことはできていたのだ。きっと今回もそうなるだろうと希望を抱く。
 空へ飛べば土煙が上がった。器用に機体の鳥足で二丁の銃を構え、秘めたる力をそこに注ぎ込む。増幅された力は銃へと宿り、星々が如き輝きとともに銃口が煌めいた。
 鈍色の世界を分かつか如く、輝きは地上の機体へと流れ落ちる。
 普段よりも威力が高く感じるのはきっと気のせいではないのだろうと、地上に散らばる瓦礫が物語っていた。
「問題ないか。戦闘データの収集に向けて動いてみるとしよう」

 空中での動きと転移は相性がいい。機体への負荷は高いが、距離を止めたり後退したりする助けとなった。使い処さえ間違えなければ、攪乱するのにもってこいだろう。
「……分裂跳弾は向いていないな」
 ジェノは赤くなった銃口を眺め、呟く。
 己の手際には問題はなかった、原因としてあげるのであれば機体内部に備わっているシステムと回路の関係性だ。集積には向いてはいるが、散弾のようなものは銃そのものに多大なる負荷がかかるらしく、ほぼ単発として射出された。まるでこちらの行動を無理矢理組み替えられたかのようだ。装填については少し時間をおけば問題はないだろう、こちらも使い処しだいだなと頭の片隅に置き、色が戻りゆく銃を再び構えた。
 次の攻撃はエネルギー充填によるものだ。さきほどのように単発での攻撃として扱うのであれば得に問題もないだろうと、トリガーを引けば機体が大きく揺れた。ブレた訳ではない、威力の高さからだろう。空中で体勢を整え、眼下を見遣れば予想通り機体一体の足を撃ち抜いていた。損傷具合から動く事は叶わないだろう。回収要員らしき支援機体が動いている。牽制だけでもしておくか悩ましいところではあるが、銃に熱が宿っている状態ではどうなるか予測がつかないし、味方へ攻撃が当たってしまってもマズい。どうしようか悩み、選んだのは地形そのものを呼び出す秘技の一つだ。
 鉄塊の世界に現れたのは冷気を携えた大地の塊。山脈は侵攻しようとしている敵機体たちを押し止め、とりわけ支援機体たちは右往左往している。味方はその間に一度下がり、瓦礫や建物の中へと滑り込んだ。
「これも範囲が狭まっている気がするが、壁として呼び出すのもいいかもしれないな。もしくは通信機の阻害に繋がってくれればいいんだが……」
 試行回数はこちらの利になる。もう少し動き回り、データを収集しながら解放軍に手を貸そうと、ジェノは機体の高度を上げ、人助けを経ながらこの地の戦い方について少しずつ試行錯誤を重ねていった。


First Prev  6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16  Next Last