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ジュエルトップ『見ててねっ、プロデューサー! ドキドキのファーストライブ!』

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ジュエルトップ『見ててねっ、プロデューサー! ドキドキのファーストライブ!』
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1.ライブ、スタート!
 舞台に七色の光が輝き、この世の終わりかと思うほどのスモークが立ちこめる。
 歓声に包まれ、舞台の真ん中に現れたのは――三々 みみみみ(みみ みみみみ)!
「みんなー、ボクの歌とダンスで楽しんでねーっ!」
 みみみみらしい元気な声が響く。
 楽しくステップ!
 声量たっぷりの歌!
「よかった、みみみみさん、最高のパフォーマンスができてる……!」
 舞台袖でりんぞうと共にみみみみを見守っていた人見 三美は、小さく感嘆の声をあげる。
 そんな三美に、舞台の上のみみみみはパチンとウインク――ファンサを送った。
「みみみみさんたら……」
 舞台袖へのファンサなど見たことがない。
 それでも、みみみみの心遣いに三美の心は弾む。
 三美の隣でみみみみのライブを見ていたりんぞうも弾む。
(練習、がんばってよかったですね……)
 三美はみみみみと一緒にライブのオープニングにふさわしい曲を選び、前日の夜遅くまで一生懸命に練習した。
(それから、これも……)
 みみみみから託された黄色い石が光る。
 三美がぎゅっと握って祈ると、その光がふわりとみみみみを包んだ、ような気がした。
(少しでも、みみみみさんの力になれば……)
 三美の祈りが通じたのか、みみみみの動きが更にキレが増す。
 みみみみの身体から、うっすらと黒いもやが溢れ……そして霧散したように見えた。
そのまま、みみみみのステージは拍手に包まれながら無事終了する。
「プロデューサー!」
「みみみみさん、よく、頑張りましたね……偉いです!」
 ステージが終わると、みみみみは三美の腕の中に飛び込んできた。
 そんなみみみみを、三美はぎゅうっと抱擁する。
 腕の中のみみみみは、いつもより熱く、そして輝いているような気がした。

   ◇◇◇

 みみみみのライブの興奮冷めやらぬままに、舞台に躍り出たのは二番手、五日市 一善(いつかいち いちぜん)。
 ポップな曲にあわせて軽快なステップを踏んでいく。
(いいよ、一善君……がんばって!)
 舞台袖で見守る剣堂 愛菜はぎゅっと拳を握りしめる。
 拳の中には、一善から預かった緑色の石。
 いざという時に一善を守れる気がして、ずっと握っていたのだが……
 一善はダンスで観客を沸かせ、疲労など微塵も見せることなく最後の最後まで危なげない様子で無事ステージを終えた。
 輝くライトの元、一善の身体からもやが流れ、そして消えたように見える。
「一善君、お疲れ様」
「ありがとうプロデューサー。でも……」
「うん、でも、まだ、気は抜けない」
 このライブでは何が起こるか分からない。
 愛菜は、一善をそんな緊急事態の際に、他のアイドルたちを支える役割に想定していた。
「ライブは無事終わったけど……無理はしないでね?」
「大丈夫、プロデューサー。ライブ全体の成功だって大事だからな!」
 元気に答える一善に、愛菜はタオルと飲み物を渡す。
 ひとまずは、十分な休憩。
 そして……。
 愛菜は一善と共に、油断なく舞台を見つめていた。

   ◇◇◇

「今は私から言えることは無いと思います。成功すれば、きっととなり様は自由になれますから」
「……」
 カガミ・クアール(様)の言葉を受け、舞台に飛び出したのは三振 となり(さんしん となり)。
(となり様……がんばって!)
 となりの背中を見送りながら、カガミ(様)は練習の日々を回顧する。
 早着替えなどの少し難易度の高い演目にしたため、歌やダンスの他に魅せるためのパフォーマンスにも気を遣い、一手一手の動作と一秒一秒のタイミングを合わせるのに苦心したが、次第になんとか形になっていった日々を。
 カガミ(様)からすれば、これが最後のレッスンだという気持ちもあったのだろう。
 カガミ・クアール(ちゃん)も顔を出し、となりに5色の水晶を組み合わせたブローチを渡した。
 ちなみに……少し時間を巻き戻すと、カガミ(ちゃん)はライブの準備中に、他のアイドル達にもそれぞれの石の色に合わせた小物を用意して渡していた。
「ありがとうございますでぇす! でも……プロデューサーの許可なくアイテムを身につけるわけにはいかないのでぇす……」
「はい、預かるだけ預からせてもらいますが……」
 アイドルたちはやや消極的に小物を受け取る。
「ハナハナは遠慮無くいただくですよ」
「私も……ありがとうございます」
 そんな中、六角 ハナハナ(むすみ はなはな)と四万十 マヤ(しまんと まや)だけは堂々と小物を手に取り身につけた。
「ハナハナのプロデューサーはそんなことで目くじら立てたりしないですよ」
「プロデューサーさんの気持ちは、私がよく分かっていますから」
 と言って。
「カガミさん、いつもありがとうございます……迅雷 敦也さんといい、ホントにいつも裏方のことを考えてくれて感謝感激です! ……もぐもぐ」
 そこにやって来たまてちゃんがカガミ(ちゃん)に熱いお礼を伝える。
 ちなみにまてちゃんはぬかりなく敦也が差し入れしたスティック菓子風ケーキを確保している。
 そんなまてちゃんは、カガミ(ちゃん)が持ってきたサメに似たアクセサリーを目ざとく見つめる。
「これはとちおさんにですよね、わざわざ個別に作ってくださってありがとうございます! 後で渡しておきますね!」
 一寸木 とちお(ちょっき とちお)と二 一(したなが はじめ)ら数人のアイドルたちは、マテプロ内から遠隔でライブに参加予定だ。
 そんな、現地参加メンバーでないアイドルたちにもカガミ(ちゃん)の心遣いは及んでいた。
「そうそう、先ほどはフラウさんにもお茶を煎れてくださったとか……まてちゃんが代わりに感謝の気持ちを伝えさせていただきます!」
「いえ、そんな……」
 まてちゃんの感謝の言葉に、カガミ(ちゃん)は慌てて手を振る。
 その会話を、壁の後ろで聞いている人物たちがいるとも知らず。
「……だってさ、となり。やっぱりあのプロデューサーは優秀だよな~」
「……」
「オレは断られちゃったし、これでプロデューサーが辞めちゃったりしたら、マテプロの損失だよなぁ」
「……全部、ボクが悪いんです。受け入れられない、ボクが……」
「そーなん?」
「ボクが……ボクさえ……」

(ボクさえ……ていれば……全部、うまくいったのに……)
 恐怖、困惑、罪悪感――あらゆる気持ちを飲み込んで、舞台の上で、となりが踊る。
 スカートをはいて女の子らしい様子で踊っていたとなりがスモークに包まれ、それが晴れたとき……となりはすらりとした男性用の衣装を身につけていた。
 そのまま、男性的なステップで踊り出すとなり。
 まるで人が変わったかのように。
 カガミ(様)が持っていた石の力を使うこと無く、舞台の上のアイドルは最後の最後まで見事にパフォーマンスをやり遂げたのだった。
 観客に一礼するアイドルの身体から、黒いもやが抜けて消えるのが見えた。
「となり様……!」
「となり様!」
 舞台袖で見ていたカガミ(様)と、観客席で見ていたカガミ(ちゃん)は、舞台袖に戻ったアイドルに駆け寄る。
「プロデューサー、ありがとな!」
 少年はカガミ(様)に抱きつき、続いてカガミ(ちゃん)にも抱きついた。
「まぁ……!」
 感激するカガミ(ちゃん)の横で、カガミ(様)は担当アイドルに話しかける。
「良かったです、となり様。これで多分、貴方は籠の鳥ではなくなったはず……です。貴方が望むのなら、私達の手から離れて飛び立つ事も出来ますよ。あちらの方は寂しがるかもしれませんが、何よりもとなり様の意志が大事だと、私は思っています」
 カガミ(ちゃん)の方をちらりと見て、カガミ(様)はそう話す。
「いや、プロデューサー。できたらこのままオレのプロデュースを頼めねぇか?」
 しかし、目の前のアイドルは首を振った。
「オレには……このマテプロにはまだまだプロデューサーの力が必要だ。これからもよろしく頼むぜ」
「となり様……」
「あ……その、『となり』っての、もう止めてくんねえ?」
「え?」
 感激している所に冷や水をかけるように、アイドルは告げる。
「オレのことは、そうだな……『はなれ』って呼んでくれ。『三振 はなれ』ってな。へへっ」
 そう言って笑うはなれに、以前のような女装の似合う少年の面影はなかった。

 ライブは順調に進んでいった。
 ――この時までは。

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