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ミラクルランドと新たなる魔道少女☆【最終話】

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ミラクルランドと新たなる魔道少女☆【最終話】
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「平和を願うために、己が心を壊してしまう……皮肉なお話です」
 砂原 秋良は心壊れた魔法少女に憐憫の情を抱いた。
 何かを得る為に対価を支払うことは間々あること。しかし代償ともなれば、懐疑的にもなる。それが本心ではなさそうであれば尚のこと、正解とは言えぬものだ。
「ですから、今回は私にできることをやるとしましょう」
 強く、気高く、我が儘に――。
 それがせめてもの救いに繋がるだろうと、そう信じて。

「今回はシャーさんもお手伝いをお願いしますね」
 秋良は呼び出したフライングシャークの背を撫で、優しく語りかける。
 これで足は揃った。あと必要なのはそう、手数である。
 花束型の指揮器をふわりと翳し、舞い散る花弁へと魔力を注ぐ。瞬間、周囲に広がったのは色とりどりの光だ。それらを逆光として秋良を囲むのは色鮮やかな戦乙女たち。
「数はそれほど多くはありませんね。カイジーン達の足止めもしっかりしているので問題はないでしょう」
 あとはどれだけ彼女らの心を元に戻せるか、あるいは修繕できるかに掛かっている。
「回避はシャーさん、よろしくお願いします。それでは参りましょう――」
 秋良は花束を指揮棒のように振るい、周囲の戦乙女達に指示を出していく。
 それぞれが衣装を翻せば、数多の花弁が広がった。風の音と共に紡ぐのは秋良の歌声。懐かしくも戻れない日々を思い起こさせるようなメロディは望郷の念や輝かしき日々を映し出していった。
 戦う意味、その理由。守りたいもの、譲れないもの。あったかもしれない未来像や、生きてきた意味――。
 本当に今の自分は正しいのか。問いかけるような歌声は魔法少女の動きを緩やかなものに変えていった。
 聞いているのか、想い馳せているのかは分からない。だが、表情は厳しいものではなく、少しずつ和らいでいるように思えた。

「我が魔王はどれだけ落ちても、その輝きを失うことがありませんでした。ええ、どれだけ地に落ちてもです」
 ポンコツで頼り無く、出番を部下に食われたりもしていた。
 しかしかの魔王は目映い光を纏っていた。自らの道を信じ、いくら情けなくとも頼るべきときは頼り、そして部下達に苦労させられながらも――あ、ちょっと言い過ぎましたかね。と、秋良は咳払いを挟む。
「それでも、我が魔王は輝いておりました。どれほど暗き闇の中でも、一等星のように、人々を惹きつけて止みません」
 自らの行動が軌跡になるように、誰かの目的となるように。魔王パメラは必死であった、ポンコツだけれども。
「心壊れようとも芯は残っているはずです。しまい込んだ箱の蓋……今が開くときでしょう。さあ、眠ってしまった想いをもう一度、目覚めさせて下さい」
 歌声は高いトーンへと切り替わり、魔法少女の心、その奥底を刺激する。
 今は落ちぶれた身ではあるが、未来はこれからの話だ。
 羽ばたくだけの余力は残っている。難しいのであればその手伝いを喜んで引き受けよう。必要であればシャーさんの背に乗り、運ぶのも良いだろう。
 黒衣を翻し、夜の魔道少女は小さく微笑む。
「全てが終わりましたら、ほっと一息つけるような美味しいお紅茶をご用意いたします。ですので今は少しばかりお静かに」
 歩み出すのはそれからでも遅くないのだと、秋良は輝きの中、優雅に歌声を紡いだ。


▼ 歌声により、魔法少女は過ぎ去った日々に想いを馳せた
▼ そのお陰で始祖たる魔法少女への援軍をいくらか阻止することができた

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