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称えよ! さんぜんねこ祭り!

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称えよ! さんぜんねこ祭り!
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 ワールドホライズンのとある部屋。
 鈴鍵 茶々は窓辺でぼんやりしながらしっぽをぱたぱたさせていた。
 どうやら佐藤 一や仲間に置いて行かれ、退屈しているらしい。

(ハジメ達、ジーランディア行っちゃったから、僕は一人でお留守番なの……)

 窓の外はいつもと変わらない景色。
 近所の人々もみんなどこかに出かけてしまったのか、さっきから誰も通らない。

(おしゃべりするロボットさん、いるとか聞いてたから、僕も一度見たかったんだけどなー。つまんないなー……)

 その時、表の郵便受けに何かが投函された音が聞こえ、誰かの足音が遠ざかっていった。
 茶々が器用に郵便受けによじよじとよじ登り、ぱかっと扉を開けてみると、一枚のチラシが入っていた。
 なにやら派手な色の文字で大きく「さんぜんねこ好きによるさんぜんねこ&さんぜんねこ好きのためのさんぜんねこねこ祭り」と書かれている。

「ふみゅ~。さんぜんねこのお祭りなんだ~? 僕はチャカギだけど、行ってもいいのかなぁ? いいよね。うん、決まりっ♪」

 茶々はいそいそとお気に入りのお道具入れを背負うと、さっそく会場へ向かった。

 祝 さんぜんねこねこ祭り――
 そう書かれた横断幕の下を、巨大さんぜんねこの姿を模したパレードフロートがゆっくりと進む。
 時が経つにつれ、来場者数も増え、祭りは賑やかさを増していく。
 あちらこちらに見える人垣は、ちやほやされるさんぜんねことそこに集まるさんぜんねこ好き達の群れだ。

(……コレは、さんぜんねこ達が楽しむ祭りというよりも、皆がさんぜんねこを祭り上げて楽しみたいだけのイベントだな……間違いない)

 ジェノ・サリスは内心で苦笑しながらも、人垣の真ん中でポーズを決め、写真撮影の要望に応えていた。
 服装はいつもの赤と黒のコートだが、今日のジェノは只者ならざるオーラを纏い、ひときわ光り輝いていた。
 何やら「イベント開始早々に熱狂的なさんぜんねこファンが何人も失神させられた超ド級の国宝級イケメンさんぜんねこがいるらしい」と会場内で噂され、さんぜんねこ好きたちを騒がせているようだ。
 そして噂が噂を呼び、次第に周囲にはジェノを一目見ようというさんぜんねこ好きが集まり、ついには会場スタッフがキャーキャーと黄色い声を上げる集団を相手に交通整理に出る事態に発展した。

「押さないでください! 押さないでください! 危険ですから!!」
「だ、ダメだっ! このままじゃ死人と死さんぜんねこが出る……!」
「ジェノさん! こうなったら最後の手段です! アレに乗ってください!!」

 どどん! と現れたのは、ジェノの姿を模したパレードフロート「メガジェノ・サリス(さんぜんねこver.)」であった。
 これならば遠くの観客もジェノの雄姿を拝めるというわけだ。
 ジェノはされるがまま、お菓子その他の大量の貢物と一緒にフロートの上へと文字通り担ぎ上げられることとなった。
 
「ああ……! なんて尊いの、ジェノ様!」
「きゃっ! ジェノ様と目が合ってしまったわ! もう私一生泣かない! 目薬もささないっ!」
「ジェノ様ー! 1回100万でスマイルお願いします!!」

 パレードに集まるさんぜんねこ好きの中には手を合わせてジェノを拝んでいる者すらもいた。
 既に一種の宗教である。
 だがジェノはここにさらなる「ファンサ」を重ねた。

「どうやら、祭りは大いに盛り上がっているようだが、こうも人出が多いとゴミが出るのは困りものだな」

 フロートを止め、ジェノは道に落ちていた何かの容器の蓋を拾い上げた。

「だが俺は、こういうゴミを無駄にしないさんぜんねこだ」
「きゃっ! ゴミがお菓子に!」
「神よ! ジェノ様は神様なんだわ!」

 ますます熱狂するさんぜんねこ好き――もといジェノ信者たち。
 ジェノは彼らをフロートの上に呼ぶと、涙目になって喜ぶ彼らに肉球マッサージを施してやった。

「ああ、ジェノ様! 肉球マッサージの対価にこちらをお納めください!」
「後でありがたくいただくとしよう。そうそう、こういうお菓子も好きだが、俺はカレーも大好きだ。他の料理も歓迎だぞ?」
「3秒で買ってまいりますっ! いえむしろ私がカレーになります!!」

 ジェノのファンサが予想を超えた熱狂を呼び、その周囲は狂喜乱舞の渦と化した。
 そしてジェノが祭りのゴミを菓子に変えてジェノ信者たちに振舞ったことで、この熱狂はピークに達した。

「投げないと遠くには届かなそうだからな。悪いが、フロートの上から撒かせてもらうぞ!」
「ああああ! ありがたや! ありがたや! ジェノ様の奇跡のお菓子!」
「尊すぎて食べられません! 家宝にします!」
「いえ、むしろゴミのままでも結構です! 頭からぶっかけてください!!」

 教祖と化したジェノの手から振舞われるお菓子と、泣いて喜ぶ者たち。
 祭りの熱狂は留まるところを知らなかった。
 そして祭りの運営委員の後日談によると、今回のイベントによる「ゴミ」はなぜか一切発生しなかったとのことだ。


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