プロローグ
自由都市連盟首都フリーダムシティの盟主執務室で、アリス・エイヴァリーは珍しく人払いをし、何事かを深く考えていた。
そして、ひとり呟く。
「われわれはどこから来たのか、われわれはどこにいくのか、われわれは何者なのか――傭兵である特異者にとっても、プログレスにとっても、そして連盟にとっても重要なことね」
アリスはそうつぶやいた後、窓から眼下に広がるフリーダムシティの風景を見下ろした。発展を遂げたオフィス街には高層ビルが、高級住宅街には瀟洒な邸宅が立ち並び、一見すると自由都市連盟は豊かで幸福な国に見える。
だがアリスが視線をそらすと、そこには黒く広がるスラム街と産業廃棄物の山が見える。都市計画上、貧民層を一定の区画に置くことは必要だったと、先代盟主はアリスに告げていたが、要は厄介払いだとアリスは理解していた。
このような状況は打破されなければならない。アリスはそう想っていた。だから、先のようなひとりごとも出るというものだった。
この世界に訪れた特異者という存在。連盟の新自由資本主義と異なる体制を取っているらしいプログレス。それらが連盟にどのような影響を与えるのか――アリスはそれを興味深く想い、事の次第を最後まで見届けるつもりだった。