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【テスタメント】決戦! ”デウス・エクス・マキナ”

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【テスタメント】決戦! ”デウス・エクス・マキナ”
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総力戦・1 ――宇宙へ――


「さて、まずは地上にいる人々の話からはじめましょう。彼ら彼女らは、どういう決断をし、どういう行動をしたのか、気になりませんか?」

 戦火の収まったブームタウンでは、ポラニア、フリートラント両軍の兵士たちが、宇宙で起こった緊急事態にいかにすべきか、それぞれ思慮をめぐらしていた。
 その中のひとり――フリートラントのエースパイロット、ロト1ことヴァルター・マイヤー中佐は沈思黙考していた。
 彼は悩んでいた。愛する少女――泉 真理のそばから離れて、この世界の命運を決める決戦に向かうかどうかを。彼女から離れれば、生き別れになる可能性がある。だからといって、世界の命運を決める決戦に参加しないのは、彼の軍人としての立場から気がとがめた。それに、もし世界が滅ぶとなれば、愛する真理の命もない。それを守るためにも、闘いの場に出るべきではないか? そう思えてならないのだ。
 いつになく優柔不断に悩んでいるヴァルターに、そっと手が差し伸べられた。
「ヴァルター、わたしはヴァルターが一番いいと想った行動を取ればいいと思います」
 真理はそう優しくヴァルターに話しかけた。
「君は……」
 驚きの表情を見せるヴァルターに、真理は一転真剣に語りかける。
「でも、私はいつだって側にいます。生きるも死ぬも、一緒です。絶対側を、離れたりしません。それがたとえ、戦場の真ん中であっても」
 それはヴァルターと生死を共にする覚悟を示す言葉だった。そして、ヴァルターは真理を片時も側から放す気はなかった。ならば。
「――俺に、付いてきてくれるか、真理。俺は、この世界を滅ぼさせたくない。俺と君が生きていく世界を、なんとしても守りたい」
 ヴァルターは決意を込めて真理に告げる。真理は当然のように頷いた。
「もちろんです」
 澄んだ真理の瞳に見つめられ、ヴァルターは感謝の念を込めて告げた。
「ありがとう。すまない。君を巻き込むつもりはなかった。だが、君にそばにいてもらわないと不安だ」
 先の戦闘のこともある。真理が無茶をして宇宙に出るくらいなら、自分の側に置くべきだと、ヴァルターは感じ取ったのだ。
「教導用の複座”レクス・トリメンデス”が何機か、保安区にあるはずだ。そのうち1機を借りさせてもらう」
 そのようにヴァルターが決意を固めた矢先、横合いから声がした。
「中佐が――いえ、ヴァルターが宇宙に行くなら、私も行く」
 振り返るとそこにはリーリアが立っていた。
「ダメだ」
「そうだ、ダメだ!」
 ヴァルターに続いて伊佐坂 八兵衛が声を張り上げる。だが、リーリアは頑なな態度をとる。
「これは、私の意思。刷り込みでも、なんでもない」
「リーリア、君は、条件付けから解放されたのか……」
 驚くヴァルターにリーリアは頷く。
「私はヴァルターにいろいろなことを教えてもらった。だから自分の気持ちも生まれた。ヴァルターが真理さんといっしょに行くのはいい。だけど、私もヴァルターを守りたい」
「――それなら、オレもリーリアと一緒に行く!」
 八兵衛がそう主張する。彼からすると、リーリアはヴァルターを守るために死をもいとわない雰囲気が感じ取れて仕方なかった。その彼女を、縁のある者として守りたかった。
「なら、私と一緒に宇宙に行く?」
 リーリアの問いに、八兵衛は頷く。
「もちろんだぜ!」
「――保安区の教導型”レクス・トリメンデス”2機か。大変な借りになりそうだ」
 ヴァルターが肩をすくめる。だが、顔には静かな笑みが浮かんでいた。
 そして、真理はやはり宇宙を目指す皇后崎 皐月に向けて告げた。
「一緒に宇宙に行きましょう。私がヴァルターさんを助けたみたいに、テオドールさんを救けたいんでしょう?」
 皐月は頷く。真理は皐月に抱きつき、そして耳元でささやく。
「きっと、気持ちはテオドールさんに伝わります。だから勇気を出して、声を上げてください」
 皐月は真理の体を強く抱きしめ、応えとした。そして抱擁が終わった後、真理たちに告げる。
「あいにく”シャングリラ”で腹ごしらえする時間はないけど、サンドイッチ預かってきたから、一緒に食べましょう?」
「はい!」
 真理は元気良く答える。編みカゴいっぱいのサンドイッチをヴァルターと真理、リーリアと八兵衛、そして皐月で分け合って食べあった後、彼ら彼女らは宇宙に上がるために必要な行動を開始した。



 今井 亜莉沙は妹であるアデル・今井の旗艦用シールドクルーザー”ケントゥリオ”に乗り込み、ブームタウン近郊の電磁カタパルトから宇宙に上がろうとしていた。
 亜莉沙は出撃前に、巨大な電波塔としても機能している”ピラー”の通信機能を用い、ポラニア・フリートラント両軍にブレイブハートで檄を飛ばした。
「ウランカの解放者にして、決起を促す者として、今ひとたび言葉をかけるわ。やっと、ふたつの国が和平に応じられる体制ができたわね。もちろん、これから様々な課題は出てくるだろうけれども、まずは共通の敵”デウス・エクス・マキナ”を倒すことに集中しましょう! そしてアレを倒すことが出来たなら、まさにその事実こそが、ふたつの国が力を合わせられたという”歴史”になるのよ」
 そしてすぅっと息を吸い込み。
「――さあ! みんなで”歴史”を、平和な未来への礎を作りましょう!」
 ひときわ大きな声で、宣言する。
 亜莉沙の声はポラニア・フリートラント全軍に響き渡り、その士気を大いに盛り上げた。
「まったく、姉様ったらすっかりアジテーションが上手くなってしまって……」
 アデルはどこか皮肉げな口調でそうつぶやいた後、少し微笑んで言葉を継ぐ。
「しかしそれも、この世界でレジスタンスを始めとする人々へ寄り添った成果なのかもしれませんね。私も、ゼネラルとして姉様の想いを全力で支えることにしましょう。そして、この世界の”歴史”を見届けます」
 アデルの言葉には真情がこもっていた。例えいくつもの世界を転々とする客人(まろうど)であろうとも、そこで関わってきた人々に対し愛着がないわけではない。自分からしてそうなのだから、より深くこの世界の人々と関わってきた亜莉沙はより深い愛着を持っているだろう。
 だからこそ、あのような檄を飛ばせる。だからこそ、人々に檄が受け入れられる。
「――それが、人の絆というものなのでしょうね」
 アデルはひとり納得しながら、電磁カタパルト上に乗った”ケントゥリオ”の発進準備完了を管制に連絡し、電磁カタパルトによる加速で宇宙へと上がるのだった。

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