カメラが切り替わり、上空のカメラが地球の会場を映し出す。
空莉・ヴィルトールがスポットライトを浴びながら、堂々とステージに現れた。
身に着けているのは女王を思わせるような
GULOSのチャイナ風ドレスだ。
(これは前世の私。私が誰か分かる?)
銀色の鳩を肩に乗せた空莉は挑発するように観客に視線を送る。
マーメイドラインのタイトなドレスには、金銀の色糸をふんだんに用いた迫力ある刺繍があしらわれ、その胸元は肌を見せるよう菱形に開口している。
生地を折り重ねたネックラインと覇者の戦衣を思わせる宮廷風羽織のデザインにより一層衣装の存在感を引き立てられ、裾に施された大胆なスリットには見るものを惹きつける試みがなされている。
空莉は観客の視線が自分に注がれるのを感じながら、悠々と彼らの方に歩を進めた。
(見ての通り、美少女族長。この“龍の左眼”に宿るのは、邪気を退ける精霊さまの力)
これは自信と共に身に纏う衣装――空莉は人前に出るためらいなど一切ないという意思を示す。
そして、視線の端で客席中央からクレーンカメラが自分の方に近づいてくるのを確認した。
(続くエレメントは優雅に揺蕩い、そうしてあなたの前に)
カメラマンが撮影モードに切り替えたその瞬間、画面にはいきなり空莉の姿が映し出された。
タイミングを合わせ、エレメントと一瞬にして入れ替わったのだ。
驚くカメラマンに対し、空莉は笑顔でジェスチャーを送る。
(こんなことが出来ちゃうのは族長だけ!
どうぞ仰ぎ見るようなアングルで撮ると良いよっ!!)
緑の宝石が嵌め込まれた美しい銀色の羽根ペンで空に描くのは、パトリアの未来への希望。
生命の種子は空高く羽ばたき、幾星霜の時を超えて―――
銀の鳩が空へ舞い上がるのを追って、それらはカラフルな群れとなって飛んで行った。
(――第二部、現代編開始!! 次に見せるのは、現代に転生した私だよっ!)
今日のテーマは二部構成の「転生モノ歴史ミュージカル」。
暗転の間に空莉は衣装を変え、再びステージに現れた。
(私ったら何回生まれ変わっても美少女だねっ♪ いえ~いっ♪♪
ここからは遠慮なくキャーキャー騒いでね!)
今度は全力全開で可愛く。
現代のアイドルを象徴するようなミニスカート衣装で現れた空莉は観客に笑いかけ、黄色い歓声を煽る。
悠久の時を経て生まれ変わったことを強調しながらも、各所に残した古の女王の神秘性はどんなアクセサリーとも惹き立て合うように。
衣装の裏地に施された細緻な刺繍を見せながら、裾を翻し、可憐に踊る。
(アン、ドゥ、トロワ!! 集まれ私たち~♪♪ アイドルユニット結成だーー♪♪)
カメラは歓声の中で踊る空莉の衣装が大きく翻った瞬間、ピスキル、セピアナの2種族のモチーフを映し出した。
幻影たちと共に迎えるダンスのフィナーレを、パトリアの伝承歌である「赤き砂漠の歌」で彩って。
空莉は大きな声援の中でステージを演じきった。