「延寿は
KARAN KARAN、アリーチェは
LANTECAにセピアナ用の水着を用意してもらったんだよな……うん、二人ともよく似合ってるよ。
さぁ、そろそろ出番だ。パトリアと地球の人たちに見てもらおう」
星川 潤也は準備のできた2人をランウェイへと促す。
ランウェイは静かな水面となり、月を映していた。
これから登場するモデルとその衣装のための演出である。
そこへ元気よく飛び出したのは、花柄の水着を身に着けた
アリーチェ・ビブリオテカリオだった。
(あたしの水着は「LANTECA」。ふふん……どうかしら。お花モチーフの水着、似合ってるでしょ)
静かな水面が波立ち、飛沫が上がる。
アリーチェは観客の視線を感じながらランウェイを進み、立ち止まってポーズを決める。
そして真上に向かって星のエフェクトを放った。
(さぁ、雨が降るわよ!)
続いて現れた
世良 延寿がオルガノレウムの矢でそれを狙い撃つ。
花びらの尾を引く矢が星のエフェクトを貫くと、星は蕾がはじけるように次々に花となった。
身に着けた水着のデザインに合わせ、2人が降らせるのは花の雨だ。
延寿はアリーチェの後を追いかけながら、星のエフェクトを次々に花に変えていく。
(私は水の中でも映えるパステルカラーの水着! 「KARAN KARAN」らしくてかわいいよね!)
今日の水着は透き通った水の生き物を思わせるセピアナの容姿がより引き立つよう、色のトーンやデザイン、縫製に工夫を凝らして仕立てられているようだ。
セピアナは水の中でこそ美しく輝く種族だ。
潤也はメロディスクラッチャーで優しい音色を奏で、チルな演奏と共に、延寿とアリーチェの頭上に雨を降らせた。
(観客は盛り上がってるな。よし、そろそろ直接感想を聞きに行ってみよう)
ステージ上の延寿とアリーチェは可愛らしくステージを盛り上げている。
観客の反応は上々にみえた。
だが本当のところ、2人の身に着けた今日の水着はパトリアではどう受け止められるだろうか?
カメラはランウェイからアングルを移し、メロディスクラッチャーを手に移動する潤也の姿を追う。
向かったのは、ステージ横に控えていた楽巫達のところだった。
「楽巫の目から見て、ああいう地球のデザインはどう思う? もともとセピアナは水の中で活動することが多かったと思うけど、どうかな?」
潤也がそう尋ねた相手は
ザウシータだった。
ザウシータは隣にいた
ヴェントスと、「とてもいいわよね」と頷きあった。
楽巫である2人の目にも、地球の水着はとても魅力的に映ったようだ。
「きっと、実際に着て水の中を泳いでみたいと思う人はとても多いんじゃないかしら? とても動きやすそうだし、かわいいわよね?」
「セピアナの女の子に限らず、みんな好きだと思うわ。延寿、アリーチェ! そういうのアタシも欲しいー!」
ヴェントスがランウェイから戻ってきた2人に向かって手を振る。
アリーチェはヴェントスの隣にいる
トリオナリスに気付くと、水着姿のまま声をかけた。
「あなたの衣装もかわいいわよね、トリオナリス。『LANTECA』の衣装って、あたしも大好きよ」
「ありがとう……頑張って着られて、よかった……水着はちょっとまだ……勇気が出ないけど……私もいつかは……」
「メリディムさんとメリディスさんの衣装もすっごくかわいいよね! あ、『白いもちふわ』食べてるー!」
延寿がショーの合間にこっそりおやつを食べていた2人を見つけ、笑いかける。
カメラに気付いた
メリディムと
メリディスは延寿を自分たちの間に挟むと、メッセージを促した。
ちょうど中継が地球とも繋がっているらしい。
延寿は双子の楽巫と共にカメラに向かって手を振った。
「白光心吾さん、素敵な衣装を作ってくれてありがとう!
みんなも『KARAN KARAN』と『LANTECA』の衣装をよろしくね!」