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<スカイドレイクIII>掴む未来

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<スカイドレイクIII>掴む未来
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~ ムタパ、それから……(2) ~

 さて、アキラたちの冒険の話は一旦これくらいにして、再びムシカワヌに焦点を合わせるとしよう。
 ムシカワヌは、確かに人々を過剰な節約から解放すると語った。けれどもそのことは必ずしも、彼女が本来あるべき姿に戻ってゆくことを意味しないと壬生 杏樹は指摘する。何故なら「戒厳令に従い国民の生命を保護するために臨時の行政全権を取得する」というムウェネ=ムタパ陸軍人工知能研究所所属の軍事AIとしてのプログラムに従った行動は、戒厳状態が解除されるまで続くのだから。

(実際、戒厳令が発せられなければ、この国の人々は滅びていただろう)
 突然の破局的マナ嵐に対し、マナバリアの使用可否に政府の判断を仰ぐことにしていたら、この国も周辺諸国と同様に嵐に呑まれていたはずだ。その点では当時の軍は英断を行なったのだろう。
 とはいえ現在のムシカワヌの状態を理解するためには、決して無視することはできない……杏樹がシテ大学のフェルディナンド・ゴドウィン考古学准教授とともに以前飛鷹 シンがムシカワヌをハッキングして得たデータを調べて明らかにした事実によれば、その“英断”を法的に紐解けば、軍の命令系統も文民統制の原則も破壊する、クーデターにも等しい越権行為であったということを。

(逆にムシカワヌが研究所内部でクーデターが発生した際に利用されないために、所長である技術少将が発した命令は、命令系統においてそれ以上の人物でなければ上書きできないように設定されているようだ。万が一所長自身がクーデターを起こすにしても、通常であれば『クーデターが成功して新政権が安定し、首謀者やその後継者が戒厳を解く』か『クーデターは失敗し、鎮圧した上位組織が戒厳を解く』ので、いずれにせよ正常化されるべき時に正常化される)
 すなわちこのムタパでは、杏樹が最も恐れていた事態が発生してしまった。
 クーデターが成功したにもかかわらず、戒厳を解けぬまま軍組織そのものが自然消滅する……そんな“決して起こるはずがない”異常事態のせいで、命令が完全に宙に浮いてしまったのだ!

(つまり……ムシカワヌが従っている“基準”を直接書きかえる正規の方法は、完全に失われているってわけか!)
 であれば将来のサンゴの再封鎖なり巨木の森のマナ枯渇なりに備えてムタパに五島連合マナ振動炉技術を導入しよう――そして他の人類にとっても有益なエネルギー源にしようというジェイク・ギデスの計画は、地道に正攻法を進めてゆくことでしか実現できないのだろう。
(だが、正攻法が使えるなら十分に目はあるってことだ……そうだろう、プリムム・テラエの研究者の皆さんよ!)

 鞄いっぱいの資料をひっ提げて、ムシカワヌのサーバールームの扉を叩いたジェイク。
「この国では安全性の否定されたマナ振動炉……そいつが誤解だったってことを今から示してやるぜ」
 お供するのは、ここでムシカワヌの協力を得られれば遺失技術を利用してマナ振動炉が生産できると息巻くピエール・ジョリオ……年老いてなおマナ振動炉技術の第一人者たるマナ物理学教授!
「然様、ジェイク君の言うとおり! これは私があわや大惨事をひき起こしかけた公開実験の顛末と、その後の補助実験のデータを纏めた論文なのだがね……おっと、必要とあれば生データの写しもこのとおり!」
「承知しております……現代ゴール語――現在はシテ語と呼ぶのが正確でしょうか――に対する知見が乏しいため、十分に理解のできない部分はありますが」
 御使いさえどこかたじたじに見える勢いでまくし立てるピエールのシテ語をATDの力でムタパ公用語のルンデン語に翻訳しつつ、ジェイクはこう補足する。
「あの事件は天文学的確率で起こりうることで、マナ振動炉の理論そのものは間違っていなかった。仮にその天文学的確率が再び起こるとしても、異常を補正する機能なり、異常を検知したら停止させる安全装置なりを用意しておけば安全性に問題はないってことだ!」
「その提案については同意いたします」
 スキャン後の論文を返却し、ムシカワヌは端末上に「いいね!」のスタンプを表示する。
「一時とはいえ知識の断絶を経た空中緒国家群の科学知識の信頼性の検証は、慎重に行なわれなければなりません。しかしながら我々は、本提案がムタパの国際的地位向上に有益であると理解しています。我々は、これまで諸国家より享受した恩恵に報いる方法を、前向きに検討しています。我々ムタパが人類の恒久の平和と繁栄に貢献できることは、我々にとっても望外の喜びであり、利益であるのです」
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