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<スカイドレイクIII>掴む未来

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<スカイドレイクIII>掴む未来
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~ キリムの怒り ~

 たび重なるダメージは、さぞかし屈辱であったことだろう。ましてや相手は、これまでも敗北を喫しつづけた者たちだ。
 キリムの怒り、それから盟友を傷つけられたンクバの憎しみ。それらはいかばかりのものであっただろうかと痛む苺炎・クロイツの胸。だって、アダルとイファトの人々とは違い、言葉の通じない彼らが相手では――完膚なきまでにうち滅ぼす以外に新たな火種を生まぬ形での解決は望めそうにないのだから。
 その証拠に、ますます激しくなる彼らの猛攻。キリムの突いた角はサンゴの壁に穴さえも空け、ンクバの雷はあたかも戦場の全てを喰いつくさんとするかのごとく。
 でも、あるいはだからこそ、苺炎は、人類は勝利をもぎ取らねばならない。
「いくよふぐちゃん、みんなを手助けしてあげてね!」
 まんまる風船風霊たちへと呼びかけたときにはすでに、苺炎のスカイシップは加速プロセスの只中にある!

「今……お願い!」
 スカイシップが祈りとともにサンゴの壁を掠めれば、その瞬間、サンゴがおおいに揺れた。いや……揺れたように思えたのは錯覚にすぎまい。何故ならサンゴの歪み自体は、キリムの角により生まれたもののほうがよっぽど大きかったはずだからだ。
「けれど、私、気づいてしまったの。あなた、角でサンゴを突く瞬間、全身を強張らせていなかった? そうだよね、サンゴはマナで作られた時空のトンネルなんだから、歪めばマナが放出されてしまう。あなたはマナ生命体だから……その歪んだマナの影響を、人間よりずっと強く受けてしまうのね?」

 こういった発見を伝えれば、ムシカワヌもきっと喜んでくれるはず。だから、その喜びをぬか喜びにしてしまわないために……スカイシップは壁沿いから一気にキリムへと向けて弧を描いた。
 今しがた受けた揺動のために、彼はしばしの間立ちつくしたままだ。
(早く終わらせて、オウルに預けてあるヒュプノパロットたちのところへ帰るんだ)
 意を決した苺炎のスカイシップから……魔力を帯びた槍の一撃がキリムへと伸びる!!



 ああ。本当に厄介な種族どもだ。
 キリムは忌々しげに倦んだ眼差しを向けた。幾度も傷ついて巨体を維持できなくなった自分の首ひとつと比べてさえ小さな体でありながら、幾度となく自分を邪魔する種族。
 いいや、そうやって見くだしていたのが間違いだったのだとは、今となってはキリム自身も承知している。今、こうして彼が戦っている理由は、真に致命的な結果となる前に撤退しろと囁く理性を、憎悪と願望が上回ってしまっているせいにすぎぬのだ――だからといって理性への服従に徹することは、彼自身、到底できそうにないように思えたが。
(何故なら、時間さえ稼げれば十分に勝ち目があるからだ。所詮、奴らは疲れれば終わり。一方、こちらには森から届くマナがある。奴らが他のンゴジを排除してくれたことだけは感謝してやらんでもないな……お蔭でこれまでより多く流れこむマナが、強い治癒の力をもたらしてくれている)
 人の言葉に直せばそのように考えていただろうキリムは思ってもみなかった……まさかその頼みの綱のマナ流が、突如、極度に減ってしまうだなんて!

 キリムも、ンクバも、ドラゴンシーカーたちも、しばしその轟音には腹の底から身を揺さぶられることとなった。
 まるで抉られた大地の悲鳴。何か、とんでもなく巨大なものが遠くのどこかに落下したのではないかと思わせる圧力が、サンゴを伝声管代わりにして戦場までおし寄せる。
 幾らかの経験の浅いドラゴンシーカーたちはふき飛ばされた。キリムと戦おうという特異者ともなれば十分に耐えられる実力があっただろうが、それでも注意くらい奪われたことは否めまい。
 だが……その絶好の好機にもかかわらず、キリムやンクバはそれ以上に動けないでいる。気圧とともに一気に変化したマナの圧。それがマナ生命体にとってどれほどの脅威であったかは……おそらく、生け簀の中にダイナマイトでも投げこんでやれば容易く想像がつくだろう。

 一時的な不調をもたらすほどの、凄まじい音圧とマナ圧の変化! しかもそれが済んだと思ったら、サンゴ内に流れこんでいたはずのマナが一挙に枯渇してしまった。
 それがよもや渡会 千尋が落とした巨木の枝がサンゴ出口を塞いだせいであったなどとは、当然、キリムには想像すら叶わない。解るのは自分に勝利をもたらすはずだったマナが失われ、どうにか厄介な羽虫どもを蹴散らさなければ自身の命も危うくなったという事実ばかり!
(いいや、まだ原因を確かめてとり除いてやれば、致命的なことになる前に何とかできるかもしれない)
 反抗者たちに背を向けるリスクは承知していたが、キリムにはそれ以外の方法は思いあたらなかった。
(おそらくは、これらの仲間が何かの策を弄したのだろう)
 何が起こったのかは解らぬが、原因さえ倒せば解決するだろう……そう信じるキリムはまだ知らない。その頃、千尋は出口を塞ぐ巨木枝の遥か頭上の、彼の手の届かないところに陣取っていただなんて。
 つまりキリムは……ただ徒に敵に背を向けてしまっただけだ。その隙を、みすみす見のがすような水谷 大和たちじゃない!
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