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<スカイドレイクIII>掴む未来

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<スカイドレイクIII>掴む未来
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~ 我が道 ~

 そんな激しい戦いの様子を、ジェノ・サリスは姿を隠したまま後方から観測しつづけていた。
「一度は解決の目処が立ったエネルギー問題に、逆襲する強大なマナ生命体。これまでの努力を無駄にするまいと奮闘する姿はまさに、芸術のため記録に値する」
 だとすれば観察者たる自分が記録すべき事柄に干渉するなどは、本来、好ましからざる所業なのだろう。
 ところがジェノはこの世界でサリス派と呼ばれるようになった芸術の祖だ。純然たる中立を尊ぶ芸術でなく、願いを、想いを伝えるための芸術こそサリス派のもの。であれば、その記録から敵の行動の法則性を見いだして戦う者たちに伝えることもまた、これまでの人々の尽力を無駄にしてなるものかという意志の表現そのものである。
「だがやはり、見るだけでなく自分の手で確かめるべき情報もあるだろうな」
 たとえば……この前とは別の神格装備で挑めばどうなるだろうか? その時、ちょうどキリムの首が、全てをおし潰さんとなぎ払われた。その軌道が姿の見えぬはずのジェノまで届いていたことははたして偶然か。それともマナ生命体たるキリムにとって、見えぬものを視るなど造作なきことか?
 キリムの首が空間のとある一点にまで到達した瞬間、空間に巨大な盾の幻影が生まれたように感じられた。首はその盾に阻まれて、ひしゃげてくの字に弾き飛ばされる。
「これもまた記録に足る光景だな」
 それが偶然であれ必然であれ、いずれにせよジェノにとっては想像の種だ。神に等しいンゴジと神格の盾の衝突という事象。では次は……こちらから新たな状況を創ってやったならどうか?
「神格装備、シウコアトルよ……その力にて彼の獣を縛めろ!」



 キリムが轟く唸り声とともに身悶えした瞬間は、ドラゴンシーカーたちにとって絶好の攻撃の好機に違いなかった。キリムに対して集中攻撃が行なわれるさまを……人知れず、弥久 ウォークスの狼の視線がキリムを睨めつけている。
(それは、本当にこちらだけの好機と言えるのか?)
 隙を作れば猛攻を受ける、それはキリムとて覚悟していよう……であれば、彼が反撃に転じるのは何時か?
 当然、その猛攻がひと段落ついた瞬間だ。どうやらキリムなる怪物は、過去の戦闘経験を元に戦いかたを変える程度には賢いらしいではないか。ならばその瞬間が来るまでじっと我慢を続け、一挙に反撃に出る機会を窺っていたとすれば……?
(つまり、キリムからしても、敵を一網打尽にする好機だということだ。だが、残念だったな。俺が連携するのは佳宵とだけだ!)

 ウォークスの大きな手が自分の手を力強く握った感触が、弥久 佳宵の手にも伝わった。ぐっと引っぱられる感触とともに、自身がウォークスとともにンクバから放たれた雷撃を避け、数メートルほどキリムへと近づいた様子が判る。
「今のは……私たちを狙っていましたね」
「うむ。正確さこそ欠いてはいたようには見えたが、やはり姿を隠した程度では気取られていたか。だが、想定から外れるものではないな」
 であれば、作戦どおりにわが道をゆかん。人類は集団で連携して戦うものだというキリムの認識を、たったふたりきりの連携にて覆してやろう!
「キリムを、斬りきざむ!」

 瞬間、佳宵の白魚の指先が、そっとウォークスから離れていった。名残惜しむかのように伸ばされたままの手の先にウォークスの姿はすでになく、代わりにキリムの首の根元ほどのところに彼は現れる。
「全員の連携攻撃が終わる瞬間に意識を向けすぎて、まさか反撃に転じた直後を狙っている別口がいたとは思いもよらなかったと見えるな!」
 本来、他のドラゴンシーカーたちに向けて放たれるはずだった首の一撃が、ウォークスただひとりに向けて振るわれた。
 夫の危機に、佳宵は悲鳴を――上げることはない。何故ならウォークスが腕ずくで自分とキリムの間に割りこませた神盾が、夫を守ると信じていたからだ。
 アイギスがキリムさえはね返すのは、先程ジェノが実演してみせたとおり。加えて――佳宵の手の中には一本の魔槍。再び同じ盾に身じろいだキリムに追いうちをかけるかのごとく、槍は五つ又の雷となって彼を灼く!
「今だ……! サンゴに巣食う害虫め!!」
 のけ反ったキリム。力のかぎり彼へとめり込ませた盾をウォークスは手放して、背から新たに剣を抜く。それは彼の巨躯からすればほんのちっぽけな武器にすぎぬが……それでも両腕の膂力に任せて幾度も叩きつければ、剣は獲物の魔力を吸って、容易く今弾きとばしたばかりの首を胴体から切りはなし……。
「……ぐぅ! 流石の俺でも無理が祟ったか!」
 膝をついたウォークスの傍に……そっと佳宵が身を寄せた。再び夫が動けるようになるまでの間くらいなら、鎧と防御術式で耐えられるだろう。
 ……そんな妻を、立ちあがったウォークスはお姫様抱っこにし……さあ、一目散に戦線離脱だ!

 こちらは一旦退いてやる。が……はて? お前の敵は俺たちだけだったかな?
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