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扇舞

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扇舞
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 フェイトスターアカデミー。
 校舎にある稽古場にて、「扇舞」の顔合わせも兼ねた台本読みが行われようとしていた。
 全員の顔が見えるよう長机を合わせ、各自台本や筆記具などを広げる。

「これで全員なのか……?」

 壱星は白い箱を手に、演者たちの顔を眺める。

「あっ、えっと、頼斗君は校長先生に挨拶しに行ってるから少し遅れるって!」

「そうなんだな。差し入れに饅頭を持ってきた。よかったら皆で食べてくれ」

「壱星君、ありがとねぇ。では早速」

「麦茶を用意しますね」

 手を伸ばす幸人に、風華が席を立つ。
 樽助と風も彼女に続いて立ち、お茶汲みを手伝う。

「それにしても15人か……少なすぎないか?」

 貫の懸念に幸人は饅頭を頬張りながら説明する。

「他の役者さんたちは、もう稽古に入ってるそうだよ」

「それならいいが」

「俺たちって忙しいよねぇ。ここ以外の世界にも足を運んだりするからさ。こういうのはどうしても遅れるよね」

「確かに。……ん、これ美味い」

「麦茶、失礼しますね」

「あぁ、すまない」

 風華がグラスに入った麦茶を置いてくれる。

「それにしても珍しいですね。華乱葦原の海について触れられているのは」

「確か真蛇から話を聞いた舞芸者によれば、華乱葦原に海は存在するが、桜稜郭からだと小旅行程度では行けない距離らしい」

「そうなのですね……」

「せっかくだから、頼斗君が来るまで軽く自己紹介でもしておこっか。顔見知り程度の人もいるだろうし!」

 幸人はパイプ椅子から立ち上がる。

「というわけで最初は言い出しっぺの俺から! 演出兼地の文担当、紫月 幸人でっす! 観客を煽ってがんがん盛り上げて行くので、よろしくね!」

「地の文……? 地の文ってどれですか?」

 風は台本を凝視する。

「↑(これ)だよ。これ! ↑(この)部分を俺が喋るんだよ、風ちゃん……!」

「えぇ~私も語り部やりたかったですよう」

「風ちゃんもちょっとだけやるでしょ! 一幕の部分」

「まぁ、昔話語りですけどね。あ、巫役の示翠 風です。一幕にも出ますが、メインは終幕の方です。よろしくですよ」

「巫の御側兼舞芸者役の在(ある)を演じるカガミ・クアールです。演じるメインの幕は一幕ですが、他の幕も登場する予定です。よろしくお願いいたします」

「巫の御側の空(くう)を演じるカガミ・クアールです~。メインは終幕ですが、他の幕にも顔を出すみたいです~。よろしくお願いしますね~。ちなみに~空が姉で~在は妹です~」

「過去に扇島を襲撃した祟咬を演じる御霊 史華よ。一幕登場だけど、彼女はゲンの義母でもあるから三幕にも登場するわ。よろしくね」

「その祟咬ゲン役が俺、行坂 貫だ。祟咬でも扱えない謎の瘴気に侵されている友人のために扇島の扇を奪いに行くことになってる。メインは三幕だが、ゲンが異国に住んでるのと義母から扇の話を知って動く関係で一幕にも出る。よろしく頼む」

「義理の母親役にしては美人すぎない?」

 幸人がちらりと史華に目をやると、樽助が彼女をガードするように身体を傾ける。

「姫を下心ある目で見ないでくれるか」

「長谷部。自己紹介」

「失礼しました。扇者の紫扇(しせん)をやる長谷部 樽助だ。一幕で登場する姫との殺陣がメインだが、台本に目を通したところ、二幕や三幕にも出番があるようだ。世話になる」

「同じく扇者の要(かなめ)をやるダヴィデ・ダウナーだ。主に登場するのは二幕だが、少しばかり他の幕にも登場する予定だね。良き舞台になってくれたら嬉しいよ」

「舞芸者の織星をやる火屋守 壱星だ。二幕で要の試練を受けるのが主で、他の幕にも出ることになってるぜ。役者は初めての経験だが、足を運んでくれた観客が楽しめる舞台にしたいと思ってるからよろしくな!」

「悪の舞芸者をやる星川 潤也だ。役名はなくて、祟咬からの刺客として他の舞芸者たちと一緒に行動する。第二幕の終わりから戦闘を仕掛けるぞ。あ、でも祟咬と戦う前に改心して共闘する流れになるから、そこは安心してくれ」

「潤也さんは剣客なのですね……私と良い戦いが出来そうです。申し遅れました。舞芸者役の白森 涼姫と申します。主に三幕出演になりますので、どうかよろしくお願いします」

「涼姫の役も扇は使わないんだな」

 潤也が三幕部分のページを開きながら呟く。

「はい。扇の持つ力を分け与えるともありますので、剣に力を宿す方向で」

「なるほどな。良い演技にしようぜ」

「もちろんです」

「行っておくが、俺も剣は使う。白森、もしかするとアースサミットのときのようになるかもしれない」

 貫の言葉に涼姫はフッと笑う。

「なるほど。本番が楽しみです」

「自己紹介を続けてもいいんだわさ?」

「ああ、ミラ。どうぞ」

「巫役のミラ・ヴァンスだわさ。あたしは一幕を主に演じるけど、演出の手伝いもできたらいいなと思ってるだわさ。よろしくだわさ」

「同じく巫役の風華・S・エルデノヴァと申します。私が演じる扇華(せんか)は見習い巫で、主に終幕で舞を披露いたします。見習いである彼女が、皆様を見届けて成長する……その過程を観客の方々にお届けできたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします」

 頭を深々と下げる風華の隣で、風が項垂れるシンの腕を軽く叩く。

「ほら、シンさん。名前が載ってる以上、腹括ってくださいよぅ」

「くそ、後で覚えてろよ。旅する舞芸者役、飛鷹 シンだ。裏方で手伝うはずだったんだが、なぜか終幕で旅立ちの音色を奏でることになってる。他の幕は演出とか軽いセリフ言うくらいだからよろしく頼む」

「あれ? 役名は言わないんですか?」

「台本見ればわかるだろ……」

「久留或(くるある)……でしょうか?」

 風華が首を傾げていると、風がにやにやしながら答える。

「惜しいです、風華さん。それ、クルーアルって読むんですよ」

 幸人は麦茶を噴き、潤也は台本から顔を上げる。

クルーアルってあの、クルーアル君?

はい、あのクルーアルさんです

お前たち仲良しだもんな!

そこはちょっと首を傾げる

「まぁ、頑張ってね、久留或君!」

「別の依頼で会ったときは覚えてろよ……」

「わぁ、強制的にハッピーエンドにされちゃう!」

 シン、風、幸人、潤也の共通話題に他の演者たちは戸惑う。

「クルーアルって誰だ?」

 貫の質問に、風が口を開いた。

「存在だけで周囲を混沌に変えてしまう人物です。名前を口にすると、トラブルに巻き込まれてしまうんですよ」

「呪ひ言みたいだな……祓うか?」

「まじ頼む」

「それにしても台本読んでみると、樽助君とか途中で史華ちゃんを姫って言っちゃいそう」

「そこは役と割り切るから問題ない」

「もし口にしそうになったら、何か技を叩き込むから多分大丈夫よ」

「事故を起こさない程度にお願いします、姫」

「頼斗君も熱くなったら、“行くぞ、相棒!”とか言い出しそうだしなぁ」

「相棒が何だって?」

 肩を組むように首に腕を回され、幸人は視線を上げる。
 頼斗はニッと笑いながら、そのまま自己紹介を始めた。

「遅れて悪い。海を越えてやってきた異国の舞芸者、絢爛蒼華役の水城 頼斗だ。こういう舞台は何度も経験してるけど、邪魔にならない程度に頑張らせてもらうぜ。よろしくな! で、社長。相棒が何だって?」

「相棒君は来るのかなって……」

「当たり前だろ。良い席取るって言ってたぞ」

「相変わらず仲良いねぇ。俺もキョウちゃん呼びたいなー」

「あいつ忙しそうだから難しいだろ」

「シン君のケイちゃんも同じでしょ。あ、でもクルーアル君来るからいっか!」

「良くねぇ! てか、あいつローランドだろうが! 特異者じゃねぇんだから絶対ありえねぇって」

「とか言ってー、ケイさんと一緒に来ちゃったり……」

「何でケイと来るんだよ!? あの野郎何考えてやがんだ!」

「昼ドラみたいな修羅場に「なってたまるか!!」

(俺も鍔姫に来てもらいたいなんて……)

(二階堂先輩、誘ったら来てくれるかな……?)

(彼にもチケット渡してみようかしら)

 潤也と壱星、史華はシンたちのやりとりを眺めながら想い人を浮かべる。
 その話に触発されて、貫も風華に話を振る。

「そっちは来るのか?」

「まだ誘ってなくて……貫さんは?」

「俺もだ。チケットは確保したが、まだ渡してなくてな」

「真蛇お兄様も誘ったら来てくれるでしょうか……?」

「どうだろうな」

 二人は互いのパートナーに挟まれて席に座る彼を想像する。

(ん、待てよ? 悪華鳳凰、がしゃ髑髏、狩衣でやるんだぞ。もし真蛇が来たら、これ恥ずかしいやつなんじゃないか!?)

(そういえば、終幕は私一人で舞を披露するのでしたね……! お二人の姿を探さないようにしませんと……! もし見つけてしまったら、緊張して固まってしまいます……!)

 風華は顔を赤らめながら目を回し、貫は机に肘をつきながら顔を伏せて耳を赤くする。

「二人とも~台本読み、始めるよ?」

 幸人の声に二人は我に返り、慌てて台本を広げる。
 その日から約一ヶ月ちょっとで本番を迎える彼ら。
 最高のステージを魅せるべく、稽古に励む。

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