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【テスタメント】”天秤”の論理

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【テスタメント】”天秤”の論理
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アークエネミー


 世界の敵たることを目指す勢力、”アークエネミー”は、武装組織”レナトゥス”の援助を得て活動していたが、自らも増援を呼び、勢力を拡大していた。
「援軍を紹介するよ。柊 恭也くんと、焔生 たまちゃんだ。どちらも一騎当千のサクセサーだから、君達には心強い助けとなることは確実だねぇ」
 紫月 幸人に紹介された恭也は凶暴な表情で周囲に強い殺気を発し、たまは対照的に婉然とした表情を浮かべている。
「……紫月のやつに応援を頼まれてやって来たが、また入り乱れた世界だな」
 恭也としては、ポラニア、フリートラント両国の戦争のみならず、その背後で動く秘密結社”レナトゥス”や、世界律の崩壊を止め修復する人工神格レーゲルにも興味がある。状況次第では、他勢力に傭兵として鞍替えすることもやぶさかでない。
 一方、たまは落ち着いた口調で物騒なことを言う。
「実は私、生身の方が強いんですよ。中身は本物の悪魔なものでしてね」
 そしてクスクスと笑ってみせる。たまとしては、”アークエネミー”が世界の敵として振る舞う事に強い興味を持つと共に、そこで魔王の如き振る舞いを見せられる事を楽しみにしていた。
「――なるほど。その実力の程、実戦で見せてもらおう」
 武装組織”レナトゥス”の指揮官、ジャンゴ・モントーヤ大佐はふたりの放つ殺気と妖気に当てられたか、ややたじろいで応えた。
「俺はムカつく奴を殺せればそれでいいが、お前はどうだ?」
 恭也がたまに問うと。
「金銭や権力には興味ありません。美女とお酒があればどんな仕事でも引き受けましょう。まぁ最後まで付き合うとは限りませんがね」
 たまは妖艶な笑みを浮かべながら答えた。
「どちらの要求も善処する。まずは焔生さん、貴方の要求を叶えようじゃないか」
 そうジャンゴが告げると、薄着の年頃の娘達数名ほどが連れられて来る。どの娘も見目麗しく、よりどりみどりと言う所だが。
「じゃあ、この子達全部を頂きます」
 たまは平然とそう言ってのけた。
「! ――貴重な巫女候補なのだがな、仕方あるまい」
 ジャンゴはたまに娘たちを引き渡す。怯えた表情を浮かべた娘達に、たまは優しく微笑み告げる。
「天国と地獄を一緒に見せてあげますよ」
 そしてたまと娘達は別室へと歩み去る。残された恭也は憮然としてジャンゴに問うた。
「で? どこのどいつを殺れば良いんだ。俺とたまはポラニア軍を殺る積りだが」
「それで良いだろう。丁度ポラニアは新鋭機の量産体制が整って攻勢に出ている所だ。歯ごたえのある敵が現れる可能性がある。だが、紫月くんの言うように君達が一騎当千なら、何の問題もないはずだ」
「俺の力を疑うのか? 何ならここでお前相手に見せても良いぞ」
 突っかかる恭也を、幸人が抑える。
「まあまあキョウちゃん、喧嘩腰にならないで欲しいなぁ。彼にも彼なりの事情があるみたいだしさ」
 そして幸人はジャンゴに向き直る。
「そっちにも事情があるのは判るけどさ、まどろっこしいのは俺達みんな大嫌いなんでねぇ。戦闘後に、色々聞かせてもらうよ? 腹芸は好きじゃないんだ、素直な所を聞かせてくれよ」
「――判った。君達とは引き続き良好な関係を結びたい。そうしよう」
 ジャンゴが頷くと、幸人は晴れやかな声で歌うように告げた。
「じゃあ、パーティの始まりとしますかぁ!」



 ポラニア北部方面軍前線基地。フリートラント軍を押し返すべく、精鋭が多く集結しつつあるこの基地に、警報が響き渡った。
「未確認のエアロシップ艦隊接近! 総員出撃準備!」
 地下のバンカーから新鋭機”フサリアL”が次々と地上へと展開し陣形を組む。”フサリアL”はヴェクトロニクスの更新により高機動性を維持しつつピーキーさを減少させた機体で、ポラニア連合王国軍の次期主力機として期待されている機種だ。
 それと同時に、併設されている飛行場からエアロシップと戦闘機が発進し、未確認のエアロシップ艦隊に向けて接近する。
 しかし。
 基地の地上防衛力の要である指揮官機がいきなり激光を照射され消滅し、地上部隊が大混乱に陥ると共に、エアロシップ艦隊は金色の、赤い光を引いて飛ぶメックによって直上を取られ、いきなり逆落としで旗艦の艦橋をヘビーアサルトライフルで撃ち抜かれてやはり大混乱に陥る。
「ケッ、この程度で大混乱か、たかが知れてるな」
 指揮官機をインフェリアミスリルガンの超威力で抹殺した恭也はメック”プギオSU【C
】のコクピットで”憮然と呟き。
「可愛い物ですね。まるで私が可愛がってあげたあの娘達みたいです」
 専用メック”G.E.ベルペオル”のコクピットでたまは婉然と微笑む。心なしか、その肌艶は娘達と出会う前より良くなっているようだ。
「だが――」
「ですが――」
「容赦はしない(しません)」
 ふたりの声が重なると、次の瞬間ふたりの猛攻撃が始まった。
「オラオラオラァ! どうしたそれでも新鋭機かァ! ぼやぼやしてると全員ブチ殺しちまうぞ!」
 パワードデザートパックのダッシュローラーで敵陣内に突撃した恭也は、インフェリアミスリルガン2挺を巧みに操り、瞬く間に”フサリアL”や基地内のトーチカや砲塔などの重火点を文字通り消滅させていく。勿論、混乱しているとは言え散発的な反撃はあるが、それをMEC制動とディレイアヴォイドで難なく躱し、敵陣形をずたずたに切り裂くのみならず、基地機能を破壊して行く恭也の姿は、まさにポラニア軍からは悍ましい殺気を放つ悪鬼の様に見えた。
 一方たまはと言えば、エアロシップ艦隊の対空砲火と戦闘機の群れの攻撃を先読みで掻い潜り、赤い光を引きながら”G.E.ベルペオル”を自在に操り、鈍重なエアロシップの急所である艦橋やエンジンブロックを、マークスマンドクトリンで正確に狙撃し沈めていく。彼女の後に残るのは、ただ爆炎のみだけだ。
「他愛もないですね……ですが敵の数が存外多かったのは、予想外れでしたけれども期待通りです。悪魔の姿、大いに見せつける事が出来るのですからね」
 たまはその様に嘯き、ヘビーアサルトライフルを連射し続けた。
 そして程なく、ポラニア軍は壊滅した。
「随分とあっけないじゃないか、雑魚が」
 吐き捨てるように恭也が呟く。
「虎かと思ったら、可愛い子猫ちゃんでしたね」
 澄まし顔でたまは応えた。
 とは言え、この基地に配属されていた部隊は、将来の反攻の為終結していた精鋭のはずだった。何の事はない。ふたりの悪鬼の方が、唯人たるポラニア軍の実力を遥かに超えていたと言うべきであろう。
 そして、ふたりは基地要員に宣告する。
「こちらは”アークエネミー”実働部隊”アークデーモン”。基地内の生存者は速やかに屋外退避する事を推奨致します」
「警告は一度だ。死にたくなけりゃさっさと失せろ」
 艶やかなたまの声に続き、凶気を帯びた恭也の声が響く。ポラニア軍の基地人員は急いで脱出する。それを見届けた後、恭也は空になった基地の指揮所や倉庫やバンカーをインフェリアミスリルガンで念入りに破壊して行く。
「手伝いますよ」
 たまも空中からヘビーアサルトライフルを連射し、目につく標的を次々と破壊して行く。
 そして、死屍累々の廃墟となった基地をサーチし、敵対勢力の消滅を確認したふたりは、”レナトゥス”のライトキャリアー級エアロシップへと撤収し、その場を去った。
「次はもっと歯応えのある敵と戦わせろ。弱すぎてムカついたから皆殺しにしたぞ」
「そうですね。”アークエネミー”に魔物ありと、示すにふさわしい敵を頂きたいですね」
 ふたりがその様に言うのに対し、モニター上のジャンゴはやや青褪めた表情で頷いた。もっとも、恭也の方はムカつかなくても皆殺しにしただろうし、たまは謝礼の分だけ働いたに過ぎない。それを知れば、ジャンゴはより深く戦慄したであろう。
 幸いにも、”アークエネミー”とその2機の”アークデーモン”の活躍は生存者の報告から知れ渡り、ポラニア連合王国軍野戦ヘトマンであるアレクサンドラ・フィグネル大将の眼にも止まった。
「捨て置けはしないな。だが、彼らの兵站ネットワークは既に解明された。後は基地を叩くだけだ」
 アレクサンドラは呟いたが、特異者それぞれの自由奔放さと個体戦力としての強さに、何度目かの強い関心を抱かざるを得なかった。



 同じ頃、幸人はうそぶいていた。
「さぁて、グロムが両国の目を引いてる今のうちにこちらも動かせてもらおうか」
 彼と壬生 春虎は、ジャンゴ率いるライトキャリアー級エアロシップ”スヴェリエ”に乗艦し、フリートラント北部方面軍の前線基地へと向かっていた。随伴するは川上 一夫の乗艦であるコルベット級エアロシップ”しらなみ”である。行人と一夫は軍事結社”レナトゥス”の保有する最先端無人機”デモン”の性能テストを兼ね、この作戦を実施したのだ。
「今回は”デモン”をメインに使って見るから、ハルくんはそんなに気張らなくても大丈夫だと想うよぉ。死なない程度に頑張ってね。まぁ俺も出るけど」
「何だ? 俺はいつでも真剣だ。この程度で死ぬつもりはないぞ」
 春虎の応えに幸人は満足し、まずはマイクを取ってフリートラント軍の前線基地へと避難勧告を行った。
「こちらは”アークエネミー”、これよりそちらを攻撃する。橋頭堡が無くなれば少しは考える時間も出来るだろう。逃げるなら追いはしない。抵抗するなら討つ。さて、どうする?」
 答えは敵部隊の出撃だった。幸人は肩をすくめ。
「じゃあ使用不能になるまで破壊しよう」
 と告げると、”デモン”4個小隊と春虎の”プギオSU【C】”を出撃させ、そして幸人自身は”トムキャット改”で出撃した。
 一夫は”デモン”に索敵を行わせる。デモンのネットワーク索敵能力は強力で、瞬く間に戦場周辺の地形図と戦力展開図が正確に作り上げられていく。
 それを利用し、デモンは有機的連携を保って基地を包囲。そして基地内に、春虎はタッチダウンした。着地の衝撃を全力噴射とデザートパワードパックの駆動で散らし、勢いよく基地内を破壊して行く。春虎に背後を突かれた形のフリートラント軍は若干混乱するが、正面の”デモン”に応戦するので手一杯だ。
「おや。これまでのブリキ缶じゃない新型だねぇ、何故こんな辺境の基地まで出回ってるのかなぁ」
 のんびりとした口調で、戦線後方から戦況を眺めつつ、”デモン”の戦いぶりを観察する幸人。”デモン”は敵の新型――”トリメンデス”のビームバズーカを受けても傾斜装甲と対ビームコーティングでいなし、高度な連携を見せて【小隊陣形】をいくつか使いこなし、レールガンで”トリメンデス”の正面装甲を撃ち抜いていく。
 しかし、彼等も全く無力でない。”デモン”のレールガンをサイコフォーキャストで避け、近接戦に持ち込み高速振動ブレードをブレイドダンスで叩き込み、デモンを撃破していく。”デモン”もまた高速振動ブレードを抜き、ブレイドダンスを演じてみせるが、サイコフォーキャストで見躱した後、返す刀でデモンを撃破する。
「これはかなり高レベルのトランスヒューマンだねぇ。だったら出るかぁ」
 幸人は”トムキャット改”を前進させ、”デモン”に白兵戦を挑む”トリメンデス”を、試製換装パーツ『オールラウンダーS』に装備されたアダマンチウムビームアサルトライフルで連射する。しかし、相手の対ビームコーティングと重装甲に阻まれ、連射した所で完全撃破には至らない。
「だったらビームコーティングが剥げるまで攻撃するだけかなぁ」
 幸人はここでニューロエイジマッシャーを用い、自身をニューロエイジの域に一時的に高める。そこからのアダマンチウムビームアサルトライフルの連射で”トリメンデス”を1機倒すと、新たな敵の登場にフリートラント軍は【小隊陣形】スパミングでビームバズーカを打ち込んでくるが、幸人はデモンを盾にして回避し、その影から別の”トリメンデス”を更に1機撃破する。
「アークエネミーを舐めてもらっては困るんだよねぇ。俺達は世界の敵なんだからさ」
 幸人は笑いながら更に戦場を機動し、数機の”トリメンデス”を撃破した。これにより、前線のバランスは”アークエネミー”有利に傾き、フリートラント軍は損害を出しながら基地の方向へと撤収して行く。
 だが、そこには春虎が待っていた。
 基地機能を大きな抵抗を受けつつもほとんど破壊した春虎は、逃げ延びてくるフリートラント軍の”トリメンデス”に”プギオSU【C】”で突進し、敵の集中攻撃をディレイアヴォイドで回避し、基地内の遮蔽物を利用しながらヘビーアサルトライフルをリフレクトショットで跳弾させてまずは1機の”トリメンデス”を撃破した。その要領で2機、3機と戦果を積み上げていく春虎だが、心中には闘いの炎と別の炎が宿っていた。
「両軍共に自由に考え、動き、願える、そんな世界を望んでいるはずだろう? 同じ想いなのに何故争う! その想いが結実するまで”アークエネミー”はお前等の敵であり続けるぜ!」
 国際共用回線で相手に想いをぶつけるが、返ってくるのは沈黙のみ。語る舌を持たないのか、それともトランスヒューマン故の自意識のなさか――いずれにせよ、やる事はひとつだった。
「今だ! 司令部を狙え!」
 春虎が”デモン”に号令を発すると、残る”デモン”全機が司令部施設にレールガンを連射した。たちまち司令塔は崩れ、地下の指揮所はその落下に耐えられず陥没する。
 そして、司令部を失った”トリメンデス”搭乗のトランスヒューマン達はこれまでの統制が嘘の様に混乱し、”デモン”に掃討されて行く。
 国際共用回線に響く断末魔の悲鳴のオーケストラは、春虎にとって虫酸が走る物だった。
 戦況が完全に”アークエネミー”側に傾いたことにより、一夫は広域通信妨害を行い、”デモン”の混乱振りを見る。しかし”デモン”はそれぞれに知能を持った生命体のように動き、独自の判断で敵勢力を撃破して行く。流石にネットワーク戦闘ほどの統率は取れていないが、独自判断での戦闘力も一定確保していることを確認した一夫は、満足して広域通信妨害を停止した。
 かくして、幸人のほぼ想う通り――そして春虎には不本意かもしれないが――敵基地と敵戦力の8割以上の撃破に成功した”アークエネミー”は、前線からの撤収を開始した。



「で、説明をして欲しいんだけど、”レナトゥス”は何を狙って俺達を引き込んだのかなぁ」
 幸人は基地近くまで帰投した後、”しらなみ”の艦橋にジャンゴを呼び、詰問していた。そこには恭也やたま、春虎達メックパイロットの他、操艦をしている艦長の一夫もいる。
「それは――」
 ジャンゴが口を開きかけた所で、ふと顔色を変える。
「歩哨の”デモン”からの連絡がない」
 すわ、敵かと逸り立つ彼等のもとに、巨大な極光が浴びせられた。
 直後、”しらなみ”は大きく揺れ、艦橋内でも爆発が発生し、そして墜落していく。
「何だぁこれは!」
「敵の伏兵ですね」
「こんな所で……」
「駄目です、墜落します。皆さん、安全を確保して下さい」
 それぞれの言葉が交錯する中、”しらなみ”は森林地帯へと墜落して行った。



 攻撃を行ったのはアイン・ハートビーツだった。アインは”レナトゥス”のポラニア側基地を発見したアデリーヌの援軍要請を受け、歩哨の”デモン”2機を排除した後、基地にマインレイヤーで機雷を散布し、着陸不能の状態にしていた。ジャンゴが”歩哨のデモンからの反応がない”と言ったのはこれが原因である。
 煙を吹いて墜落していく”しらなみ”を見ても、アインには特段の感慨はない。自身の標的であるテロリスト達のうちコルベット級が1隻沈んだと言う事実だけが、彼女の認識だ。それはトランスヒューマンを極めた、完璧に調律された脳と機械仕掛けの体がもたらした境地だ。1個の役目を果たす機械として、アインは完成されていた。
 そして。
 戦闘態勢に入った”レナトゥス”の艦隊を、アインは1隻、また1隻とインフェリアミスリルガンで撃沈していく。もとより小型艦や軽装甲艦による軽快艦隊だった”レナトゥス”艦隊は、インフェリアミスリルガンの超大火力により次々と墜落していく。
 しかし。
「”デモン”が射出されたのですよ。ここいらが退き時なのですよー」
 アデリーヌの”FFキュベレー”が複数の”デモン”が残る艦隊からカタパルト射出された事を探知する。
「了解。退却するよ。キミから先に脱出して」
 アインはやはり無感動な声で応え、自身の”プギオTH【C】”を殿とし、アデリーヌの逃走を援護した。空から降下してくる”デモン”にインフェリアミスリルガンを打ち込み、爆散させ、あるいは墜落させるが、連射能力に劣る為全ての”デモン”を撃破出来ない。
 だが、攻撃により降下地点を逸らす事は出来た。そこに生まれた間隙に、アインの脱出の道は開かれた。
 アインは散発的なデモンの長距離射撃をサイコフォーキャストで避けながら、アデリーヌの退却路を伝って退却した。
 この攻撃により、”レナトゥス”はポラニア側における重要な拠点を失った。ポラニア国境内での”レナトゥス”の活動はこれから先、非常に限られた物になる事は確実だった。



 墜落したかに想われた”しらなみ”は、補機を用いてかろうじて軟着陸していた。一夫は冷や汗に塗れながら、同乗していた幸人とジャンゴの無事を確認する。
「いやぁ、帰投先を狙われるとはねぇ」
 幸人達”アークエネミー”の方は無事だったが、ジャンゴは一目に判る致命傷を負っていた。口から血をこぼしつつ、幸人に何かを伝えようとする。
「死ぬ間際に言って置く事がある……俺達”レナトゥス”はお前たち”アークエネミー”を……利用していた」
「どういう風の吹き回しかなぁ? 本音をさらけ出すなんて。それに利用し合ってるのはお互い様でょ?」
 幸人の問いに、最後の力を振り絞ってジャンゴは応える。
「何、俺みたいに使い潰される駒になるのも……嫌だろうと想ってな……」
「で、俺達をどう利用したんだって?」
「……両国が疲弊すれば、それだけ破滅が近づく……滅びの宿命を再生の喜びとする為……破滅を早めるのが我々の使命だ……”アークエネミー”はその為の駒だったんだよ……」
「オーケー、ジャンゴ。聞きたいことは聞いた」
 幸人は冷たく言い放つ。滅びを早めようとする陰謀結社に、利用されていた事に怒りを禁じ得ない。だがジャンゴは、事切れる前に最後の情報を残した。それは”レナトゥス”のフリートラント側拠点の位置だった。これをどう利用するかは、幸人の――いや”アークエネミー”の前途を左右する物だった。

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