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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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ノー・キラーVS<10>


 銀の聖剣と黒の大剣が互いの斬撃を弾き合う。
 攻めの姿勢を取るノー・キラーに、遥はレガリス流剣術をベースに防御の構えを取りながら剣を受け流していく。
 少しでも威力が弱まるのを感じ取れれば、防御から即座に反撃。
 その反撃に彼女は大剣を盾にするように受けて躱す。
 従剣はノー・キラーの気を逸らせながら、使い手と彼女の動きを観察。
 上半身と下半身に分かれ、ルートクロースでノー・キラーの動きに制限をかける。
 上半身では剣筋をブレさせ、振り幅を狭く。
 下半身では足さばきを中心に、切っ先を容赦なく滑り込ませていく。
 次々と生まれる隙に遥は斬撃を連続で繰り出すが、結界が聖剣を通さない。

(聖剣の力を解放して……)

「うっとおしいわね!」

 従剣を振り払うべく、巻き起こるキルストームに遥は攻撃を捨てた鉄壁の守りに入る。
 従剣はその魔風に巻き込まれながら、回転斬りを防ぐが、魔風が止んだと同時に吹き飛ばされた。
 ここぞとばかりに遥に高速の斬撃を叩きつけるノー・キラーだが、攻撃を通さない徹底した守りに苦戦を強いられる。
 遥1人でノー・キラーを押さえている間、突如起こった魔風を目印に冒険者たちが駆けつけようとしていた。

(槍の起爆だけで終わっちまったからな。俺が挑むとするなら……槍の貫通力で勝負か?)

 垂はこれまでの流れを整理していると、ブリジットが並走する。

「さっきは悪かったな。こっちから誘っておいて全く上手くやれなくてさ」

「何言ってんの。それよりいつでも戦闘に移れるよう準備しときなさいよ」

「だな」

 視線を戻す垂にブリジットは口に出さないが、感謝していた。
 屋敷にある本を確保するために特化した装備にも関わらず、自分を選んでくれたことに。
 無意識に尻尾を立て左右にゆらゆら揺らしているとは知らない彼女の後ろにいるシン・カイファは、半分諦めたような顔で続く。

(話を聞く限り、オレたちがまともに向かっていったら死ぬな)

「シン、諦めてません?」

 マルチェロに心を見透かされたような気がして、顔が引きつる。

「そんなことないさ。オレたちにだってやれることはあるはずだぜ」

「結界は魔力を乱せば弱体化くらいはできそうなので、ジャスティンを軸にシンが体を張って、私が治療に回るくらいがいいかもしれませんね」

「また体張るのかよ……」

「シン、あんまり1人でやるとか考えない方がいいぞ。俺たち以外にも仲間はいるんだからな」

 その後ろでは潤也が少し顔を伏せながら薄く眉間にしわを寄せていた。

「アリーチェ、機装で挑むとしたらどれくらい有効打を与えられると思う?」

「そうね……あくまで想像でしかないけど、結界を破るか右腕に格納された武器を使用不能にするか、あるいは右腕を潰すくらいはできると思うわ。けど……」

「けど?」

「コアの強度や組まれている機導式によるわね」

「どの機導式が組まれているかによるよな……」

 冒険者全員、魔風が発生した地点に到着すると聖剣の力を解放した遥とノー・キラーが鍔迫り合っていた。
 両者、1つの傷もない状態で、もう何度目かわからない攻防を繰り返している。
 すると、ノー・キラーの視線が遥の背後に立つ冒険者たちを捉えた。
 彼女は聖剣を強く弾き、遥たちを跳び越えて、彼らの背後につく。

「染まる武器全て揃ったのね……」

 ノー・キラーの目が染まる武器を持つ者たちに向けられる。
 1つ1つ、武器の形をなぞるように焼き付けながら、彼女は眉間に深く深くしわを寄せた。

「はぁ……イライラする。あなたたちが私の作った武器で戦うなんて……」

 呼吸荒く声を震わせながら、彼女は続ける。

「許さない……! 私の大事な物を穢す者は全て消えろ!!」

 ノー・キラーの声が、全ての染まる武器に傷を付け、強制的に元の姿に戻す。
 これでクルーアルの作戦は成功となるが、冒険者たちは撤退しない。

「クルーアルの体はどこだ? 持ってきているんだろ?」

 飛鷹の問いに、ノー・キラーは左手を石畳にかざした。
 すると、大きいトランクが1つ彼女の手に握られる。
 それの鍵を開け、右手でクルーアルのシャツの襟を掴んで、見せつけるように持ち上げた。

「これ、返してほしい?」

 飛鷹が口を開こうとした瞬間、彼女は魔法でクルーアルの体を消す。

「まだだめよ。とっておきのタイミングで返してあげるから」

「お前たち、いつまで作戦に時間をかけている」

 クルーアルが上空から駆けつけ、冒険者たちの前に着地する。
 彼の登場にノー・キラーは感嘆のため息とともにうっとりとした表情を浮かべた。

「ふふふ、これでようやく話ができるわね。ダイア、前に出てきなさい」

 突然指名されて、ダイアは困惑しながら助けを求めるように視線を彷徨わせる。

「ダイア、私以外にもう1人剣を向けなきゃいけない相手がいると教えたでしょう。教えてあげるから出てきなさい」

「ダイア、行け」

 正義に背中を押され、ダイアは前に出る。
 彼の前には後ろ姿のクルーアルと、赤い唇が嫌に目立つノー・キラー。
 話を切り出さない彼らに、ダイアが口を開く。

「俺が剣を向けなきゃいけないのは誰なんだ」

 ノー・キラーは答えない。
 まるで誰かが話を切り出すのを待っているようだ。
 その誰かはダイアに背中を向けたまま、ずっと前を見据えている。
 頑なに口を開かない人物に、早歩きで近づき、見下ろす。

「いつまで黙(だんま)りしているつもり? 早く話してあげなさい」

「……」

「ああ、もうしょうがないわねっ!」

 半分苛立ちながらノー・キラーはクルーアルを石畳に押し倒してうつ伏せにし、前髪を強く掴んで見上げさせる。

「ほら、ちゃんとダイアの顔を見なさい!」

 クルーアルは黙ってダイアの顔を見て、申し訳なさそうに目をそらす。

「そっくりね、リアンに。まるで彼の生き写しだわ。聴いて、ダイア。あなたのお父さんを殺したのはクルーアルよ」

「え……?」

「それにあなたのお母さんが私に狙われていると知りながら、見殺しにしたのも彼よ」

 そのとき、暗かった空に橙の光が差す。
 ダイアの成長術が解け、元の姿に戻る。

「ほんと、なのか……?」

 クルーアルは黙ってゆっくり頷いた。

「ダイアに謝りなさい。頭を擦りつけて、申し訳ございませんでしたって!」

「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ……!」

 額を思いっ切り叩きつけられ謝罪を強要されるクルーアルに、ダイアは恐怖で何も言うことができない。

「大体、彼に謝罪をしてから、私を倒すのが正当なやり方でしょう? なのに自分の罪に背を向けて私との戦いに逃げてどうするのよ。私とこの子への冒涜に値するわ! ……さぁ、ダイア。剣を取って」

 ノー・キラーはクルーアルの肉体をダイアの前に置く。

「クルーアルの心臓にお父さんの剣を刺しなさい。そうすれば、あなたのお父さんとお母さんも喜ぶわ」

(ダイア、絶対剣を取っちゃダメよ。これもノー・キラーの策略だわ)

 アリーチェは口を出さず、事の成り行きを見守るとともに染まる武器のネックレスを調べていたときのことを思い出す。
 あのとき、ネックレスはリアンから贈られた大切な物だとダイアは話していた。

(クルーアルは多分それを知ってて、手を出せなかったんじゃないかしら。知らなかったら、こんなことにはなってないと思うけど……難しいわね)

 そう考えているうちに、ダイアが動いた。
 彼は剣を取らず、ただ首を横に振ったのだ。

「できねぇ。オレはこんなことしたくて、剣を取ったんじゃない!」

「じゃあ、何のために剣を取ったの? どうしてここにいるの?」

「う、それは……」

 顔を伏せ、ズボンをぎゅっと握る少年に、ノー・キラーは溜息をついた。

「ごめんなさいね。難しいことを要求してしまったわ」

 ノー・キラーはクルーアルの体を引きずり、自分の隣に投げ捨てた。
 精神姿のクルーアルはうつ伏せのまま、泣きながら小声でずっと「ごめんなさい」と呟いている。
 飛鷹はこれまでの話をまとめ、前に出ようと冒険者たちをかき分けて進む。

(何となくだ。何となくではあるが……2人を救う道筋が見えた気がする。まずはノー・キラー。仲間を弟に殺され、その場にいてやれなかったことをずっと後悔している。復讐と思い出に囚われ、今日まで生きてきた。クルーアルも自分がやったことに自責の念を持ちながら俺たちをここまで導いてきた。俺ができるのは……)

 ダイアの隣に立ち、ノー・キラーを見据えると彼女は唇で赤い弧を描く。

「何か言いたいことがあるようね、雑魚くん。いえ……飛鷹シンくん」

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