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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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ノー・キラーVS<8>


 ノー・キラーは焔子と戦っていた位置からさらに奥へと移動していた。
 怜磨、春奈、ソルフェが到着する前に、ルドラが先制攻撃を仕掛け、ノー・キラーを足止め。
 振るわれる鞭を抑え、3人が到着した直後に春奈に繋いだ。
 春奈は早速手に入った赤いロングコートと橙色の軽鎧で1セットの明星の燈装を身に、ノー・キラーに斬りかかる。
 彼女は鞭で弾き、右手を大剣に変更して次の斬撃を受け止めた。
 引き寄せる、体勢を崩すなどの引力剣に加わった炎は、反撥の盾にも与えられている。
 この能力は明星の燈装によって付与されたものだ。
 また、この鎧を身につけたことで火の精霊魔法であるブレイズブレスが働き、筋力と魔法の威力が高められている。
 だが、戦意の腕輪との相性が悪く、腕輪はメジェールの屋敷に置いてきた。
 それでもノー・キラーとの戦いに支障はない。
 自分に合った間合いで戦う春奈に、ノー・キラーも合わせてくる。
 熱波や炎の斬撃を大剣で受け流しながら、反撃を春奈の鎧に与える。
 その瞬間、熱波が襲い、思わず目を見開いた。
 春奈はそのタイミングを逃さず、重く速い斬撃を彼女の体に叩き込む。
 結界が1枚割れたと同時にすばやく後退するノー・キラー。
 橙色の刀身の力が及ばない距離を取った刹那、怜磨のディヴィジョンショットが彼女を襲う。
 着弾とともに耳をつんざくような音がノー・キラーの中で響く。
 顔を歪ませながら、大剣から銃に持ち替えての発砲に怜磨は脚に力を入れて勢いよく回避。
 ルドラが間に入り、ナイフを振るって四肢を妨害。
 怜磨がデュアルバーストを撃ち、結界をまた1枚破った。
 不快な音が体内で鳴っているノー・キラーはそれが消えるまで回避と防御メインで立ち回る。
 銃から大剣に戻してグレートウォールで身を守り、春奈はレガリス流剣術で粘り強く隙作りに徹する。

(このままじゃ埒が明かないわね)

 ノー・キラーは3人の攻勢に、大剣を持ったまま高く跳び上がった。

「行かせるかよ!」

 怜磨が暴風の術式を弾に刻んで、嵐を巻き起こす。
 止んで周囲を見渡せば、ノー・キラーの姿がない。

「くそっ、どこ行きやがった!」

 ルドラが魔力を探る。

「こっちだ」

 指したのは右方向。
 その場にいる冒険者たちは、ルドラ先導のもと走って向かう。

◆ ◆ ◆


「風、状況はどうなっている?」

「あー……ノー・キラーさん、見失いました」

「嘘だろ」

 避難で住人不在の家の屋根に座っていた飛鷹は立ち上がり、月明かり照る景色を俯瞰。
 ヒューマンの視力だと限界があるが、彼の視界で何かしらの異変は起こっていない。
 クルーアルも気がかりだが、ケエちゃんによれば染まる武器の修理が完了してすぐ魔装の魔法をかけ、一室に鍵をかけて籠もりっきりらしい。
 遥も千咲も彼が魔装の礎になるのを反対していたが、彼の意思は固く、遺言くらい叶えてくれと無理やり施したそうだ。
 隣に立つマンティスに手を置く。
 マンティスは撫でてと言わんばかりに、その手に擦り寄った。

「お前のご主人様は大変だな」

 染まる武器の靴を託したいと言っていたリインの話を思い返す。
 あのときはもう既に捕まっていて、魔装の話が出ていたとすると、相当辛かったはずだ。

(俺がもっと早く気付いていれば、こんなことには)

「リーダー失格だよな……」

「そんなことありません」

 風がぴしゃりと否定する。

「最終的にクルーアルさんは助けを求めてきました。それに……いてくれるだけで救われるってこともあると思うんですよねぇ」

 にやにやする風に、飛鷹は眉根を寄せる。
 そのとき、マンティスが振り返った。

「グルルルルル……」

 威嚇する仕草に2人も振り向いた直後、飛鷹が反対側の建物へ吹き飛ばされる。

「シンさん!」

 風はマンティスの背に乗り、提琴を構えて心を掴む演奏を奏でる。

(相手はノー・キラーさんです。先に弾いて効果をできるだけ引き出します!)

 マンティスとともに吹き飛ばされた建物に向かう風。
 一方で飛鷹は2階建ての宿の一室で、壁やベッド、家具を足場にノー・キラーと武器を交える。
 大剣から鞭に替え、左手に短剣を握る彼女も壁を駆け、鞭を振り、飛鷹を叩き落とそうとする。
 互いの武器が触れた瞬間、両者同時に弾き合い、床を滑って後退。
 いつでも駆け出せるように体勢を低くし、睨み合う。

「最初に会ったときより、雰囲気変わったわね」

「ちったぁ強くなってるように見えてるといいんだがなっ!」

 グラウダートを投げて動きを鈍らせるのを試みるが、彼女を包む結界が弾く。

(刺さりもしねぇ。だったらこれはどうだ)

 向かってくる彼女に、飛鷹は肩の力を抜き、緩急つけた動きで迫る。
 再びグラウダートを撒き、認識がわずかに逸れたのを狙って黒緋の短剣を振った。
 刃同士がぶつかる音が響く。
 飛鷹渾身のファジーフロウは封じられた。

(これも無理か……だが、これでわかったことがある)

「奥義は私に通じないわよ」

「だったら俺にも通じねぇよなっ!」

 刃を弾き、再び両者部屋を駆け回る。
 風はマンティスとともに穴が大きく開いた部屋の前に到着。
 近接戦闘を繰り広げるノー・キラーと飛鷹の傍で、ミラージュ・レヴューを続けているが……

(効いている気配がしませんね……強固な精神を持っているということですか。まぁ、あんだけ人殺しておいて強固な精神を持ってないのはおかしな話なんですが)

「マンティスさん、もっと近づいてください!」

「マンティス、ですって?」

 ノー・キラーは飛鷹の刃を防御したのを最後に、攻撃を止めた。

「あなたたち、その魔獣がもたらす災いを知っていて連れてきているの?」

「俺はこいつの毒が魔族にも効くことと、好きな物が生肉と猫じゃらししか知らねぇ」

「マンティスが現れたら、遭遇した人物かその関係者が必ず死ぬと言われているわ。人喰い魔獣と呼ばれている故にね。誰が死ぬのかしら?」

「誰も死なせねぇ。例え、マンティスがそう言われているとしてもそうさせねぇよ」

 リインが人喰い魔獣と知っていて受け入れているなら、人を食べないように何かしらの処置はしてあるはずと飛鷹は信じる。

「まぁ、頑張って抗いなさいな」

 それだけ告げ、超高速の回転斬りとともに風を起こす。
 魔風が止めば、壁に血が飛び散り、飛鷹が仰向けになって倒れていた。

「シンさん……!」

 風がマンティスの背から部屋に跳び込む。

「死ぬのは、彼だったかしら?」

「あなたの望む結末はここにありません」

 背中に巨大な翼を具現した風は飛鷹を抱えた刹那、弾けるように翼を消す。
 瞬時に部屋に開いた大きな穴から飛鷹とともに身を投げ、マンティスが2人を受け止める。

「ソルフェさんたちと急いで合流してください!」

 飛鷹を治療すべくその場から一旦離脱する。

「あらあら。うふふ……」

 ノー・キラーは彼らを追わず、己が開けた穴から飛び降りる。
 降りた先には正義とダイアが立っていた。

「いたぞ、正義!」

「行くぞ、ダイア!」

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