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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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ノー・キラーVS<6>


 優とシュヴァリエがノー・キラーの相手をする中、クロノスが到着した。
 息を切らして顔を上げれば、黒いドレスを着る女の背中の雰囲気に顔を強ばらせる。

(見ただけで闇に呑み込まれそう……魔王、じゃないよね?)

 ノー・キラーは上級魔人だ。
 これまでイスレロやミリアに接触してきたクロノスだが、彼女は話しかけただけで殺されそうな気がする。

(と、とにかく援護……! 援護しなきゃ……!)

 剣を抜き、精霊魔法で加速して背中から仕掛ける。
 その瞬間、ノー・キラーの鋭い後目が飛ぶ。

(っ……!)

 そのまなざしに身がすくみ、足が止まる。
 ノー・キラーは体を右に回してクロノスに向きを変え、一瞬で距離を詰めてきた。

「こんばんは。こんなところで何してるのかしら?」

 声が出ず、震えているとノー・キラーは同じ質問を繰り返す。

「こんばんは。こんなところで何をしているの?」

(そ、そうだ……クルーアルの肉体を取り戻すんだった。最初は大事な武器壊しちゃったどうしようって思ってたけど、壊したことで消えそうな命を救える可能性が出てきたんだ。ここで震えてる場合じゃない!)

 クロノスは巻き込んでいた唇を開いた。

「ク、クルーアルの体、返して!」

「えぇ~どうしようかしら」

「返してくれないなら、返すって言ってくれるまで戦うよ!」

 剣を構える彼女に、ノー・キラーはにっこり笑う。

「いいわよ。私から1本取れたら返しましょう」

「ほんと? 絶対だよ!」

 そのやりとりを聴いていたシュヴァリエと優は警戒の表情を見せる。

「まずいですわね。完全に遊ばれてますわ」

「おそらくクロノスさんの実力を測ろうとしているのでしょう」

「3人で連携するしかありませんわね」

 シュヴァリエが向かおうとしたそのとき、2人の剣が交わった。

「どうします? 優」

「まずくなったら割り込みます。それまでは待機です」

 一方、ノー・キラーと剣を交えるクロノスは軽快に黒の大剣を弾いていた。
 風の刃を当て、高速の斬撃に繋げようとするが、攻撃は受け流される。

(まだまだ! 隙があるからそこ中心に攻めれば!)

 わざと作られた隙に斬撃を叩き込んでいくクロノス。
 剣同士がぶつかった感触はそこまで重くなく、実力差もあまりないだろうと感じていた。
 クロノスは跳び上がり、精霊剣の突風を頭上から放つ。
 その風に乗るように高速の五連斬りがノー・キラーを襲う。
 1回目の斬撃は防御されたが、2回目以降の斬撃は彼女の全身を走り、結界を1枚破った。

(やった……! 最初以外全部当たった。あとは剣を弾)

 そのとき、視界が大きくぶれ、石畳に仰向けに投げ出される。

(へ……?)

 何が起こったのかわからなかった。
 旅装にあったはずの防御結界が破れていること以外は。

「シュヴィ!」

 あまりにも一瞬の出来事に優とシュヴァリエの反応が遅れる。
 2人がクロノスのもとに急ぐ最中、ノー・キラーは彼女に近づく。

「ごめんなさいね。私、あなたを甘く見ていたみたい」

 斧で薪を割るかのように、ノー・キラーは大剣を両手で握りしめて掲げる。

(に、逃げなきゃ……!)

 駆け出そうと上半身を起こした瞬間、振り下ろされる剣。
 クロノスが目をつぶったそのときだった。

「うおおおおおおおおおおおおお!! オータスシェルタァァァァァァァァ!!」

 アキラが鮮やかにスライディングして、彼女を包むように結界を張る。
 振り下ろされる刃は何とか回避。
 アキラの後ろに続いて、ルシェイメアがノー・キラーの懐に入って連続ラッシュで引きつける。

「アキラさん!」

 結界が解かれ、優とシュヴァリエがクロノスの隣につく。

「優、シュヴィ、クロノス! ここは俺たちに任せて避難誘導を頼む!」

「わかりました……! クロノスさん立てますか?」

「立てるよ。ありがとう」

 クロノスは優の手を取って立ち上がる。

「ノー・キラーは自分の利益しか考えていない魔人です。約束は基本守らないと思った方がいいですよ」

「それに遊ばれていましたわ。実力を探るために」

「そうなの!? うぅ……気をつけなきゃだね」

「早く教えたかったのですが……すみません」

「あ、謝らないで! 身をもって知れたから気にしてないよ」

「ありがとうございます」

「優、急ぎますわよ。避難誘導も大事な仕事ですわ」

 3人はその場から離脱する。
 見送ったアキラはノー・キラーとルシェイメアの戦闘を注視していた。
 実をいうと、彼の魔力はヒーリングブレス1回分しか残っていない。
 その原因はノー・キラーを迎え撃つ準備にあった。
 正義が「形成」で染まる武器を整えたあと、エスに呼ばれたアキラはハディックの治療を頼まれた。
 リインがクルーアルから逃げているので捕まらないとエスから聞いた彼は快く引き受けるが、多すぎる銃痕に魔力を全部持っていかれてしまったのだ。
 もちろん回復するアイテムは持っており、それも使って治療を続けたが、終わったときには魔力はあまり残っていなかった。
 事情を聴いたルシェイメアは「ここぞのときだけにしか使わない」「自分やワシには絶対使わない」と決め、ここに立っている。

(オータスシェルターでだいぶ持ってかれたからな。見極めが大事だぞ)

 アキラが真剣な顔で見守る中、ルシェイメアはノー・キラーの動きを予知してラッシュで隙を作る。

(紫電の闘気で痺れるかと思ったが、全然じゃな。それにしても、素手でも戦えるのか)

 ノー・キラーは大剣を右腕に格納し、モンクの戦闘スタイルで挑んでいる。
 拳を構えながら、両手のパンチをメインに足技も混ぜてくる。
 ドレスやピンピールであるにも関わらず、全く無駄のない動きは発勁の技術によって叶えられている。
 最初はドレスの裾やピンヒールが引っかかってくれないかななんて期待していたが、それは望めなさそうだ。
 流れを変えようと、ルシェイメアは不動穿砕の準備を整える。
 わざと隙を作り、懐に彼女をおびき寄せた瞬間、力が籠った拳を腹部へ放つ。
 結界がまた1枚割れたのを感じたノー・キラーは目にもとまらぬ速さで彼女の足元を崩して体勢を乱し、右手でルシェイメアと同じ技を返した。

「かふっ……!」

「ルーシェ!」

 予知で急所は免れたが、左脇腹に抉られたような痛みがある。
 とどめを刺そうと今度は足で攻撃を加えるノー・キラーに銀鎖を投げようとするアキラ。
 そこに一発の弾丸がノー・キラーの脚を撃った。
 また結界が1枚破れ、彼女の顔が歪む。

(だ、誰だ……?)

 アキラは弾が飛んできた左方向を見た。
 そこには誰もいないが、少し離れた先に私叫とフィリアが潜んでいた。

「当たったの」

「よ、よかったー……。ルーシェちゃん、危なかったから」

「もう一発、ぶっぱなしてみるの」

 私叫はファラウェイを刻んだもう一丁のトラッカーガンを構え、二度目のデュアルバースト。
 これも彼女の右脇腹に命中し、2枚目の結界を破ることに成功した。
 二発の弾丸にノー・キラーはぴくりとも動かない。

(まずいかもしれない……)

「アイスくん、どうしたの?」

 フィリアが声をかけた直後、私叫は銃を捨て翼を広げてフィリアの前に立つ。
 その直後、二発分の弾丸を胸の中心に受けた。
 ゆっくりうずくまる私叫に、フィリアは血の気が一気に引く。

「はっ……はっ……(どうしようどうしようどうしよう、アイスくんが……!)」

 呼吸を乱しながら、パニックに陥るフィリア。
 魔力を遮断していたはずなのに、なぜ位置を知られたのか。
 答えはすぐにわかった。

(もしかして、私のせい……?)

 フィリアは魔力を遮断する道具を持っていない。
 となると、弾道とフィリアの魔力を感知して位置を特定してきたことになる。
 その事実にフィリアはぽろぽろと涙をこぼした。
 それを慰めるように、私叫は手を重ねる。
 フィリアはハッとして、彼を抱っこした。

(は、はやく誰かに治してもらわなきゃ……!)

 フィリアと私叫はノー・キラーの銃撃を受けないようその場から離れる。
 その頃、アキラとルシェイメアは起こった事実に動けないでいた。
 右腕から銃を取り出し、私叫がいる位置に発砲するまでわずか数秒。
 アキラも鎖を投げて引き止めようとしたが、遅かった。
 彼の第六感が訴えている。
 誰かがあの銃に撃たれたと。

(ルーシェをひとりにするわけには……!)

 でも約束がある。
 ここぞのときに魔力を使え。
 自分とルシェイメアには絶対使うな。
 アキラが葛藤に震えていると、背中を押す声がした。

「アキラ……ワシを置いていけ。忘れたのか、約束を」

「忘れてなどいない!」

「だったら行け。今撃たれた者を助けられるのは、貴様しかおらん」

「ルーシェを助けられるのも、今は俺だけだ!」

「わからんやつめ! さっさと行けと言っておるのじゃ! 貴様は邪魔なんじゃよ!!」

「っ……!」

 言葉の真意を察したアキラは、2人に背を向けて走る。

(すまん、すまん、ルーシェ……! 早く治療してまた戻ってくるからな)

 溢れる涙を拭いながら、アキラは弾丸が飛んだ方向に急ぐ。
 ノー・キラーは追い打ちをせず、右手でルシェイメアの首を掴んで持ち上げた。

「撃たんでよいのか。また歯向かってくるぞ」

「撃ったら邪魔するでしょう?」

「ははは……そうじゃな。もちろんじゃ」

 ぐっと締め付けられ、ルシェイメアは手首を掴んで抵抗。足も大きく蹴り上げる。

「苦しいわね。苦しいわね。彼が帰ってきたら、綺麗な死体になるのよ」

 ルシェイメアはその言葉にニッと笑った。

「何がおかしいの?」

 締め付けが強くなる。
 言葉は発せないが、彼女は最後まであがく。

(綺麗な死体になるのは貴様の方じゃ)

 そのとき、パキパキと凍結が始まった音がする。
 ノー・キラーが下を見た瞬間、足が氷に覆われていた。
 逃れようと脚に力を入れる彼女だが、凍結の速度が速い。

「まさか……!」

 気絶しないように抵抗するルシェイメア。
 彼女が使ったのはアイシング。
 大気中の熱量を操作し、目標物を凍結させるスキルだ。

「おのれええええええええええええええ!!」

 ノー・キラーはルシェイメアを掴んだまま、氷に包まれた。

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