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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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ノー・キラーVS<3>


「バリオス! もっと早くです!」

 スレイは幸人に追いつくべく、愛馬に発破をかける。

(最後に遭遇したのは調査のときでしたね……あのときは複数で挑んでも油断できませんでした。恐れ知らずの双銃士と呼ばれる彼なら心配不要かもしれませんが……早く駆けつけるのに越したことはありません……!)

 逸る気持ちを抑えていると人影が見えてきて、スレイはバリオスを止めた。
 その人影がノー・キラーだと瞬時に認識したとき、彼女の足下で倒れている人物に目が行った。

「幸人さん……!」

「あら、少し遅かったわね」

 ノー・キラーは右手に大盾、左手に槍を握る。

「なぜ、ダレストリスに」

「挨拶に決まってるじゃない。私は準備を完璧に整えた。準備したら討つべき相手のもとに向かうのは当然でしょう」

(ノー・キラーさんの今の状態を100とするなら、こっちは90といったところでしょうか……。魔力狩りや冤罪対処で時間を取られてしまっていますからね……)

「良い馬ね。乗馬が好きなの?」

「騎士の嗜みです」

「嗜みね……。私も乗馬できるのよ」

 そう言った瞬間、ドレスが舞い上がる。
 その中から黒い霧が発生し、何かを形成する。
 しばらくすると、彼女は真っ黒な霧を纏った赤目の馬に乗っていた。

(騎乗戦ですか……バリオス、頼りにしてますよ)

「さぁ、どちらが深く嗜んでいるか勝負よ!」

 馬を走らせ、槍の突きで先制するノー・キラー。
 スレイは大盾で受け止め、即座に強烈な一撃で返す。
 シールドカウンターに腕ごと後ろに持って行かれ、彼女に大きな隙ができる。

「バリオス!」

 勢いをつけて音速の突きを繰り出すと、大盾で上半身を守られてしまった。
 槍の穂先から伝わる衝撃と硬さに、スレイの眉根はわずかに寄る。

(バリオスとの一撃が通らないですね……ですが、諦めません!)

 仲間が来るまで、ここで足止めする。
 メンバーの中で自分が2番目に到着したのだから、それくらいの役目は果たさなければ。

(その馬から降りてもらいますよ!)

 彼女の突きに槍を正面に構えて勢いよく回転させて押していく。
 ノー・キラーはその回転に槍を滑り込ませて勢いを殺しにかかる。
 切っ先同士が押し合い、弾き合い、隙を見出しては突きを繰り出す。
 大盾で凌ぎ、ときに貫かれそうになるが、顔を傾けて回避。
 すぐに攻めに転じて、槍を薙ぐ。

(バリオスが果敢に前に出てくれています。私も応えなければ……!)

 愛馬が出るタイミングに合わせてソニックジョストで彼女を後退させていく。
 だが、ノー・キラーも大盾のカウンターで返し、最初のような大きな隙は見せてくれない。

「そんなに攻めると、恐れ知らずの双銃士に穂先が当たるわよ」

「くっ……!」

 うつ伏せになっている幸人に穂先を突きつけるノー・キラー。
 浅葱色の旅装束に穂先がわずかに触れている。

「だから、私がわざわざ向かってきてあげたじゃない」

 黒い霧を纏った赤目の馬を前進させ、ここぞとばかりに槍で断とうとする。
 スレイは防戦に回るが、仲間をダシにされてブレる彼ではなかった。

「触れるのであれば、触れさせないように戦うだけです。幸人さんには近づけさせません!」

 バリオスが再び前に出た瞬間、棹立ちする黒霧の馬にバリオスも前脚を上げる。
 両馬、互いの胸を蹴り、同時に後退した。
 2人の騎手は相棒を落ち着かせ、態勢を整えて再び槍と大盾を交える。
 幾度目かの武器の衝突に互いは弾き返す。
 スレイは気絶している幸人を庇うように立ち回り、ノー・キラーのサイドを狙う。

(正面突破だと盾か槍のどちらかに必ず防がれます。脇腹付近かつ防御の薄そうな左側を)

 左手には槍が握られている。
 頑強な大盾より、攻撃を当てていくチャンスは多いと見たのだ。

(行きます!)

 バリオスを走らせ、ソニックジョストを何度も繰り出すスレイにノー・キラーは正確に弾いていく。
 スレイは必ず突破口があるはずと信じ、何度も突きと薙ぎで攻めるが、彼女は自身の肉体にスレイの穂先が触れるのを一切許さない。

「足下、気をつけなさいよ」

 ノー・キラーがそう警告した瞬間、バリオスが軽く滑る。
 彼女はそれを見逃さず、大盾によるアバランチをバリオスの頭に容赦なく打つ。
 装甲を身につけた愛馬はふらついて、勢いよく倒れた。

「バリオス……!」

 スレイは落馬寸前に受け身を取って無事だった。
 愛馬に触れたとき、つま先に何か当たり、手探りでそれに触れてみる。

(実弾……! バリオスはこれに足を取られたのですね……)

「スレイちゃん、危ない……!」

 ユエの声にハッとした瞬間、槍がスレイを貫こうとしていた。
 大盾を取ろうとした刹那、炎を纏った巨大な鎖がノー・キラーの左腕に巻き付く。

「思い通りにはさせないわよっ……!」

 空を飛びながら鎖を引くユエだが、表情は眉をひそめている。
 ノー・キラーが引っ張っているからだ。

(このままだとユエがやられる……!)

 スレイは槍を取り、再びソニックジョストをノー・キラーの腹部へ。
 しかし、穂先は身体まで届かず、バチバチと音を立てる。
 ノー・キラーはスレイの攻撃に目もくれず、さらに力を込めてユエを引き寄せる。

「くぅ……!」

「ユエ、耐えてください!」

 スレイは角度を変えて気を向かせようとするが、それでも彼女の視線はユエに向けられている。
 するとノー・キラーは一旦鎖を引く腕を緩めた。
 隙だと判断したユエが引き上げるが、急に強い力でさらに引っ張られる。

「きゃっ……!」

 ノー・キラーの前に引っ張られた彼女は首の後ろに強い衝撃を受け、そのまま気絶。
 大盾が仕舞われた右手で鎖を解いた。

「ユエ……!」

 黒霧纏う馬の足下に倒れるユエに、スレイの刺突がノー・キラーを穿とうとする。

「うぐっ……!」

 しかし、その刺突は届かず、スレイの腹部は槍に貫かれていた。
 ノー・キラーは魔力でできた馬を消し、引き抜こうとするが、スレイはその槍を掴む。

「離しませんよ……!」

 屈強な肉体で槍を引き込んでいく。深く刺さるのも覚悟の上だ。

「あなた、わかってるの? 今、自分の内臓を私の槍で切っているのよ」

「わかって、ます……! だから、せめて、この槍だけは……!」

 ノー・キラーはにやりと笑うと、スレイの内臓を斬るように槍を引く。
 引けば血が傷口から溢れ、痛みで前屈するスレイ。
 それを楽しむように何度も何度も繰り返す。
 スレイは意識が飛びそうになりながらも、その手は離さなかった。
 そのとき、グラウンドバレットの性質を持った水属性の5匹の魚がノー・キラーを襲う。
 彼女は槍を引く手を止め、魚が来た方角を射貫くように見つめた。

(魔力を感知できない……そのまま潜んでいるか移動しているか、どっちなのかしらね)

 ノー・キラーが槍を魔法で消すと、スレイはその場に崩れるように倒れる。
 一方、スクールオブフィッシュを放ったリコは住宅街の一室に身を潜めていた。
 2階建ての空き家の窓辺にドレットノート・ライトを接地しているが、スコープ越しにノー・キラーと目が合った瞬間、身の毛がよだつ。

(うわ……一発で場所バレ……てはないかな)

 ノー・キラーはリコのいる方角を眺めたあと、そのまま通りへ進んでいく。

(どうしようかな。このままここで撃つか、撃つたびに場所を変えるか……)

 このまま撃つと射線を読んだ上で位置を特定されるかもしれない。
 移動すればそれは免れるが、援護の回数が減る。
 だが、その間にドレッドノート・ライトの冷却ができ、次の射撃に支障は出ない。

(……移動しよう。スクールオブフィッシュで追尾できるし、相手の位置さえ把握していれば、どの位置でも問題ないよね。それに……)

 もう一度、スコープを覗く。
 ノー・キラーの行く先にはイルファンとアリシアが向かっている。

(相棒と親友と仲間がいる。自分ばかり抱えちゃだめだよね。わたしができることをやろう)

 リコはドレッドノート・ライトを片付け、身を隠せそうな場所へ移動する。
 同じ頃、イルファンとアリシアはノー・キラーと対峙していた。

「あら、超獣殺しの白騎士じゃない。久しぶりね。強くなった?」

「それをこれから示す。“超獣殺しの白騎士”イルファン・ドラグナ――推して、参る!」

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