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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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社交ダンス~第4部~


 ダンスを終えたフィリアに、サンフラワー色のタキシードを着た私叫はオレンジジュースが入ったグラスを差し出す。

「アイスくん、ありがとう!」

 ふぅ……と軽く息を吐いて、オレンジジュースを飲む彼女のドレスの裾を軽く引っ張った。

「どうしたの?」

「一緒に、踊ってくれる?」

 青いうるうるおめめで訴える私叫。
 彼曰くフィリアさん大好きビームだ。
 まともにくらったフィリアは目を手で覆う。
 効果抜群のようだ。
 フィリアはお酒を一気飲みするかのようにオレンジジュースを飲み干し、口元を拭う。

「踊ろう!!」

 私叫とフィリアは両手を繋ぎながら、人とぶつからない場所で演奏に合わせて回る。
 その頃、臙脂色のタキシードを着たダイアは会場の隅で1人、ダンスを眺めていた。

「こんなところにいた」

「げっ、まおー」

 遥がグラス片手にダイアに近寄る。

「人類の天敵たるヤツの退治を頑張ったご褒美をもらいにきたわ」

「約束してねぇ」

「今したわ」

「りふじん。それにしても……」

 ダイアは遥の着るドレスを頭からつま先まで眺める。
 髪はまとめず、レース素材の七分袖白ドレスを着る彼女に首を傾げた。

「何よ」

「そういう恰好見たことねぇから、違和感」

「わたしだって、ドレスとか水着くらい着るわよ。そういうダイアだって貴族みたいで違和感だわ」

「多分、こういう場でしか着ねえと思う」

「まぁ、持ってて損はないわね。それよりほら」

 遥は手を差し出す。

「え」

「ダンスよ、ダンス! いっぱい練習したんでしょう?」

「したけど……」

 遥は差し出した手でダイアを強引に引っ張り、ホールの中央に連れて行く。
 腰に手を当て、手を握り、遥からステップを踏んだ。

「ほら、これなら鍛錬とモフモフ以外のこともしてるって言えるわよね」

「そうだな」

 ステップがだんだん合ってくる。
 お互いに回った瞬間、遥は容赦なくダイアの尻尾を両手でわし掴んだ。

「おいっ!」

「ふっふっふっ……モフモフ」

 企んだ顔で揉むようにモフる遥。
 ダイアは溜息をついた。

「結局モフモフしてんじゃねぇか! これじゃいつもと変わんねぇ!」

「そんな生意気言っちゃう子はもっとモフモフしちゃうわよー!」

「うわっ、くすぐってぇって!」

 尻尾を追いかけ回す遥と追い回されるダイアの様子に、演奏を終えたアリヤと秋良は微笑む。

「ちょっとは元気が出てきたか?」

「だといいですね」

「アリヤ、秋良」

 そこにヤクモが合流する。

「演奏お疲れさま」

「ヤクモもサクラお疲れさまです」

「せっかくのダンスパーティーなんだ。こっち側で楽しんだらどうだ?」

「そうですね。そうします」

 3人はカジュアルな演奏にステップを踏んで、招待者としての時間を楽しむ。
 遥とダイア、秋良とヤクモとアリヤが踊る様子を鐵の双璧はテーブル席に座り、肘をつきながら微笑ましそうに眺める。
 テーブルには小分けに取った料理と、チェリージュースの瓶が並ぶ。

「みんな元気なー」

「そうだな……俺たちには、そんな気力も残っていないからな」

「いやマジで……何か疲れたな」

 千羽矢はチェリージュースを相棒のグラスに注いだあと、自分のグラスに注いで軽く持つ。

「……今日は。本当にお疲れ様、相棒」

「相棒こそお疲れ」

 頼斗は相棒のグラスに自分のグラスを掲げる。
 グラスの鳴る音に2人苦笑いしながら、ジュースを口に運んだ。

◆ ◆ ◆


 アラビア風の真っ赤なドレスを着たユエは皿に数種類の料理を乗せていた。
 肉、魚介、サラダと小さいマグカップで用意されているコンソメスープに、デザートはパンナコッタ。
 どれも会場の警備で立ちっぱなしのスレイのことを考えて取ったものだ。
 立ってでも食べやすく、短時間で食事を済ませられる。

(スレイちゃんはワタシがいないとすぐ仕事人間になっちゃうんだから)

 料理を取り終わり、ホットコーヒーも追加してユエはスレイのもとに行く。

「スレイちゃん」

「ユエ」

「食事を持ってきたわ。食べずにずっと警備は厳しいわよ」

「ありがとうございます。では、ポークチョップをもらいます」

 スレイは槍を壁に立てかけ、ハーブ香るポークチョップを手に取る。

「それにしても、皆さん本当に楽しそうです」

「スレイちゃんも混ざればよかったのに」

「いえ、こういう場には1人くらい警戒する者がいた方がいいです。魔力狩りがあった後ですし」

「そうね……」

「スレイさん、ユエさん」

 声をかけられた方に顔を向けると、春奈、怜磨、ルドラ、クロノスの姿。
 皆、グラス片手に2人に近づく。

「皆さん、ダンスはしないんですか?」

「私はダンスに自信なくて……」

「俺は美味いもん目当て」

「俺は見学と食事のみだ」

「ボクも同じだよ」

「あれ……ソルフェさんと千咲さんはどうしました?」

「あぁ、あの2人ならあそこに」

 春奈が視線をやった先では、千咲とソルフェがダイアに声をかけていた。

「ダイア、その衣装よく似合ってるわ!」

「千咲も緑のドレス似合ってるぞ」

「ダイアさんダイアさん」

「ソルフェ、どうした? 左のほっぺ真っ赤だぞ」

「聞かないでください……それよりお願いがあります。後でおにぎりごちそうするので、10秒間だけモフらせてください。癒しが、癒しが必要なんです……マジで」

「お、おぅ……」

 あまりにも深刻な顔をするソルフェに、ダイアは尻尾を差し出す。
 ソルフェは彼の尻尾を赤くなっていない頬で頬ずりしながら、両手で遥お手製の感触を堪能する。
 彼女の様子にスレイとユエは大変だったんだと察した。

「そういえば、クロノスさんも右の頬が赤いですね。何かあったんですか?」

 瞳に影が差してすんとするクロノス。

「聞いてくれる?」

 頷くしかない空気に、スレイはメガネを整える。

「聞きましょう」

「Gがさ……ボクの頬にさ……触角を当ててきたんだよ……!」

「あぁ、それは汚いですね……」

「お風呂に入ってすっごいゴシゴシしたんだ頬を! 皮が剥けるくらいにね!」

「私はリインさんに危うく殺されかけまして……ダーティベイトを撒いたせいでかなり疑われました。何とかごまかしましたけど」

 2人、今日あったことを思い返して「はぁ」と重い溜息をついた。
 彼らの間を漂う空気に、春奈は違う話を振ってみる。

「スレイさんは踊らないんですか?」

「ダンスは勉強中で見せられたもんじゃないですからね……」

「でもここで練習しておいた方がいいかもしれませんよ? エーデルさんとこういう場に出向くこともあるかもしれませんし」

「確かに……。私の行動で彼女に恥を掻かせてしまうのは申し訳ないですし……」

「俺たちの中だとソルフェが唯一経験ありそうだが……あの調子だしな」

 千咲に背中を撫でられるソルフェ。
 相当参ってしまっている彼女に、千咲は今度ご飯でも奢ろうと思いながら慰める。

「ルドラさん、お気遣いありがとうございます。今回はパーティーの空気と他の方の立ち振る舞いを見て勉強することにします」

「おい、何か始まってるぞ」

 怜磨の声に視線をダンスホール中央に向けると、礼服を着崩した者たちによるストリートダンス対決が行われていた。
 最初の重厚な空気はどこへやらで、適当にチームを作ってダンスを交互に披露している。
 その中には垂も混じっていて、出番になるとブレイクダンスを見せつける。
 口笛と拍手に応えるように、足を大きく広げながら背中と肩で回ってみせた。
 見学する冒険者たちは社交場でありながら親しみを感じる雰囲気に身を委ね、会話と食事を楽しんだ。

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