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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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社交ダンス~第2部~


 遊び心がありながら品の良さを感じさせるスーツに身を包んだシン・カイファは壁際で1人、静かにワインを飲んでいた。
 視線の先には人族に化け、胸元と背中が開いたスリット入りのふんわりしたサンフラワー色のドレスを着たフィリア。
 普段は髪を下ろしている彼女だが、ここでは髪を1つに束ねて内側に編み込んだアップヘア。
 その編み込みから小さい黄色の花飾りが咲き誇る。

(これはオレへのご褒美か?)

 天井を仰ぐシン・カイファ。
 この様子をジャスティンとマルチェロが見ていたら、ジャスティンには軽く笑われ、マルチェロには自分のタイミングで行くことを許されないかもしれない。
 だが、今日はシン・カイファだけ。
 笑われることはないし、タイミングは自分で決められる。

(……よし)

 意を決し、次の曲に入る前にフィリアに近づく。

「……フィリア」

「シン。どう? 楽しんでる?」

 フィリアはこの空気に慣れてきたのか、手には皿が握られている。
 皿にある料理は緊張しすぎて、その名を忘れてしまった。

「あぁ、楽しんでる。そっちは?」

「ご飯美味しいねぇ~」

「すっかり楽しんでるな」

 こりゃ踊る気は全くなさそうだと感じたシン・カイファ。
 でもここで引くわけにはいかない。
 早くしないと曲が終わる。

「フィリア。オレと1曲踊らないか?」

 フィリアはきょとんとした顔をすると、給仕を呼ぶ。

(う、オレ何かまずいことでもしたか?)

 不安になるシン・カイファをよそに、フィリアは使っていた食器を給仕に渡す。
 給仕が下がると、フィリアはシン・カイファの手首を掴んだ。

「行こ! 音楽始まるよ!」

 心を掴む音楽が流れ、シン・カイファは慌ててフィリアの腰に手を添える。
 ドレスが回り舞う中、フィリアをリードし、彼女との呼吸を合わせにいく。

「この曲、さっきよりテンポ速いね。別の曲にする?」

「いや、これでいい。これがいいんだ」

 さっきのようなゆったりしたリズムだと、変な緊張に支配されてしまう。
 しばらく無言で彼女とダンスを楽しみ、落ちついてきたところで話を振った。

「昨日のやりとりとかで、クルーアルやリインについて気付いたことはあるか?」

「うーん……リインくんはいっつもクルーアルくんのこと見てるよね! 気に掛けるような……そんな感じ。クルーアルくんはその視線に気付いてないかもしれないけど」

「そうか……」

「シンはときどき私に意見を聞いてくれるよね」

「嫌か?」

「ううん。むしろ嬉しいよ。私、結構頭弱い方だからこんなのでも参考になるのかな~って思っちゃうときがあるんだ」

「最初はいろいろ言ってただろ。それに種族ごとに物事の見方も違うだろうし。身近にいる魔族はフィリアとフィルしかいねぇんだ。だから、あんまり卑下すんなよ」

「うん、ありがとう。今はみんなの頭脳に任せっきりだから、そこまで思い悩んでないんだけどね!」

「ならいいが。最初でふと思ったが、どうだ? ここまでの旅の感想は?」

「胸痛める出来事もあるけど、とっても楽しいよ! 遠くに出かけるのはすごく久しぶりだし!」

「へぇ……いつからあの洞窟を出てないんだ?」

「も、もう覚えてないよ」

 フィリアの表情から戸惑いが窺える。
 シン・カイファは見つめたあと、ぶつかりそうな背中をさっとリードした。

(こりゃ、何かあるな。あんまり詮索しない方が良さそうだ。それに……心をもっと開いてくれてから聞いてみたい)

「シン?」

 考え込んでいたのが顔に出てたのか、慌てて表情を柔らかくする。

「悪い。ちょっと他の人にぶつかりそうだった」

「あ、ごめんね。ありがとう」

「そういや、監視者を付けられて他の魔族と距離を置いて暮らしていたのは何でだ?」

「おじいちゃん(カーム)がついたのはシンたちが教会に報告したからだよ」

「そうなのか!?」

「一応私たち上級だし。それに孤児院で仕事できているのもシンたちのおかげ」

「あの洞窟で出会ったから、こうなったってわけか……」

 2人が話している最中、ダンスホールの外では灰色のスーツ姿のアキラがあぐらをかいて座り、大皿に集めた料理をフォークでかきこんでいた。
 ちなみに今食べたのは、ミートソーススパゲティで、口の周りにはソースがべったりついている。
 アキラはきらびやかに輝く女性たちを目に、今度はエビに食らいつく。

(くっ、あのおねーさんのドレス、大胆に動いたらパンツ見えるんじゃないか!? いや、それともこっちから全力で見に行くべきか?)

 エビ1本食べ終えたあと皿を置き、全力で伏せるアキラ。
 スリットからのぞくであろうパンツはまだ見えそうにない。

(もう少し、もう少しだ。動いてほしいけど、あんまり動くと見えなくなるから困るな……もどかしいぞ!)

 そのとき、芝生を踏む音がしてアキラは仰向けになる。
 誰と認識する前に、顔面を踏まれた。

「ふごっ……!」

「貴様……何をしておるんじゃ」

「ルーシェ……」

 空色のショートドレスを着た彼女は、アキラの顔を解放する。
 右手にグラス、左手に皿を持ったルシェイメアはアキラの隣に座った。

「踊るんじゃなかったのか?」

「踊っておったぞ、ずっと。さては貴様、女性の尻ばかり追いかけておったな?」

「追っかけちゃだめか?」

「ばかもん!」

「いでっ!」

「全く、目を離せばすぐこれじゃ。貴様も踊ってくるがよい。女性と仲良くなれるチャンスじゃぞ」

「今日はいい。俺はここでこっそりパンツを……いででででっ!」

 ルシェイメアはアキラの頬をつねる。
 2人は外で会場の様子を眺めながら、食事に手を伸ばす。

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