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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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社交ダンス~第1部~


 日が沈み、月が主役になる時間。
 ダレストリスの港近くにあるメジェールの別邸では、ドレスと燕尾服を着た多くの招待客が訪れる。
 招待状を手に彼らはダンスホールへ足を運ぶ。
 豪華なシャンデリアに照らされた白い壁は淡い黄色に、縁を彩る黄金は光を受けてさらに輝きを放つ。
 白のテーブルクロスがひかれた丸テーブルには海鮮料理を中心にサラダやスープ、肉などが並ぶ。
 立食式になっているが、食事するためのテーブルもいくつか用意されていた。
 ダンスホールの奥は歌舞を披露するスペースになっており、見慣れた楽器が複数置いてある。
 森をイメージした踊り子衣装の秋良と胸が大きく開いた白のロングドレスを着るアリヤは、自分たちが歌う場所を下見していた。

「ホール奥だけど、ここからは目立つな」

 スペース手前で歌う位置に沿って立てば扉が真正面になる。

「私はここですかね」

 秋良は招待客側から見て斜め右に立った。

「お、下見か?」

 紺色の燕尾服に同色の蝶ネクタイを締めたヤクモがシャンパングラス片手に近づく。

「許可をいただきましたので。しかもトップバッターです」

「大役じゃないか。場の空気を作らないといけないんだろう?」

「ええ」

 ダンスの練習が終わったあと、秋良とアリヤはメジェールに演奏の許可を貰うべく、一足先に彼女の別邸にお邪魔した。
 メジェールは自分が判断する立場ではないと言い、両親に2人を紹介。
 彼女の両親は2人の胸元にある上級冒険者勲章と秋良のダレストリス海精殊勲章を見て、ぜひ演奏と歌を披露してもらいたいと気持ちの良い返事をくれたのだが、最初にやってみないかと勧められ、今に至る。

「人が増えてきたな。また後でな」

 ヤクモは招待者たちの中に紛れていった。

「アリヤ様、秋良様。そろそろ始まりますわ。ご準備を」

 メジェールに声をかけられ、2人は一旦会場を後にする。

◆ ◆ ◆


 メジェールの父、カルムの挨拶に拍手が送られ、ダンスの時間が訪れる。
 場の空気を作る秋良とアリヤは下見した立ち位置についた。
 秋良は竪琴を膝に置き、会場全体を一瞥。
 最初の一曲が決まった。
 アリヤも唄を決め、秋良に視線を送る。
 2人は頷き合って、秋良は弦に指を添える。
 最初に紡がれるのは水のせせらぎを表現したアクア・パルティータ。
 緊張している人たちもいるだろうと思っての選択だった。
 ここにいるすべての人たちと共に、この時間をいつかの未来で笑いあえる想い出となるようにと願いと祈りを込めながら、物語を奏で紡ぐ。
 アリヤは清らかな唄声で、安らぎの唄を歌う。
 いつまでも朽ちることも変わることもなく、輝き続ける想い出が誰かの未来でも愛情の種を芽吹かせてくれるように。
 願いと祈りを込めて精一杯の愛を唄う。
 愛した人との思い出を乗せた唄と音色に会場の空気は解け、招待者たちはパートナーの手を取ってホールの中心へ。
 派手な黄緑色のドレスに身を包んだシュヴァリエも楽しもうとパートナーを探す。
 招待者のほとんどが相手を連れてきているため、仲間に絞られるが、シュヴァリエは1人の男に声をかけた。

「そこのお前、わたくしと踊ってあげてもよくてよ」

「お、いいのか?」

 ヤクモはシャンパングラスを置くと、シュヴァリエをエスコートする。
 スリットが入った鮮やかな深緑色のロングドレスを着こなすレジェヴァロニーエはテーブル席に座り、2人が踊る様子を眺めながら指先でシャンパングラスの持ち手をなぞっていた。

(パーティーとはなんとも面倒ではあるが、ドレス選びや小物、化粧でかなり時間を使われたな。身なりを場に相応しい形にするとするのなら妥当か)

 チラと適当に視線をやれば、着飾った女性たちが照れながら視線を逸らし、小声で騒ぐ。

『こっち見たわ。すごく綺麗な人……』

『あぁ、流し目もとっても美しいわ』

 自分のことを言われているとは思っていないレジェヴァロニーエは足を組みかえる。
 それだけでも女性の黄色い声が上がった。

「あ、あの……!」

 顔を上げると、耳と首に真珠のアクセサリーをつけ、ピンクのドレスを着た可愛らしい女性が頬を染めている。

「わ、私と踊っていただけませんか!」

「ちょっ、ずるい! 私も声をかけようと思ったのに! 私とも踊ってください!」

「私も!」

「私もお願いします!」

 堰を切ったように迫る女性たちに、レジェヴァロニーエは圧倒される。

「すまぬが、私はこの場に慣れておらぬ。見学だけさせてもらいたい」

「慣れていないなら私がお教えします!」

「さぁ、こちらに!」

 ぐいぐい来る女性たちにレジェヴァロニーエは視線で優とルージュに助けを求めるが、2人は2曲目の始まりとともにホール中央に出る。
 オータス・アンセムを少しアレンジした曲と愛の唄に合わせ、優とルージュはステップを踏む。

「ルージュはこの会場に来てからずっと見られているね」

「優こそ。火の竜騎士だからかしら」

 優は瑠璃色のドレス、ルージュは真紅のドレスに身を包む。
 優もそれなりに見られているが、ルージュは貴族生まれなのもあって育ちの良さが表われていた。
 会場にいる貴族の中には、どこの家柄だと関心を持つ者がいるほどである。

(こんなに見られてるなら、見せつけた方がいいよね)

 ほんのちょっとの嫉妬も混ぜて、ルージュをリードする。

「優」

「どうしたの?」

「少し身体離れているわ。ちょっとくっついて」

「こう?」

「うん」

 2人の距離がぐっと近くなる。
 するとルージュは自分の額を優の額に重ねてきた。

「ル、ルージュ!」

 唐突すぎて慌てる優に、ルージュは冷静だった。

「優。今流れているのは愛の唄よ。みんなこんな感じのダンスをしているわ」

「わかってるけど……!」

「見せつけてあげましょう。私たちのダンスを」

 どうやらルージュも優に注がれる視線に落ち着かなかったらしい。
 2人は愛紡がれる讃美歌に身を委ねながら、ダンスの時間を楽しむ。

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