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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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クルーアルの爆弾


 2階に続く階段で、ブリジットたちは陽動組と合流する。

「で、クルルンいなくなったって?」

「ミラージュ・レヴューが効いてるから、襲撃されたとは考えにくいと思うんだけど」

「蒼白い光と上着だけが残されていて。その光に導かれたのがここです」

 風は地下に続く階段を見遣って、シレーネたちに視線を戻す。

「私もそこには違和感を覚えていたわ。何があるのかしら?」

「クルーアルが隠している何かかもしれませんね」

「とにかく入ってみよ。人がいない今のうちに」

 ブリジットを先頭に重い鉄の扉を開ける。
 中は薄暗く、槍や剣、弓といった武器が専用の棚に立てかけられてある。
 壁には拳銃からライフルまで丁寧に飾られており、奥から血の臭いがした。
 慎重に進むと、誰かが背を向けてうずくまっている。
 見慣れたシルエットに、風は駆け寄った。

「クルーアルさん!」

「う……あ……風……。本体で、会うのは、久しぶり、だな……」

「喋らないでください」

 風はクルーアルの体を触診。
 腕は握ったとき指先がつくほど細く、頬もこけている。
 軽く上半身を触ると彼は顔を歪めた。

(打撲か骨折をしていますね……)

「いつからですか? この状態は」

「おまんらがトラディ村に行っているときじゃ。手首ば触ってみてみぃ」

 手首を触ってみるとざらっとした革の感触がした。

「これは?」

「簡単に言うと、精神だけ移動できる魔導具じゃ。捕まって以降のクルーアルはそれば使っておまんたちと接触してたき」

「これがクルーアルの隠し事なのですね」

「ま、だ、あるけど、な……」

「まだあるんですか!? 詳しい話は後ほど聞くとして、今はさっさと脱出しますわよ」

 ブリジットは風に上着を渡し、風はそれをクルーアルに着せようとする。
 しかし、彼は拒んだ。

「僕は、いい……早く、ここから……出るんだ」

「だめです。見つけたからには一緒に逃げてもらわないと。それに……シンさんが目指すこの事件の結末にクルーアルさんの生存が必要不可欠です」

「シレーネ……何とか、いっ、てやれ……」

「連れて帰るし。欲をかきすぎると失敗するのはわかってるけどさ、ここは欲をかくべきっしょ」

 体を起こすのに手を貸そうとすれば、彼はもがいて床に転がった。

「僕を、置いていけ」

「わがまま言わないでください。帰りますよ!」

 風は抵抗されないよう、今度は彼の両脇を締めて抱えようとする。

「だめ、だ……早く、でないと……」

「何をしているのかしら?」

 ここにいるメンバーとは全く別の声。
 その声に聞き覚えがあるシレーネたちは武器を構える。
 ノー・キラーは階段を降り、冒険者たちの顔を1人1人確かめて最後にクルーアルを見た。

「私がいない間にいかがわしいお友達連れてきて……」

 焔子とブリジットが庇うように前に出る。
 焔子は背後に誰かがいるように視線を揺らす。
 彼女の視線にノー・キラーがわずかに反応した瞬間、霧鮫牙刃を抜いて攻撃に転じようとする。
 ブリジットも焔子に続いて両刃のナイフ、グラウダートを投げようと接近するが

「ブリジー! ほむちゃん! ストップ!」

 シレーネがノー・キラーの次の動きを予知したときには、焔子とブリジットは武器を持つ手を握られていた。

「野蛮な子たちね」

「先手必勝よ」

「だったら、次のターンは私になるわよね」

 ノー・キラーは壁に飾られているライフル銃を手にする。

「いかん! おまんら、早くここから……」

 銃声にヘルムートが守護者を召喚して防ぐと、ハディックが本来の姿に戻り、冒険者たちの肉壁になる。

「ハディやん!」

「ここはわしとクルーアルで時間を稼ぐ! さっさ行けぇ!」

「あはははははははははは! いつまで保ってられるかしら!」

 ノー・キラーはハディックに向けて何十発も弾を撃ち込む。
 焔子はリインからもらった小瓶をポケットから出し、風に渡す。

「風様、これをテラポッタに!」

 風が受け取った瞬間、クルーアルがテラポッタと小瓶を強引に奪う。

「クルーアルさん!」

 彼は小瓶の液体をテラポッタに飲ませる。
 するとむくむく大きくなるテラポッタ。
 小さいサルがこの部屋の天井に届く大きさのサルに変貌した。

「テラポッタ! 僕と、ノー・キラー以外を連れて逃げろ……!」

 テラポッタは風やエーリッヒ、ブリジットを掴み、自分の腕に抱え始めた。

「テラポッタさん、お願いします! クルーアルさんも!」

 テラポッタは首を横に振った。

「風、残念だが……この大きさだと……7人まで、だ……」

「そんな……!」

 空間が歪み始める。
 クルーアルを掴もうとした手は触れる寸前で消えた。

「あら……逃げられちゃった」

 ノー・キラーはクルーアルに歩み寄ると、右足で彼を転がした。

「何が目的なのかしら? アジト壊滅? 偵察? それとも監禁生活が苦しくなって助けてほしかったのかしら?」

 彼は無言でフッと笑う。

「もうどれでもないのね」

 ノー・キラーはクルーアルの腹部を蹴ってうつ伏せにする。

「改めてご挨拶に行きましょう。もちろんあなたも連れて」

◆ ◆ ◆


「あっ!」

 衝撃とともに柔らかい毛に包まれる。
 風たちは昨日ダレストリスに向かった冒険者たちを見送った港にいた。
 夕焼けに照らされているテラポッタは元のサイズに戻り、息をぜぇぜぇ切らす。

「私の肩で休んでください」

 風はテラポッタを抱えて肩に近づけると、マフラーのように風の首に巻き付いて眠る。

「ハディやん! ハディやん!」

 シレーネの声に駆けつけると、人の姿になったハディックは血まみれになっていた。

「わしは、大丈夫じゃき」

「どこまで弾が到達してるかにもよりますが、応急処置は必須です。誰かの手を借りたいのですが……」

 人を探すと男性船員が船から降りてくる。
 血まみれのハディックを見て、顔を引きつらせる彼に焔子は逃がさない勢いで詰め寄った。

「船医はいますか? いるなら今すぐ連れてきてください。それと貴方の乗る船がダレストリス行きなら乗せていって欲しいのですが!」

「わ、わかりました……!」

 慌てて船内に戻る船員。
 その後、彼の乗る船でダレストリスを目指す。
 ハディックの治療も移動中に施されることとなった。

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