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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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潜入


 シレーネたちが魔人相手に激しい戦闘を繰り広げている中、ブリジットを先頭に潜入組は屋敷の裏に回っていた。
 陽動組が上手く立ち回っているおかげで、メイドが次々に参戦している。
 敵は正面玄関から出ているので、クルーアルの提案で裏からの侵入を試みる。
 屋敷裏には扉が1つだけあり、ゴミ庫に続いているそうだ。

「一番危険なルートを選んだわね……」

「ブリジットを信じてる」

「見つかったらあんた囮に2人を連れて逃げるから」

「とか言って、なんだかんだ放っておけないのがブリジット」

「置いていくわよ」

「まぁまぁ、言い合いはそこまでにして。この辺で足音はしてませんし、入っても問題なさそうです」

「陽動組にどれくらい人数を割いているかよね。潜入したら、一旦隠れて様子を見ましょう」

 ブリジットはパロトを肩に乗せ、周囲を確認。
 ゴミ庫に続く扉の前まで進む。
 風が耳で物音等を探り、何もない合図を示して扉を開けた。
 生ゴミの臭いに覚悟していたが、生ゴミよりも鉄や化学薬品みたいな独特な臭いが漂う。
 4人は屋敷に続くであろう扉に手をかけ、再び音を探る。
 1階の部屋の隅というのもあって物音は感じられず、足音もない。
 ブリジットは扉をそっと開け、足音を消して進む。
 焔子もローグ独特の歩法で滑るように続き、風とクルーアルは2人の後をついていく。

「2階に続く階段は?」

「中央だ。階段の下にスペースがあるから何かあったらそこに」

 メイドが多くいそうだと予想しながら進む4人。
 時に身を潜めながら2階に続く階段に到着。
 複数人のメイドが駆けてくる音に、風たちは慌てて階段下に身を潜めた。

「意外と人数多いですね。外に出て行ってはいますけど」

「役割分担でもしてるのかしら。しばらくここで待機ね」

「では、私の出番ですかね」

 風は飽響の提琴を奏でる。
 柔らかい音色で紡ぐのはミラージュ・レヴュー。
 音でバレそうだと思うかもしれないが、今メイドはいない。
 気付いたときにはもう魅了されているだろう。
 風が演奏で心を掴もうとする中、クルーアルは気配を遮断して待機する焔子の髪を触る。

「何触っているんですか」

「焔子の髪、きれいだなって」

「それ今言います? 言うタイミングなんてそこかしこあるでしょう」

「1回でいいからさ、縦ロールやってみないか? 似合うと思うんだ」

「お断りします」

「ドリルを何本も提げたような強縦ロールと、クロワッサンみたいな緩め縦ロールどっちがいい?」

「人の話を聞かないなら、飛鷹様にクルーアルがお慕いしておりましたと伝えますが」

「推したいしている?」

「違う言葉話してません?」

「うるさいわよ、クルーアル」

「どうして僕だけ注意するんだ」

「あんたが絡むとみんな構わざるを得ないからよ。静かにして」

「暇だ」

「今から陽動組の方に合流しても構いませんわよ?」

「こっちがいい」

 焔子とクルーアルのやりとりをよそに、ブリジットは正面玄関に目を向ける。
 その側に地下へと続く階段がわずかに見えており、彼女はそこに違和感を覚えていた。
 そのとき、右の通路から魔人メイドが階段に近づいてくる。
 4人は息を殺し、去るの待つ。
 魔人のメイドは階段下に視線を向けるも、彼らに気付かず左に歩いて行った。

「ミラージュ・レヴュー、成功ですね」

「短時間でこの効果、彼女たちも精神的に相当参っているかもしれませんわ」

「急ぎましょう」

 再び、ブリジット先頭に2階へ。
 身を潜めながらの移動は時間がかかったが、何とか本部屋に到着した。
 本部屋には本棚が3つ。
 背表紙のタイトルはほとんど研究に関する物ばかりだ。
 クルーアルは何かあったらいけないと、外で見張りをしてくれている。
 1人1棚、1冊ずつ手に取って、目次を開いていく。

(クルーアルさんの過去とか、ここにあったりしますかね)

 染まる武器は1人の機械族から始まること。
 ロージの黒弓の形態変化について。
 染まる武器を創るにあたっての自身の変化。
 風の取る本は染まる武器が完成するまでの流れが記されていた。

「風様、手が止まっていますよ」

「あ、すみません……。クルーアルさんに関する何かがあればいいなと思いまして」

「そうですね。何の爆弾を隠しているのか、知っておきたいのはわかります」

「そっちはどうですか?」

「この本棚は術式に関する物ですね。盗んでやろうと思いましたが、頭脳明晰を持ってしてもかなり難しいですわ」

「……見つけた」

 ブリジットは開いていた1冊の本を閉じる。

「直せそうです?」

「目次しか読んでないからわからないわ。ページ数も少ないし、賭けるしかないわね」

 ブリジットはパロトを肩から腕に移動させる。

「本はこれだけのようだから、シレーネたちに撤退の合図送るわよ」

 本部屋の扉を開けると、クルーアルはおらず、紫に金の刺繍が入った上着だけが残されていた。
 ブリジットは上着を手に部屋を出て姿を捜すが、廊下にはいない。

「どうしました?」

「クルーアルがいなくなったわ」

「やっと仕事させたと思ったら……!」

「ブリジットさん!」

 風の声に振り向くと、ウィル・オー・ウィスプのような蒼白い光が風の隣に。
 光はブリジットと焔子の周りを回るとさっき通った廊下に戻っていく。

「行きましょう!」

 風と焔子がその光を追う。
 ブリジットはパロトに伝言を頼み、窓から飛ばした。

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