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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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これは断じて恋ではない


 レガリス、プリシラ。
 二国に最も近いグラン・グリフォン都市同盟の北に、ノー・キラーの屋敷はある。
 その屋敷の前でクルーアルは風からもらった飛鷹の写真集を広げ、テラポッタの帰りを待っていた。
 彼のほかにも示翠 風シレーネ・アーカムハイトエーリッヒ・アーカムハイト、ヘルムート(詠宮 詩郎)、ブリジット・シャッテン、ハディックが木の柵に背中を預けて座る。
 風はずっとキラキラした目で写真集を見るクルーアルに話しかけようとすると、彼が先に口を開いた。

「ちょっと聞いていいか?」

「何でしょう?」

「この……飛鷹の隣にいる女性は誰だ?」

「あぁ、ケイ・ギブソンさんです。シンさんの恋人です」

「恋人!? 飛鷹に恋人がいるのか!?」

「そりゃあ、いますよ。……気になります?」

「そんなことない。僕には300人の彼ぴっぴ(親衛隊のこと)がいるから、飛鷹に彼女がいても関係ない」

「(彼ぴっぴ)そうですよね。300人も彼氏さんがいれば、シンさんなんて気にも留めないですよねぇ」

 にやにやしながらクルーアルの顔を覗き込めば、彼は小声で「飛鷹に彼女、飛鷹に彼女……」とつぶやいている。
 さっきまで目を輝かせていたのに、今は暗い影を落とし、ページも全く進んでいない。

「もしかして、恋愛の方の好きです?」

「……今、何て言った」

「ホの字ですか? って聞いてるんです」

「そんなわけないだろう!」

「じゃあ、どうしてページが止まっているんですか?」

「今からめくるんだ」

 クルーアルは次のページを開く。

「シンさんのどこを好きになったんですか?」

「言っておくが、飛鷹は風の言うアイドル世界でいうアレだ」

「推しですか」

「そう、推しだ」

「じゃあ、昨日の“大大大大大好きだよ~”はどう説明するんですか?」

「推しのどんな姿でも愛せるという意味であって、断じて恋愛ではない」

「会いたくて淋しくなったりするのもですか?」

「それは……」

「ちょっと頼ってもらったり構ってもらったりすると嬉しかったりしませんでした?」

「うぐ……」

「あの……シンさんとの恋愛はその……」

「わかっている。フラれたら僕は飛鷹の前で首を吊る」

「絶対止めてください」

「クルーアルが飛鷹様をお慕いしているですって?」

 そこに焔子が到着する。
 彼女の肩に乗っていたテラポッタは風に跳び移った。

「あれ? ほむちゃんだけ?」

「ええ。向こうも向こうでちょっとゲテモノ案件がですね……それに手紙の内容から人数は少ない方がいいとも判断しました」

「来てくれてありがとね。で、内容なんだけど」

「クルーアルが仕事をしないと。私といたしましてはその場にいても構わないのですが……」

 焔子はジト目で、彼の持つ白い本に注目する。

「その本は何ですか?」

「焔子を不健全にする本だよ。だから絶対見ちゃだめだ。僕には焔子の心を守る責任がある」

「その理屈で進めますと、これからノー・キラーの屋敷に潜入するのも不健全の要因になりますよね? クルーアルが責任持って行ってくれますよね?」

「この世界を生きていく上で柔軟な心も必要になってくる。これは可愛い焔子への試練だ」

「どうとでも言いますわね」

「それにしても、昨日言ったことが実現するとはな。あのマスクは持ってきたのかい?」

「持ってくるわけないじゃないですか。敵の前で顔を隠す必要あります?」

「え、じゃあ、どうして昨日は隠したの?」

「人間関係でごたつきたくないと昨日言いましたよね?」

「そうだっけ?」

「貴方も例外じゃありませんよ。まだ何か隠していること、ありません?」

「……今はまだ話すときじゃない」

「出た! 出ましたよ、皆様! いいですか、よく覚えておいてください。この台詞が出たら高確率でヤバい爆弾を抱えています。私たちは今、それを背負わされました! なぁにが、“今はまだ話すときじゃない”ですか! 起こってからじゃ遅いんですよ! 会話しろ! 会話!」

「(´・ω・`)」

「何ですか、その顔は?」

「( ´ー`)」

「表情で会話を試みないでいただけます!? 意味不明ですわ!」

 その瞬間、銃声とともに写真集が吹っ飛ぶ。

「あ゛……!」

 慌てて駆け寄れば、吹き飛ばされた写真集に穴が開いている。
 吹っ飛んだ方向の反対を見れば、歴戦のオーラを放つシレーネが銃を構えたまま立っていた。

「クルルン……緊急ミッションだよね? それ読むの今じゃないよね?」

「シレーネ、怒らないで……」

「いや、怒るっしょ。それあとでも見れるから今は働け」

 ぶんぶん首を横に振るクルーアルに、焔子は本を拾う。
 仕方ないと思っていたが、爆弾を抱えているなら働いてもらうしかない。

「穴が開いてしまったので、いかがわしい本は紅炎のピアスで焚書ですわね」

「焔子、紅炎のピアスで本は焼けないぞ」

「お忘れですか?」

 焔子は霧鮫牙刀に炎を纏わせ、本の角ぎりぎりに近づける。

「こっちだと普通の火なんですが」

「だめだ! 飛鷹(の写真集)を返せ!」

「ああ、これは飛鷹様が題材のいかがわしい本なのですね。ますます焚書しなくては!」

「ほむちゃん、やろう。1人だけサボるのはなしだし」

「では遠慮なく」

「やめろ! うわああああああああああ、飛鷹ああああああああああああああ!!」

 写真集は炎に包まれ、やがて真っ黒になる。
 クルーアルは渋々焔子たちと同行することになった。

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