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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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お前がラスボスか?<1>


 一方、Gを追いかける冒険者たちは洞窟の奥までヤツを追い詰めていた。
 この空間にも卵は存在するが、数は手前ほどではない。
 行き止まりを確認し、彼らはGを囲うように多方向へ散る。
 Gの位置は感知できても、動きは全く予想できない。
 また、卵の孵化も踏まえた上で動かなければならない状況。
 Gに集中すればヤツの子に対応できず、卵に集中すればGの不意打ちをくらう。
 だったら、最初から立ち位置を決め、来たら戦闘に集中する。
 逃げられたら向かう方向にいる冒険者にできるだけ声を掛けて合図を送る。
 Gが来ない間は卵を減らしていく。
 そうすれば、大体危惧している出来事は解消されるはずと冒険者たちはみていた。

(ここから積極的に仕掛けていくわよ)

 桐ヶ谷 遥は強化されたグロリアスを構えながら、まずは自身に引きつける。

「わたしは銀の聖剣使い、桐ヶ谷 遥。一対一でわたしと勝負しなさい!」

 銀の聖剣使いであることを誇りに思う叫びは他の冒険者たちも振り返るほど。
 だが、Gは見向きもせず、壁でじっとしている。
 遥はもう一度声を張るが、Gは脚の掃除を始めた。

(っ、どういうこと!? 魔物であっても本能的に無視できないはず)

 確かに騎士の名乗りは魔物でも本能的に無視できない効果がある。
 だが、思い出してほしい。
 洞窟に入ったときのヤツの態度を。
 クロノスとソルフェに触角を当て、後方に回って道を塞ぎ、脅すように前に出てきたことを。
 あれは人族が自分たちを恐れていると知っている態度だ。
 自分たちが迫れば、人族は身体を縮こませると学習している。
 長年生きてきた経験と自然界の無慈悲な選別に勝ち抜いてきた強さ。
 それとともに育ってきた傲慢さ。
 騎士の名乗りを無視できるのは、この先の戦いでコイツだけになるかもしれない。

(完全に舐めているわね。そういえば染まる武器は)

 遥は従剣ツヴィリング・ガードを探す。
 聖剣にしか従わない双剣は、あまりにもでかいGに興味を持ったようでGを追い回していた。

(どんな援護をしてくれるのかしら。できればこっちに誘導してくれると助かるんだけど)

 心の声が届いたのか、従剣はGの顔や胴体を切っ先でつつき始めた。
 Gにとって痛くも痒くもないようで、そのまま壁を走っている。
 すると、一方の剣が勢いよく回り始める。
 もう片方がつついていじめている間、回転する剣がGの側頭部にキルストームを叩き込んだ。
 地面に叩きつけられたGは足をバタバタさせて体勢を整え、従剣を追い始める。

(やっとわたしの出番ね……! 舐めたことを後悔させてあげるわ!)

 従剣と交代するように前に出て、振られる触角を聖剣1本で受け止める。
 剛力の指輪で膂力を高めた屈強な肉体は、触角を弾き返し、もう片方の触角も剣術で捌く。
 交互に波打つ触角鞭に、遥は振るわれるタイミングや自分に攻撃が届くまでの時間を感じながら、レガリス流剣術でGの体力を削る。
 右の触角が持ち上がった瞬間、遥は剣を即座に水平に。
 直後、強靱な顎が開き、剣の面で防ぐ。
 反撃に転じるべく聖剣の力を解放しようとしたその瞬間、Gは跳んで後退。
 くるりと背を向け、壁を登ろうとする。
 近くにはクロノスがいた。

「クロノス!」

「はっ……!」

 卵の駆除に集中していた彼女は呼ばれて即座に振り向くと、Gが無表情で迫っていた。

「急すぎるよ……!」

 目を見開いた表情をしたと思いきや、汚物を見るような目で精霊魔法を発動させる。

(触角の恨み、晴らさせてもらうよ)

 スピードを上げた彼女は噛みつかれる前に跳んで一振り。
 風の刃がGの頭に傷をつけようとする間、鎧が引っかかっている脚に恨みを乗せて斬りかかる。
 回避が難しい斬撃は全て当たるが、脚は光沢を保ったまま傷1つついていない。

(何で!? 一応準英雄装備に分類される剣だよ!?)

 答えを得る前に、壁に登ろうとするGを従剣が阻み、遥が追い回す。

(あぁ、わかったよ。これがローランドのGなんだね。地球のGと同じように正攻法が通じにくいってわけか)

 クロノスはふっと笑って、剣を握りしめる。

(でもボクは正攻法で行く! 触角を当ててきた罪は深い……!)

 目をぐわっと開き、足止めしてくれている遥たちのもとへ。
 壁を蹴って跳び、もう一度脚に斬撃を見舞う。

(おらおらおらおらおらおらおらおらおら)

 脚に一点集中して、無心で剣を振る。
 その様子をアリシアは心配そうに見つめていた。

「クロノスちゃん、大丈夫かな……さっきからずっと斬撃ばかり……助けに行きたいけど……うぅ……!」

 ぷるぷる震えるアリシアに、リコは笑いながら声をかける。

「わたしが援護するからクロノスのところに行ってあげて」

「リコちゃん……! ありがとう!」

 走って行くアリシアに向かわないよう、リコはグラウンドバレットを装填した銃を構えた。
 射程距離延長の術式を刻んでいるので、射撃スキルの飛距離も伸ばせるようになっている。

(さてさて、アレの急所はどこかなぁ)

 さっさと駆除したいところだが、2人の戦いを見ていてそうはいかないと悟ったリコ。
 反撃を察知したり、高速の連続斬りが平気そうだったり。
 体力を削るか動きを鈍くさせるかが、最優先のようだ。
 Gの急所を把握したリコは一旦そこを攻めず、まずはクロノスとアリシアからGを離すべく引き金を引く。
 グラウンドバレットの効果を持った5匹の魚はGを追尾。
 Gはクロノスがいる方向と反対に逃げるが、魚は着弾。
 リコは容赦なく次を発砲する。
 アリシアは膝をついて息を切らすクロノスに駆け寄り、手をかざしてヒーリングブレスを施す。

「あ、ありがとう」

「いいよ、これくらい。それより早く離れよう!」

「ア、アリシア!」

 リコが叫ぶ。

「ごめん、そっちに来てる!」

「ふえ?」

 何となく顔を向けた方向にGの顔が迫っていた。

「ふええええええええええええ!!」

 アリシアは目をつぶりながら、破邪の裁釘を投げる。
 破邪の裁釘はGの突進力に負けて思いっ切り弾かれた。

「あわわわわわわわわわわわわわわ」

 アリシアは動揺のあまりクロノスをぎゅうっと抱きしめる。

(え、あ、お胸……お胸が当たって……って、解放してもらわないと! 餌になっちゃう!)

 もがこうとするとアリシアの右中指に賢智の指輪。

(ん? あれ? これつけてると精神的に動揺し難くなるんじゃなかったけ!? どうして動揺しまくりなの? これもGのせいなの!? もうわけわかんないよ!!)

「マスターマスターマスターマスターマスターマスターマスターマスター!!」

 アリシアはクロノスを抱きしめたまま、不可視の聖壁を張る。
 彼女なら防御できるのだが、アリシアは無意識に聖壁を張っていることに気付かない。
 リコの魚が牽制するが、Gは止まらない。

(うわあああ、もうダメだ……!)

 結界が張ってあるのに諦めるクロノスとアリシア。
 そのとき、1人の男がGの顎を受け止めた。

「アリシア」

「マスター!」

 イルファンは大盾で顎を強く弾いて体勢を崩し、即座に顎を打つ。

「卵の駆除に回れ。ここは俺がやる」

「うん……!」

 アリシアとクロノスはリコの方に走り、卵の駆除へ。
 魔剣と大盾を構えながらイルファンはGと対峙するが、動きが止まっている。
 最初に攻撃を仕掛けてきたヒューマンだからか、警戒しているようだ。

(見たところ、後ろ足に何かが引っかかっているようだが……まさか、あれが染まる武器、なんてことはない……よな?)

 悲しいことにあの鎧は染まる武器だ。
 どこで引っかけてきたのかわからないが、求めている物が手に入るのはラッキーだ。
 すごく不衛生な可能性は大だが。

(まだ動かないな。ならばこちらから……!)

「“超獣殺しの白騎士”イルファン・ドラグナ―――推して、参る!」

 イルファンが駆け出した瞬間、逃げ出すG。
 リコが5匹の魚で道を塞ぎ、動きを鈍らせる。

(リコの弾が当たっているのに、それでも早い……!)

 イルファンはGの右側について走る。
 それに合わせてリコの魚がGを抑えながら、彼に寄せていく。
 誘導が功を奏し、追いついたのを機に素早い剣さばきで斬る。
 その巨体に届く5回の斬撃にGは恐怖を覚え、再び逃げる。
 恐れられていると知らないイルファンは、Gから一番近い者の名前を叫んだ。

「優!」

「シュヴィ、レジェ! 殲滅の時間です!」

「仲間の邪魔はさせんぞ」

 レジェヴァロニーエはオータスに誓い、しなやかな身体を竜化。
 最小の動作で翼を広げ、空を飛ぶ。
 その間に優は精霊の加護を得て、ルインに宿る精霊剣・火を結界晶に与え短剣に変化させる。
 シュヴァリエ・シリヴレンも精霊剣・風を雷霆の篭手と結界晶へ。
 雷と化した腕と反対の手で風の短剣を握りしめる。

「さぁ、優! やってしまいますわよ!」

「えぇ。卵もなかなかに殲滅甲斐がありますが、やはり本体を叩かなければ」

 Gを怖がりそうなシュヴァリエだが、彼女は満面の笑みを浮かべている。
 平気そうだと思うかもしれない。
 恐怖が限界突破してテンションが壊れているだけである。
 優も名前を呼ばれてスイッチが入り、完全に殲滅モードだ。
 そんな2人をレジェヴァロニーエは上空から眺める。

(ふむ……面白いものだな。超蟲1体でここまで感情的になれるとは。我々竜族からすれば、自然の一部にしかすぎんが)

 レジェヴァロニーエが旋回中、Gは初めて見る竜に戸惑っているらしく、その場から動かない。
 上空からの圧迫で飛行と跳躍ができないのも関係しているが、未知の相手に様子を窺っている。
 レジェヴァロニーエは着地し、頭を上げた。

「竜を見るのは初めてか? そなたと同等の大きさの種族はここにおるぞ」

 Gは無表情だが、触角が忙しなく波打っている。
 優は完全にGがレジェヴァロニーエを標的にしたと感じ、シュヴァリエに声をかける。

「シュヴィ、成体とレジェが戦っている間は皆さんを護ります! 触角1本触れさせません!」

「ええ! もう何でも来いですわ!!」

 2人は魔力を共有し、Gの頭部についた。
 その瞬間、メンタルヒエラルキーの最上位と最下位が同時に地を蹴る。
 勢いよく振られる2つの鞭に、レジェヴァロニーエは両手で阻止。
 強く握りしめ、引きちぎろうと試みるが屈強な肉体を持ってしても裂けない。
 レジェヴァロニーエは触角を持ったまま、上昇。
 ぐるりと一回転し、地面に強く叩きつける。
 ひっくりかえったGは腹部を見せ、体勢を戻そうと足をバタバタさせている。
 大きな隙に魔神の加護を弱らせる破邪の裁釘を投げ打ち、銀鎖を振り回して投げた。
 だが、ただでやられないのがG。
 ひっくりかえったまま、触角で鎖を弾く。

(そうくるか。だったらこっちは力尽くだ)

 レジェヴァロニーエは鎖を持ったまま、のしかかる。
 Gは6本の足で彼女の顔や体を引っ掻いたり蹴ったりして抵抗。
 彼女も負けじと拳で殴り、ときに噛みついて反撃する。

(あぁ、レジェには後でしっかり歯を磨いてもらわないといけませんね……)

 優は内心ショックを受けながら、他の冒険者たちの身を護るために走る。
 レジェヴァロニーエが果敢に攻めれば攻めるほど、Gの抵抗も激しく、触角があらゆる方向から降りかかってくる。
 優は風を読んで回り、短剣となった結界晶の防御結界とルインによる剣術を生かして触角を受け止める。
 シュヴァリエは魔力節約形態時のように、きゃっきゃっと笑いながら優の動きに合わせて結界を張るが、なぜかレジェヴァロニーエたちへの視線が熱い。

「レジェ、そこですわ! もっと拳を打つのです!」

 熱い声援を送るシュヴァリエにももちろん触角は容赦なく振り下ろされる。

「きゃあああああ!!」

 傍から見ると楽しそうに篭手の結界と結界晶の結界の二重結界で優ごと守るシュヴァリエ。
 本心は汚い触角に触れたくないだけである。
 触角が他の冒険者たちのいない方向に振り下ろされれば、結界を解き、電撃で卵を潰す。

(このままだと形勢が変わらないな。もう一度叩きつけるとしよう)

 シュヴァリエの声援を耳に、レジェヴァロニーエは再度地面に叩きつけるのを試みる。
 裁釘を打ったことで魔神の加護が弱まり、さっきよりはダメージが通るはずと見たのだ。
 優とシュヴァリエの結界で弾かれる両触角を掴み、空を飛ぶ。
 一回転して地面に叩きつけた瞬間、Gは別方向に逃げる。

(まずい……!)

 空を飛んで追うレジェヴァロニーエ。
 視線の先には鐵の双璧。
 合図を送ろうとした瞬間、2人は勢いよく振り向いた。

「来たぜ、相棒!」

「あぁ……!」

 千羽矢は射程延長の術式を刻み、頼斗の後ろにつく。
 弓道の基本中の基本である射法八節を意識して、狙いを定める。
 Gは目の前に立つ頼斗を吹き飛ばそうと触角を薙ぐ。
 迫る触角に頼斗は跳び、矢の援護を受けながら接近。
 槍を全力かつ正確に振り回し、盾の機構で攻撃を緩和する。
 千羽矢の炎に驚けば、その隙を狙って槍の一太刀と盾の殴打で反撃。
 触角は乾いた音とともに弾かれつつ、再び振り下ろされる。

(相棒の方に行かせてたまるかぁ!!)

 向かう攻撃全てをいなす勢いで果敢に攻める頼斗。
 その最中、ふとあることに気付いた。

(触角って大事な部分じゃなかったっけ)

 地球のGを基準に考えると、触角は視覚の役割を持っている。
 風の流れを読み、障害物の有無を判断し、餌を探す。
 触角を失えば、餌を見つけるのにかなり時間を要すとされている。
 触角が再生するまでの期間は、敵から捕食されやすくなるそうだ。
 だが、ここはローランド。
 ローランドのGは視力がヒューマン並みに良いので、触角は敵から身を守るための武器になる。

(どっちみち触角はアレにとって大事なはずだ! 先端だけでも叩き切ってレンジを減らす!)

 頼斗の立ち回りの変化に、千羽矢は炎の矢に対魔族特化術式を矢に刻む。
 炎が消え、無属性の矢で狙うのはもちろん触角。
 会の射形で触角の動きを観察し、意識を一点に集中させる。
 ピンと来る第六感を頼りにアルゲングランスを放てば、Gの触角に刺さった。
 魔力阻害で動きを鈍らせたかったが、アルゲングランス1本だとまだ足りないらしい。

(もう一度……!)

 基礎の動作を忘れず、術式を刻んでもう片方の触角へ。
 これも見事に命中した。
 まともに動くことができないとされる矢に、Gの動きが少しだけ遅くなる。
 頼斗はそれを機に銀の弧を描くように槍を回し、触角の切断を試みるが

(くっ、かてぇ……!)

 槍を持つ手に力を込めるが、魔神の加護が侵入を許さない。
 レジェヴァロニーエが放った裁釘で弱まっているものの、まだ硬い。
 そのとき、ぶおっと後方から強風が吹く。

(やべっ……!)

 触角が振り下ろされる瞬間、千羽矢の炎が触角の軌道をそらした。

(頼斗には触覚1本触れさせない……!)

 再び炎の矢で攻めるとそれを嫌がるように後ろに跳び、背を向けて走る。
 その先には燈音 春奈が立っていた。

「春奈、頼むぞ!」

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