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理想の未来に死にゆく絆:第7話

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理想の未来に死にゆく絆:第7話
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剣の駆け引き


「せーぎ、護衛引き受けてくれてありがとな。っていっても護衛いる状態じゃねーんだけど」

「いいさ。それにお前を1人にすると迷子になりそうだ」

「オレ1人でも街歩けるし!」

「じゃあ、今から1人にしてもいいか?」

「ごめんなさいぃぃぃ」

 半泣きのダイアに、信道 正義はふっと笑ってしまう。
 ダイアがダンスパーティーに参加するというので、正義はフォーマルな服が売ってありそうな店を探していた。
 だが、街頭を見る限り武器や飲食店のテラス席ばかりで、服飾系の店は見当たらない。

(通りを変えてみるか……)

 道を探していると、つんと左腕をつつかれる。
 見下ろせば、小さい手が差し出された。

「手、つなご」

 「あぁ」と短く返事をしてその手を握った瞬間、「ハッピーバースデー!」の声。
 声のする方に向けば、ホールケーキに目を輝かせる女性の姿があった。
 友人と思われる男女の姿もあり、拍手を送っている。

(誕生日かぁ……ワールドホライゾンは時間の流れが止まっているから、身体も召喚当初の18歳のままなんだよな)

「せーぎは18歳だっけ」

「あぁ。だが10年近く異世界で戦い続けているからな。本当だったらもう27……28歳か?」

「え、年齢ごまかしてんの?」

「してない。ただ……世の中、自分の想像を超える事物が起こり得るのは覚えておいた方がいいかもな」

「一応ふーんとは言ってやる」

 納得がいかない様子のダイアに、正義は「あぁ、それと」と話を逸らす。

「船の上での手合わせだが、思ってたよりずっと戦えるようになったもんで驚いたぜ。トラディ村の夜戦のときは訓練なんかと一緒にしたらダメ、なんて言っちまったが……それだけ戦うことは厳しいことなんだ。それだけは忘れないでほしい。あとは……強いて言うなら駆け引きを覚えることだな」

「駆け引き?」

「勝てると思って安易に踏み込めば、手合わせのときみたいになる。倒せると思った瞬間が一番気をつけないといけない、逆にそこが見えるなら相手の動きも見えるようになる」

 しばらく歩くと潮風が吹き、海が広がる。
 太陽の光に反射して波は瞬き、砂浜に人の姿はない。

「……よかったら、また少し剣を振るか? 昔使ってた剣を持ってきたんだ」

 正義の誘いにダイアは迷う。
 本来なら「うん!」と即答するが、今回はちょっと状況が違った。
 彼の中で剣を握る理由がぽっかりと抜けてしまったのだ。
 ダイア自身もノー・キラーと戦わないといけないのはわかっている。
 冒険者たちについていくと決めたとき、覚悟も決めた。
 でも今はそれさえも揺らいでいる。

「ダイア?」

 名前を呼ばれてハッとし、正義の方を向く。

「やろうぜ! せーぎが感覚取り戻すの手伝ってやる」

 空返事だと見抜いた正義はあえて何も言わず、ダイアを砂浜に連れ出した。

◆ ◆ ◆


 対面した状態で、2人は剣を抜く。

「さっき言ったことが出来たら、俺から1本取れるかもな。頑張れよ」

「せーぎを殺す気で行く!」

「俺はそう簡単に死なないぜ?」

 重高い金属音がぶつかる。
 コルリス流剣技でいなす正義に、ダイアは受け流してカウンターに繋げようとするが、全て返されてしまう。

「どうした? 昨日より弱く感じるぞ」

「変な剣術使ってるからだろ! せーぎこそ、昨日手ぇ抜いてただろ!」

「一応全力のつもりだったんだがな。もしかしたら慣れてきたかもしれない」

 踏み込んで軽い突きを仕掛ければ、ダイアは剣の面で逸らして弾く。
 脚に獣人の底力を溜め、一気に懐に入った。

「せーぎ、真っ二つだ!」

 剣が薙ぐ。
 正義は即座に剣を垂直にし、その刃を受け止めた。

「くっ……!」

 カタカタカタと両者の刃が震える。

「倒せると思った瞬間が一番気をつけないといけないといっただろ」

 正義は剣を弾き、空いた左手でダイアの脇腹をくすぐる。

「ひゃうっ!」

 大きな隙に正義はダイアの剣を強く弾く。
 剣は高い金属音とともに空を舞い、砂浜に刺さった。

「はい、俺の勝ち」

「せーぎ、ずるい! こちょこちょは反則!」

「敵は勝つためならどんな手も使うんだ。弱点がこちょこちょなら遠慮なく使うぞ」

 ダイアは大の字になって砂浜に倒れる。

「オレ、駆け引き苦手なのかも」

「だったらひたすら練習だな」

 正義は白光石の剣を鞘に収める。
 励ましと期待は伝えなかった。
 手合わせの誘いを受けるまであったあの間と空返事。
 彼が何を考えているかは何となく察しがついた。
 今の状態だと剣を長く持つのは厳しいと見て、早めに決着へと持ち込んだのだ。

(今は見つめ直すときかもしれないな……)

 剣を収めるダイアに歩み寄る。
 ついている砂を払って、店探しを再開した。

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