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【アルカナ】風と砂と花と水と

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【アルカナ】風と砂と花と水と
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●ミミスとメメナ


「ちょっとサラマの町へでも行って、時間をつぶしてきてもらえるかね」

 との隠者の提案に従って、案内を買って出たセレンスフィアについていったんは部屋を出た特異者たちだったが。

「……姐たちが拷問、処刑されると聞かされて、このまま町見物などできるはずがないでしょう……!」

 女教皇アルカナ優・コーデュロイは身を翻し、部屋の入り口付近にいたアスター聖騎士団の団員たちから牢の場所を聞き出して、彼らが消えた別廊下へ足早に向かう。
 その様子を見て、大久保 泰輔もそちらへ踏み出した。彼の額には、ほんの数十分前先代の彼女から受け取った節制アルカナが白金の光をうっすらと放っている。
「行くのか」
 讃岐院 顕仁がつぶやく。それは問いではなく、そうすると思っていた、との所感だった。
「彼女はそれを望んでおらぬ顔をしていたぞ」
「……せやろなあ。あの人、自分みたいなんが生きとるの、大罪や思うとるみたいやからな。
 彼女が荷担した事で、よぉけ人が死んだ。死なせた事実は覆されへん。けど、ここで処刑されるんは、違う気がする。それを僕らが何もせず見てるだけゆうのも」
「確かにな。
 それに、信賞必罰は秩序を保つために必要なルールではあるが……あの男は、どうも感情に蝕まれた処罰を科したように見えた」
 隠者に申し出たときのクリスティアノスの頑迷な横顔を思い出す。荒削りな岩を思わせる顔、強靱な意志と覇気が人の形を取ったような人間だというのは一目でわかったが、強く奥歯をかみ締めたがゆえの引き結ばれた口元のしわや目に浮かんだ剣呑とした光が、隠しきれない感情の発露に思える。
「顕仁もか。じゃあ、案外そうかもしれんなあ」
 そしてそれはとても人間くさくて、正義を正すなどというよりもずっと納得できる理由だと思った。


 優や泰輔たちの言葉を聞いて、同じようにそちらへ向かうことにした数名の特異者が向かった目的の牢は、中庭を抜けた先の離れの崩れかけた塔にあった。ここには拷問部屋もあることから、その声や音で砦の者たちを不必要におびえさせない配慮からの構造だろう。
 塔の入り口にはあの半分の狐面を頭に付けた13~14歳の双子の少年少女が門番のように立っていて、近づく特異者たちに気付くや持っていた棒をドアの前で交差させた。
「全員そこで止まれ!」
「ここから先は立ち入り禁止だぞ!」
「入っちゃだめなんだからな!」
 なめられまいとの感情の表れか、厳しい表情で声を張り上げているのだが、彼らをにらみつける大きめのくりくりとした茶色の目が子ぶたのようにかわいらしい。まるで一生懸命威嚇する子猫のよう。
 桜花翠嵐・改の目で2人を見た西村 由梨は自然とほほ笑みを浮かべて話しかけた。
「あなたがミミさん、そしてメメさん、だったわね」
「ミミスだ!」
「メメナ!」
「そう。じゃあミミスさんにメメナさん。私たち、先代の節制さんと審判さんへの面会を申し込みにきたの。会わせてもらえるかしら?
 先に言っておくけれど、あなたたちと争う気はないわ。あなたたちの許可なく彼女たちをここから連れ出すことはしないと約束します。ですから、彼女たちに会う許可をください」
 それでも口をへの字にしている2人を見て。
「嘘偽りない証拠として、私の大切な武器をあなたたちに預けましょう」
 由梨は腰からセラフィックブレードを抜き、2人に差し出した。
 それは天界の純粋な光の塊とも称される熾天兵装だ。天使でも最高位である、熾天使の分霊が変化したと言われる物。
 聖騎士団団員である2人がそれを知らないわけはなく。
 剣を受け取ったものの、むう、とミミスはメメナと目を合わせる。
「どうする? メメ」
「誰も通すなって団長言ってたじゃん。だめ」
「そうだけどさー」
「団長、怒るよ。今もすっごい怒ってるし。あんなに怒ってる団長、初めて見たもん」
「……それは、光国の件についてですか?」
 あの男を攻略するための情報は何でもほしい。
 だが優の問いに対する2人の答えはさらに混乱を生んだ。
「そう!」
「違うよ」
 ミミスとメメナもお互いの返答に驚いた顔で互いを見合う。
「そうだよ! メメ、何言ってんの。団長、あれからずーっと不機嫌じゃん」
「むう。そうだけど、違うって。ミミったらほんとばか。団長が今怒ってるのは、彼女にだよ」
「彼女?」
「そう。彼女が現われたの見た瞬間、顔つきが変わったもん」
「彼女とは誰です?」
 さりげなく言葉を挟んだ由梨に、メメナは気付いた様子なくミミスを見たまま答えた。
「海賊みたいな服着た赤毛の女」
 ――ミスティだ、と特異者たちは直感した。一緒に転送された女海賊たちの中で、赤毛はミスティしかいない。
「あー、あのボンキュッボンの美女! メメと大ちが――ブッ」
 ボクン、と殴られてミミスは舌をかんだ。
「メメだってすぐにああなるんだからね!
 だから団長、ここにあの女吸血鬼たちを放り込んだらさっさといなくなったじゃん。今ごろ彼女を殺しに行ってんじゃない?」
 殺すというのは大げさだとミミスは思った。団長は激しやすいしすぐ怒鳴るが、暴力的ではない。が、それ以外の推測には納得した。確かにクリスティアノスは2人にここを任せていなくなった。あの氷のような怒りが女吸血鬼たちに向けたものだったら、放置しないですぐ拷問に入っていたはずだ。
 ミミスは由梨を見上げ、預かったセラフィックブレードを丁寧に返した。
「団長の許可がないと誰も通せない。団長の許可をもらってから来て」
 そうしたら今度は邪魔をしない、ということなのだろう。
「団長の居場所は――」
「医療室ですね。ありがとうございます」
 セラフィックブレードを腰に戻し、会釈で礼を返して。由梨は仲間たちとともに医療室へ向かった。
 
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