~ 続・雲海に沈む ~
確かに、死を覚悟したはずだった。足場にするはずだった
キリムが忽然と消失し、墜ちていったのは雲海の中。
そのはずが……
水野 愛須がはっと身を起こしたならば、そこは濃厚な土の香が漂っていた。アバターが死亡してワールドホライゾンにて目覚めたのではありえない、夜闇のように昏い森。ああ、死んだとは思ったが、実際には分厚い腐葉土の大地が衝撃を吸収して命を助けてくれたのだなと理解する。
「折角ですし、このまま調査をしてみましょうか」
まだ軋んでいる体を起こし、辺りを観察しはじめる。すると樹冠と霧に遮られ、陽光届かぬ奈落の底を……のそり、何かが徘徊している。
たっぷりとマナを湛えた巨木の森は、マナを食らう生物にとっては楽園であるようだった。
人の腰ほどもあるクモに、それを丸呑みする巨大なトカゲ。いずれもたんまりと全身に森のマナを吸いこんでおり、いかに戦うのが面倒な相手であるかは瞭然だろう……そんな彼らが跋扈する中を。
愛須は、素早く駆けぬける。
この場所を少しでも多く調べつくすため。