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理想の未来に死にゆく絆:第6話

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理想の未来に死にゆく絆:第6話
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ノー・キラーに根付く価値観


 クルーアルを連れ、風たちはジャスティンたちが訪れた教会に来ていた。
 ドッグはおらず、別の場所に移したと説明を受けるが、連れてくるのは可能だと知り、連れてきてもらうことになった。
 丸テーブルの席に座り、お茶菓子をつまみながら待っていると扉が開く。
 教徒とともに見知った顔が入ってきて、風はこっちだと手招いた。
 ドッグはどかっと座り、値踏みするような目で彼女たちの意図を読もうとする。

「来てくれてありがとうございます」

「要件は?」

「単刀直入に言いますと、ノー・キラーについて知ってること洗いざらい話してもらえませんかね?」

 ドッグは椅子の背もたれに背中を預け、わざと大きな溜息をつく。

「で、何が聞きたいんだ。洗いざらいなんて、いろいろありすぎてわからんぞ」

「んー。じゃあ、シンプルな質問にしましょう。何のためにこんなことしてるんですかね? 彼女は」

 風の質問はトラディ村滞在中に思った疑問そのものだった。
 加えて、飛鷹が救う方法を模索していたのも踏まえている。
 あのとき、ロージは答えられなかったが、彼なら……。
 風の囁きが、風に道を示したのだ。

「……お嬢様についてどこまで知っている」

「染まる武器とクルーアルさんを殺すのが目的なのは知ってます。あとは劇団に所属していて殺人ショーがあったこと、染まる武器は劇団の総支配人に感謝を込めて創られた魔導具であること、弟さんに仲間を殺されたこと、変装が得意で、スズランの匂いが大嫌い、アイビー・ヴォルフと関係がある、外見を一番気にしてる……ぐらいですね」

「なんだ。余計なものも混じってるが、全部揃っているぞ」

「え? そうなんですか?」

「俺たちからすればな」

「でもこれまで事件を解決しながら追ってきましたが見えないんですよ。動機がわからないというか……」

「なるほどな」

「教えていただけます?」

「いいだろう」

「へー、素直じゃん」

「偽証は罪だ。教会に裁かれる」

「あーね」

「まずはお嬢様に根付いている価値観から教えてやる。お嬢様は常に“殺しは自己防衛”だと考えていらっしゃる」

「自己防衛ですか? もう結構強いと思いますけど」

「自己防衛と聞くと自分の身を守る意味が先行するが、お嬢様の場合、自分を守るだけでなく自分の周囲にある大切な者を守る意味にもなる」

「えー、後者が全然想像つかないんですけど」

「昔の話だ。今は完全に自分を守るのに必死だからな」

「クルーアルさんがノー・キラー打倒に向けて動いていますので、自分を守ろうとしているのはわかります。ですが、周囲にある大切な者って……」

「それはさっき言ってただろう。弟に仲間を殺されたと。お嬢様は劇団の仲間や総支配人を誰よりも大事にしていた。又聞きだが、お嬢様は殺されたばかりの仲間と返り血を浴びた弟を目撃したらしい。しかも弟の手には自分が創った染まる武器。最悪な状況だった。そして、弟はお嬢様を殺さなかった。理由は“僕の姉さんだから”。たったそれだけでお嬢様は生き残ってしまったんだ」

「その過去がノー・キラーの今の行動に繋がっているわけですね……」

「俺が知ってる範囲ではな。お嬢様は後悔されている。もし、自分がもう少し早く駆けつけていれば助けられたかもしれないと。だが、もう彼らはこの世にいない。ならば彼らへの弔いは、自分以外の血族を全て殺すことしかないのだと。今までの事件もそこの坊ちゃんを殺すために必要な準備だ」

「はい、質問。ノー・キラーがモノクル渡してきたんだけど、6つの染まる武器にはもう用なし?」

「用なしだ。今は自分が強くなることだけを考えていらっしゃる。……だいたい、お前も全部知ってるだろうが。なぜちゃんと話さない」

 風たちの視線がクルーアルに向けられる。
 クルーアルはカップをソーサーに置いた。

「ノー・キラーを生かしたいなんて言われたら困る」

「だろうな。俺はお嬢様に生きてもらいたい」

「僕は死んでほしい」

 互いに睨み合う。
 それは長く続かなく、クルーアルが先に席を立った。

「気分が悪い。帰る」

「自分で行くと言っておいて、何言ってるんですかぁ」

 クルーアルの背を追う風に、ヘルムートたちも立ち上がった。

「情報提供助かった」

「何かあれば俺じゃなく、あの坊ちゃんに聞け。あるいはお嬢様か坊ちゃんについてるエヴィアンエルフだな」

「……今までの情報は信じていいんだな」

「いい。じゃないと」

「偽証」

「そうだ」

「お話は終了でよろしいでしょうか?」

「あぁ。連れて行ってかまわない」

 女性教徒がドッグを立ち上がらせ、奥の部屋へ連れて行く。
 シレーネたちも教会を出た。

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