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【双月ニ舞ヒテ】渡り来たれ【第1話/全5話】

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【双月ニ舞ヒテ】渡り来たれ【第1話/全5話】
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〈プロローグ〉


 荒瀬 雅仁は、お駒の案内でやってきた特異者――渡来人――たちに険しい顔を向ける。
「この地は影月より襲撃を受けてまだ二日と経っていない。こうしている間にも民たちは影月より出でし者らに襲われている。出羽の武士団は皆勇猛だが、次々と降って湧いてくる人ならざる禍々しき者らを相手に多勢に無勢、其方らの手を借りられるのであれば心強い。市中何とぞ頼む。とにかく今は刻が惜しい、鳥湖山に行く者たちには子細道中で話そう」
(この、荒瀬さん……ていう人が、出羽の歴史に詳しい巫女さんの所へ案内してくれる……それだ!)
「うんっ、ぜひご一緒させてもらって、話を聞かせてほしいよぉ!」
 エレミヤ・エーケロートは思わず一歩前につんのめった。
「……そうか、ならば共に来るといい」
 雅仁は笑顔の欠片も浮かべず、返事もひどく素っ気ない。
(はっ……私、失礼な態度取っちゃったのかなぁ……でも、来ていいって言ってくれてるし……)
 困惑している様子のエレミヤを見て、小平 春之進が大きな溜め息を吐く。
「あーあー、何やってんのマサ。初対面の女の子にそんな仏頂面しちゃダメでしょうに」
 春之進はエレミヤの前で合掌の仕草を見せ、
「ごめんねー、こいつ悪気はないの。むしろ歓迎してるの、これで」
 と弁明した。
「マサは自分から好んで喋るような奴でもないし、ましてマサの笑顔なんてこの俺でさえ殆ど見たことないんだから。だからさ、マサと一緒に行くつもりなら、おっかない顔の仏像が歩いてるなーくらいの気持ちでいた方がいいよ」
「う、うん……ありがとぉ」
 軽すぎる春之進のフォローと重すぎる雅仁の物腰とのギャップに些か面食らいながらも、エレミヤは何とか気を取り直して己に気合を入れる。
 エレミヤは、お駒こと駒子とは千国の小世界「亜羽和瑳」でも接点があった。
 その駒子が今度は「お駒」と名乗って再び新たな小世界に案内するというので勇んで駆けつけたはいいが、お駒に連れられて来たここまでの道中の様子だけでエレミヤは胸が塞ぐ思いだった。
(見渡す限り、まるで大きな戦争や災害が起きたみたいな感じだった……小世界へのゲートが開いたってことは、私たち特異者の力が必要なんだよね。異変解決のために、喜んで手伝わせてもらうよぉ……!)

 春之進がエレミヤとの会話を終えたところを見計らい、雅仁は
「ハル……」
 と、春之進の方に視線を移す。
「二郎左衛門の件は其方に任せた。だが、どうにもならぬようであれば某を呼べ」
 そう言いながら刀の柄に手を掛ける雅仁を見て、春之進は
「絶っっっ対呼ばない! だってお前今めちゃくちゃ物騒なこと考えてるでしょ! いくらクズでも相手は農民だからね!? 『お前の物差し』で測っちゃいけない相手だからね!? ……って、うっかり『クズ』なんて言っちゃったじゃないか! お前と連むようになってから雅な俺までお口が悪くなっちゃったよもうっ!」
 と甲高い声を出した。
「ああもう……お前見てるとつくづく『適材適所』って大事だなって思うよ。どのみちこっちは渡来人たちが何人か志願してくれてるから、お前呼ばなくても何とかなると思うよ。みんな、少なくともお前よりは思慮深くて慎重そうだからね。間違っても速攻で刀抜いたり殴り掛かったりはしないと思う」
「そうか……」
 春之進がどれだけテンションを乱高下させ皮肉を口にしても、雅仁の調子は全く変わらない。

* * *


「お駒さん、この辺りの敵の出没情報や所在など、何か掴めていることはありますか?」
 御殿から市中に出ようとするアルヤァーガ・アベリアが行き先の参考になればとお駒に尋ねると、松永 焔子もそこに加わる。
「私もこの地は初めてでまだ土地鑑もありませんわ。大雑把で結構ですので被害の多い地域を教えて頂ければそちらに向かいましょう」
 お駒は「うーん」と小さく唸った後、申し訳なさそうに
「実は、私もよく分かってないというか……お力になれずすみません」
 と答えた……が。
「あっ、でも――」
 何かを思い出したらしく、お駒はぐるりと四方を見回し、御殿から南の方角を指す。
「武士団の人たちが話してるのを小耳に挟んだんですけど、『川沿いは特に酷い』そうです。被害が酷いのか、敵が多く出没するのか、何がどうして酷いのか定かではないんですけど。でも、ちょっと疑問に思ってるんですよね……私がここに来てからずっと、不思議なことに月の位置も影月の位置も変わってなくて、しかも、月の出ている方角に行けば行くほど敵の気配が凄いのに、どうして月の出ている方角とはまるで反対方向の川の方で酷いことになってるんだろう……って」
 お駒の情報を聞いたアルヤァーガは、妙な胸騒ぎを覚えた。
「それは気になりますね……分かりました、俺と聖は川沿いを見てきます」
「では、私はアルヤァーガ様が行かれる方とは対岸の川沿いに回ってみましょう」
 焔子はそう言うとアルヤァーガらと共にまずは市中南方面に移動を開始した。

* * *


 一方、優・コーデュロイルージュ・コーデュロイは空に浮かぶ影月に目を眇めた。
 こうしている間にも、ぽつり、ぽつりと蚤のような小さな影が地上に降っている。
「ルージュ、あれが敵だというのなら、あの黒い月の下には敵が大勢いるということになりますね……」
「単純に考えればそうね。もしもあの辺りに今なお住民が取り残されているとしたら……ぞっとするわ」
 優は影月の方角を見据えて決意した。
「私たちはあの方角に行きましょう。取り残されている人がいるとしたら、一人でも多く助けなければ」
「ええ、そうね。それでこそ全ての人々に笑顔を咲かせるきゅーてぃくる流、やれるだけのことをやりましょう」
 二人は互いに頷き合い、御殿から影月の方角を目指して駆ける。

◆目次◆


〈プロローグ〉
〈市中地獄行脚(1)〉
〈市中地獄行脚(2)〉
〈市中地獄行脚(3)〉
〈市中地獄行脚(4)〉
〈市中地獄行脚(5)〉
〈市中地獄行脚(6)〉
〈市中地獄行脚(7)〉
〈市中地獄行脚(8)〉
〈市中地獄行脚(9)〉
〈市中地獄行脚(10)〉
〈市中地獄行脚(11)〉
〈市中地獄行脚(12)〉
〈市中地獄行脚(13)〉
〈前川米騒動(1)〉
〈前川米騒動(2)〉
〈前川米騒動(3)〉
〈前川米騒動(4)〉
〈前川米騒動(5)〉
〈前川米騒動(6)〉
〈前川米騒動(7)〉
〈前川米騒動(8)〉
〈前川米騒動(9)〉
〈前川米騒動(10)〉
〈鳥湖山見聞(1)〉
〈鳥湖山見聞(2)〉
〈鳥湖山見聞(3)〉
〈鳥湖山見聞(4)〉
〈鳥湖山見聞(5)〉
〈鳥湖山見聞(6)〉
〈鳥湖山見聞(7)〉
〈鳥湖山見聞(8)〉
〈鳥湖山見聞(9)〉
〈鳥湖山見聞(10)〉
〈エピローグ(1)〉
〈エピローグ(2)〉
〈エピローグ(3)〉

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