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理想の未来に死にゆく絆:第5話

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理想の未来に死にゆく絆:第5話
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クルーアルの思惑


 鉱業都市ディオール。
 グラン・グリフォンにある魔力狩りの拠点を完全制圧したスレイたちは、大衆酒場を訪れていた。
 カウンター席と壁に沿って並ぶテーブル席の二択に、彼らはテーブル席を選択。
 一番奥が空いていたので、そこに座ることにした。
 グラン・グリフォン内では魔力狩りがある程度落ち着いたとされているが、他国ではまだ続いているため酒場の客は少ない。
 にも関わらず、ダークエルフのフォーサとヴンダーは挙動不審になりながら、カウンター内で仕込みをする目つきの悪いドワーフ店主の前を通り過ぎる。
 店主は何も言わず、横目で流すだけ。
 エルフで褐色系の肌を持つジャスティンや風、ビショップのユエもいるからか、彼らも人族と判断されたのだろう。
 座れば無言で出される水。
 カウンター上にあるイラストを眺め、適当に何種類か注文した。

(意外だな。見た目からして高級レストランを好むと思ったんだが)

 シン・カイファはクルーアルにさりげなく視線をやりながらこっそり観察する。
 不服そうな顔をせず、足を組み、大人しく食事が来るのを待っている。
 水には手をつけていないが。

「ずっと気になっていたのですが、瞳が淡いピンクって少し変わってますよね」

 フォーサの目を見ながらスレイが話を切り出す。

「あぁ。父がこの色よりもう少し濃いピンクだったな」

「お前の親父変だったよな~。ほら、何て言ってたっけ? オレには未来が見える的な!」

「俺は相手の次の行動が読めるだ。嘘か本当か知らないが」

「魔界にも中二びょ……じゃなくて、未来予知ができるんですねぇ」

「俺の先祖に未来予知ができた魔人がいるらしい。その遺伝を受けているのだろう」

「フォーサ君も未来が見えたり……?」

「見えるわけがない。見えてたらここにいないかもしれないな」

 人数分のディオスピリッツと串焼きがテーブルに置かれる。
 ユエが木製ジョッキを行き渡らせ、皆持ち手を握った。
 大声で乾杯というわけにもいかない状況なので、ジョッキを軽く合わせる程度に済ませる。
 シン・カイファは酒に口をつけながら、再びクルーアルを観察。
 彼はディオスピリッツを一口飲み、串焼きを1つ取って一番上に刺さっている肉を口に運んだ。

「そんなにジロジロ見られると、食べにくいんだが」

 肉に視線をやったまま、クルーアルははっきり言う。
 シン・カイファは観念して口を開いた。

「意外だと思ってな。てっきり高そうな肉やワインしか食わないかと」

「そのイメージで正解だよ。これらを覚えたのは最近だから」

「へぇ……」

(男の人に教えてもらったんでしょうねぇ)

 クルーアルの趣味を知っている風は、覚えた経緯を何となく察して2人の会話に耳を傾ける。

「で、君はどうしてここにいるんだ? フィリア・パーバードとともに行くと思ってたんだが」

「好奇心が動機っちゃ動機。この探索に巻き込まれたいから巻き込まれてるだけさ」

「そんなだと、フィリア・パーバードに自分の気持ちを気付いてもらえないぞ?」

 にやつきながら言う彼に、シン・カイファは面を食らった顔をしてニッと笑う。

「これはダイアのためであり、一生懸命なフィリアのためだ」

「伝わっているといいな」

 クルーアルはディオスピリッツをまた一口飲む。

(どうやったら引き出せる?)

 シン・カイファは何となくこれまでの流れに違和感を覚えていた。
 クルーアルと出会って以降、彼からの指示を実行し、成功させてきた。
 今回は流れ的に仕方ないとは思っているものの、流されっぱなしは癪だ。
 ダイアとフィリアの思惑なら乗っても悪くないが、クルーアルだとつまらなく感じる。
 何を考えているのか、何を持ってこの魔力狩り阻止に参戦しているのか。全く見えない。
 せめて、最終的な目的さえわかれば少しは面白くなるかもしれない。
 シン・カイファは頭の中をかき回して質問を探るが――浮かばない。
 探りを入れるなら話題を提供しなければならないが、まだ彼を深く知らない。
 これはシン・カイファに限ったことではなく、冒険者全員に通ずるものでもあった。
 酒を入れ、頭を垂れる彼にクルーアルは溜息をついた。

「僕に何か聞きたいことでもあるのか?」

 向こうからの助け船にシン・カイファは敗北気分で正直に口を開いた。

「アンタの最終的な目的を知りたい」

「と言うと」

「オレはアンタの思惑ばっかりに乗るのは嫌だと思ってる」

「なるほど。前にも言ったが、僕の目的はノー・キラーを倒し、染まる武器を破壊することだ」

「何となくだが、オレにはそう見えない。これまでの話を聞いている限り、アンタは長くノー・キラーと対立している。家族を殺された恨みとかもあるだろう。だが、もっと強い動機があるんじゃないのか? そうでなきゃ、オレたちと連(つる)まないはずだ」

「憶測で物を言うのはどうかと思うぞ。シン・カイファ」

 スレイたちが雑談を止めてしまうほど、クルーアルの語気は強かった。
 シン・カイファの次に質問しようと思っていたジャスティンは、質問を取り下げる。

(あれも聞いたら機嫌悪くするだろうな)

 スレイに似せた騎士が言った「人族の男に媚びる魔族なんて見苦しい」。
 自分の中で何か引っかかったのだが、こういう場で話す内容じゃないと思い直す。

(それにあれを言われたとき、かなり怒ってた。もしかしたら、シン・カイファの言葉にも気に障る何かがあったのかもしれない)

 言動を推理していると、クルーアルがふぅ……と大きく息を吐いた。

「すまない。雑談の邪魔をして」

「気にしなくて大丈夫よ」

「シン・カイファ。君が正直に話してくれたことに免じて少しだけヒントをやる。僕はノー・キラーを倒して染まる武器を破壊するより、強い動機を持ってこの事件に関わっている。そして、シン・カイファ、ジャスティン、マルチェロ。君たちは僕の言う強い動機に軽く触れている」

「え……?」

 マルチェロはこれまでの行動を振り返るが、いろいろありすぎて細かくは思い出せない。

(こればかりはシンたちとゆっくり解いていく必要がありそうです)

 深く考えるマルチェロの隣で、シン・カイファは質問を投げる。

「この中だけではオレたちだけか」

「あぁ、君たちだけだ」

「あのー……シンさんはどうですかね? クルーアルさんの言う強い動機に触れてます?」

「飛鷹は……踏み荒らしている」

「なるほど。ありがとうございます(何してんですか、シンさん)」

 「それは俺が聞きたい」と風の中の飛鷹は返してきそうである。
 風は話の流れが自分に向いてきたのを機に、続けてクルーアルに話を振る。

「クルーアルさん、もう1個質問いいですか?」

「強い動機については答えないぞ」

「違いますよぅ。クルーアルさん、今までリインさんたちの指揮を執ってたじゃないですか。どうしてシンさんに渡したのか聞かせてもらえませんかね」

「面白そうだと思ったから」

「えぇー、そんな軽い気持ちでやっちゃったんですか? シンさん知ったら盛大に溜息つきますよ」

「面白そうというのもあるが、一番は最悪な状況を想定して、かな」

「クルーアルさんの思う最悪とは?」

「死だ。僕が死んだら指揮を執れる者があの中にいない。リインをリーダーにするとエスがうるさいし、エスをリーダーにするとリインが言うことを聞かない。ハディックにリーダーを任せたらエスがストレスで倒れてしまう」

「……なんか面倒くさいですね」

「彼らはとても面倒なんだ。だから第三者に任せた。飛鷹の場合だとリインが壁になるが、そこは僕が何とかしておきたい」

「リインさんってそんなに気難しいです?」

「気難しさは感じないが……僕が大好きすぎてよく嫉妬してる。女友達同士によくあるやつだよ」

「なるほど」

「僕が飛鷹にかまってばっかりだから、ちょっと刺々しい態度を取るかもしれないけどすごく良い子なのは保証する」

 風は「そうですか」と軽くつぶやいて、串焼きを一口。
 お気に入りには大層甘いようだ。
 風が咀嚼している間、クルーアルはくるりとシン・カイファの方を向く。

「僕に話を聞きたいなら、こうやってちゃんと質問を用意すること。じゃないと……」

 クルーアルはスレイのメガネを奪う。

「あっちょっ……」

「スレイのメガネが、バキバキになります(冗談)」

「シン・カイファさんお願いします私の大切な大切なメガネを守ってくださいあれがないと私大変な目に遭いますし生きていけないです」

「落ち着けって。次はヘマしねぇよ」

 すがりつくスレイに、シン・カイファは若干腰を引かせながら彼の肩を掴む。

「本気でお願いします」

(って言ってもな……コイツのこと知らないと何も始まらねぇような気もするが。ま、探り探りだな)

 シン・カイファはディオスピリッツを流し込む。

「話は変わりますが、私思うのです。ノー・キラーさん自身が姿を見せてないとなると、魔力狩りを陽動として暗躍してるのではないかと。ああいうタイプはそういうことする確率が高いです! と言って、今私に出来ることはないですが……」

「さすがスレイ。彼女のことがわかってきたようだな。だがそう塞ぐことはない。もうすでに手は打ってある。あとは彼らが何とかしてくれるはずだ」

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